いつの間にか業界にしっかり独自の足場を築いてしまった彼らの7枚めのアルバムである。新譜が出るたびに骨折より脱臼を狙う関節技だのロック拡幅工事だの柔構造だのいい加減なことを書き散らしてきたが、今作では彼らのそんな「ちょっとヘンな感じ」は影をひそめ、ストリングスを導入したロマンチックなスロウ・ファンクというかソウルというか、そういうメロウな感じに仕上がっているのが意外である。もちろん微妙にパースが狂っているような彼ら独特の位相というかおかしみのようなものは変わりようもないが。
「大胆かつ独創的。ホワイト・アルバムの頃のビートルズが地下のエコー・チェンバーで演奏しているようだ」なんてNMEも絶賛しているようだ。確かに曲想はバラエティに富み、ゴージャスなオーケストレーションやコーラスが素晴らしい音響を生み出して、ひとときの至福を与えてくれる。インタビューによれば彼らは意図的にアップ・テンポなナンバーを外し、スロウなラブ・ソング集にしたのだという。これはこれで美しい。彼らの新しい境地だと評価してもいい。しかし、僕にはこのアルバムはどうにも物足りないのだ。
こういうスロウ・ダウンしたアルバムを作れること、それを新譜としてリリースできることは疑いもなく彼らの成長の証左であり、自信の表れに他ならないと思う。しかし、カタルーニャの暑さの中で製作されたこのゆったりとしたアルバムがこれからの彼らのスタンダードになって行くとは僕には思えない。そういう意味でこのアルバムは佳作ではあっても、彼らの代表作になって行くものではないと思うのだ。もっとウェールズの暗い森、ケルトの血の濃さを宿命的に感じさせる、それでいてポップなSFAを次作には期待したい。
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