端的に言って音楽的には何の価値もないアルバムだ。ここにあるのは既にずっと昔に死に絶えたロックの残骸に過ぎない。それは彼ら自身ですら10年も前に一度通り過ぎた道だし、そこには新しく始まるものは何もないのだ。もしあなたが本当に真面目にロックというものと向かい合い、その言葉の意味するものを問いたいのならこのアルバムを聴くべきではないと思う。ここには答えはない。どんな問いに対する答えもここにはない。これはそんなものを求めるだけ無駄なアルバムだ。
そう、オアシスというのは初めからそういうバンドだったのだ。彼らはもともと「答え」とは無縁な存在だったのだ。だが、だれがそんな「答え」を欲しがるだろう。そんなものを欲しがっているのはロックは何かに答えなければならないと思っている評論家だけかもしれない。ロックは変化し続けなければならないと考えている進歩主義者だけかもしれない。ここにあるのは恐るべき停滞であり、大いなる思考停止なのだが、僕たちはそれをこそカネを出してまで買い続けてきたのだ。
この作品でノエルはオアシスが進歩と無縁のバンドであることをついに看破したし、それでいいのだということを明確に意識していると思う。音楽的に無価値であることがオアシスの存在意義であるということをこのアルバムは証明している訳だ。僕はこのアルバムを繰り返し聴き続けるだろう。音楽的に何の価値もないからこそ、オアシスのアルバムとして聴くに値するのだ。ゲムの書いたM3を聴けばこの作品が普遍的な意味を持つ「オアシスのアルバム」であることが分かるはずだ。
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