相変わらず強い。前作をレビューしたのは去年の7月頃だったと思うが、その後、こいつらは日本でも大きくフィーチャーされ、このアルバムは都心の外資系大型CD店では山積みだった。僕は前作の時、これはロックだと断言したものだが、今作を聴いたらやっぱりこれはどうもブルースじゃないかという気がしてきた。音楽的にはむしろとっつきにくくなっているかもしれない。だってだいたい編成がギターとドラムだぜ。あの山積みのCD、コアな洋楽ファン以外だれが聴くのよ。楽しくないだろ、これ聴いても。
もちろん表現の強度という意味ではこれは前作にも増して傑作だと思う。有無を言わせず「聞かせる」吸引力と喚起力。このシンプルでイレギュラーな編成のバンドのどこにそれほどの奥行きが備わっているのかと思わせる強引なまでの普遍性。これはただ一人で深い井戸の底に降り立ったことのある者だけが鳴らすことのできる強い音楽だ。闇の中で自分の歌うべき歌を探し求めたことのある者だけが歌うことのできる歌だ。だからこそ歪んだギターのリフひとつが驚くほどまっすぐ僕たちに届くのだと思う。
オルタナティブという言葉が、メインストリームの存在を前提にしながらそこに決して包含され得ないもうひとつの世界の存在を示唆するものだとしたら、このアルバムこそはオルタナティブなものだ。決してシーンをリードしたりシーンの中心になったりすることのない、そんなことをするべきでもなくそんな必要もない、複線的で脱制度的な世界観の担い手としての変てこなブルースでありロックンロールである。そうした二つの世界を往復しながら僕たちの耳は少しずつ豊かに、柔軟になって行くのかもしれない。
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