今年は雑誌のレビューに乗せられて新人バンドのアルバムを買うのはやめようと思っていた。既に自宅には一生聴き続けるのに十分なくらいのCDがあるのであり(たぶんこれからもう二度と聴く機会のないCDもたくさんあるはずだ)、こいつの新譜だけは外せないというアーティストもあるのだから、そういったものを聴いているだけでももう十分僕の音楽生活、ロック生活はまっとうできるだろうと思っていたのだ。そのおかげで今年はCDに投じるカネも少しは減ったはずだし、ディスコグラフィ・レビューもスタートできた。
それが魔が差したというか何というか、何だか知らないが買う気になって買ってしまった新人バンドのアルバムである。結論から先にいえば悪くはない。悪くはないがこれでなければならないという決定的なモメントもない。ギターの鳴りにニルバーナを感じる瞬間もあれば節回しがオアシスを思わせるところもあるといった雰囲気の、ストレートなロックンロールだ。スリーピースのバンドとしては達者な音作りであり、アルバム全体としてもそれなりに勢いはある。プロデューサーは他ならぬイアン・ブロウディなのだ。
しかし、僕がこのレビューを書いてこのアルバムをいったんCDラックにしまいこんでしまったら、次にこのCDが取り出され聴かれることはあるだろうか。申し訳ないが、たぶん僕はもう二度とこのCDを手にすることはないのではないだろうか。何より気になるのはやはり曲が弱いこと。どれもどこかで聴いたことがあるような気がしてしまうのだ。彼らがこの路線で生き残って行くためには、おそらく水準以上の曲が書けて演奏ができるということだけでは足りない。このCDを引っ張り出して聴き直したくなるような次作を期待。
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