オーソドックスなバンド編成でここまで自分たちの色をきちんと出せてしまうところがやはり実力なのか。デビュー作から短いインターバルでリリースされたセカンド・アルバムは、大きな路線の転換もなく、奇をてらう新趣向もなく、ただ、確かにこれがアークティク・モンキーズだったと再認識、再確認させるシンプルでストレートなロックが詰まった、非常にシュアな作品に仕上がった。自分たちの音、自分たちのスタイルに対する新人らしからぬ自信が生み出した、実に堂々たるセカンド・アルバムと言うことができる。
ひとつひとつの楽曲にきちんとフックがあり、1枚のアルバムを息もつかせず最後まで聴かせてしまう勢いがある。天性の音楽的身体能力の高さに、タフなツアーをくぐり抜けたことによる筋力が加わったことが、この自信のバックボーンになっているのだろう。その意味では初めから選ばれたバンドだし、それに見合うだけのハードワークをきちんとこなしてきたことが正当に結実したアルバム。ハイプ的な騒がれ方とは裏腹に、非常に生真面目に音楽に取り組んでいるし、そこから生まれてくるもののレベルも十分に高い。
しかし、それだけにこのバンドの行く末が僕には心配だ。このスタイルをどこまでも追求することで確保することのできる彼らの居場所はそれほど広くはない。ビッグネームとして勝ち残るにはもっと自覚的な何か、もっと意識的な何かが必要なのではないか。多くの優れたアーティストは、デビュー時のハイプをくぐり抜けた後にこそ本当に価値のある作品を発表してきた。その意味ではこのバンドの真価が問われるのはまだまだこれからであり、彼らはようやく予選を勝ち抜いたに過ぎない。彼らは自ら賭け金を吊り上げた。
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