僕は基本的にイジイジ、チマチマした人間であり、引っ込み思案で優柔不断で人見知りする情けない性格である。世の中というのはそういう種類の人間には親切にできておらず、だいたいにおいて言ってることはメチャクチャでも声の大きいヤツ、勢いのあるヤツ、口のうまいヤツなどの方が上手に渡って行けるもののようだ。だから、僕が生まれてから今日までの40年弱というのは、そういう性格を前提とした上でいかにこの世の中に対して意地を張り、そうした声の大きい勢力の隙間に自分の場所を確保するかという闘いだった。
僕はウルフルズの「それが答えだ!」という歌が好きだ。そこでトータスは「うんと飯を食え ガハハと笑い飛ばせ」と歌う。僕は自分が小食であり、すぐにイジイジと考えこむ性質であるがゆえに、この単純な真実のあまりの明白さに目がくらむほど憧れてしまうのだ。「もっとドジをふめ 自分を好きになれ」。この言葉の強さ、説得力は、トータス自身が心からそうありたいと願いながら、常にそこに一抹の躊躇とか反省とか、振り返りをしてしまう自分の存在をどこかに意識していることから来るものだと僕は思っている。
スクービー・ドゥの話をしよう。「無敵のバカ」という曲で彼らは「思い込み ノリ はずみ 全部ありゃどれか当たるだろ」と歌う。しかし「無敵のバカになれ」と歌うこの曲の本質はむしろバカに憧れながらバカになりきれない自分への「カツ入れ」であり闘う意志の鼓舞である。どこまで行ってもバカになりきれずに残ってしまうつまらない自意識の在処を見据えながら、それでもバカどもに混じって闘うだけの力を得たいという強い決意である。このアルバムの美しさはそんな乱暴さにこそ裏づけられているのだと僕は思う。
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