前作はいかにもスコティッシュなギター・ポップ感満載のキラキラしたアルバムだった。こういう音の需要は常にあり、僕も決して嫌いではないのだが、そうした作品を聴くたびにケチをつけたくなるのは、やはりそこで、今、この日本というヤバい国で、いやテロと内戦の10年になりそうな00年代のヤバい世界で、毎日何だか異様なスピードで無理無理に生きている僕たちの焦燥のテンパり方とそうした音楽が本当のところどこでフックしているのかが分からなくなってしまうからだ。スピード感が違いすぎるのだ。
そういう意味でキラキラしていながらも僕の現実感覚と辛うじて交点があるのはティーンエイジ・ファンクラブくらいであり、このコズミック・ラフ・ライダーズも前作まではその品のいいレプリカに過ぎなかった、少なくとも僕にとっては。しかし、本作ではその「選ばれた庭だけを照らす太陽」的な内輪受けのキラキラ感は明らかに後退し、見違えるほどタフになったロックが鳴らされている。もちろん歪まないギターの音色を大切にした音作りは変わらないのだが、曲のドライブ感が格段に進化しているのである。
僕はパワー・ポップという言葉はあまり好きではなくて、パワーのあるポップはそれ自体ロックだと思っているのだが、このアルバムではXTCやスクイーズなどの系譜に連なり、ティーンエイジ・ファンクラブとも肩を並べる力のあるポップ・ソングが聴ける。これはもう特定の仲間だけに向けられた秘密のメッセージではなく、現代という奇妙な時代に否応なく生きざるを得ないすべての人に対して開かれた歌であり、その意味でポップそのものだ。忘れた頃にレコード屋で見つけた新譜だが見逃さなくてよかった。
|