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THE GUNMAN AND OTHER STORIES Prefab Sprout 8竹

ふだん何の気なしに聴いている音楽をたまに大きな音で聴いたりヘッドホンで聴いたりすると、それまではひとつの「音のかたまり」みたいに聞こえていた音楽が、実際にはさまざまな音の複雑な積み重ねでできていることにあらためて気づくだろう。もちろんロックはギター、ベース、ドラムを初めとする多様な楽器のアンサンブルに他ならないのだが、耳を澄ませればギターの6弦のそれぞれ、ドラムのコンポーネンツのそれぞれまでが思い思いの音を奏でているのが聞こえてくる。

そうやって音楽の細部に耳を澄ませることで、音楽の華やかな表情の背後にある実にさまざまな感情のようなものを僕たちは知ることができる。しかし、大切なのは音楽の背景に分け入ることそのものではなく、そうして音楽の背景に分け入ったあと、もう一度音楽の全体像を聴くために元の場所に戻ってみることなのだと僕は思う。そうすることによって、僕たちは初めのうち見ることのできなかった音楽の奥深さのようなものを目の当たりにすることができるのではないだろうか。

プリファブ・スプラウトの音楽を聴いて思うのは、そうした音の粒子のひとつひとつが寸分の狂いもなくあるべき場所にぴたりと収まっていること、そしてそれらが全体として何にも代え難いひとつ統合されたの音楽体験を提供していることである。カントリーをモチーフにした音づくりの本作でもその端整さ、完成度の高さは際立っている。クルマのラジオから「Cowboy Dreams」が流れてきた瞬間、僕はこのバンドのかけがえのなさを実感せずにはいられなかった。
 

 
BEAT YOUR CRAZY HEAD AGAINST THE SKY Captain Soul 7松

アラン・マッギーがクリエーションを投げ出したと聞いたときは、確実に何かが終わったと感じたものだ。もうサイトでも何度も書いたことだけど、大げさに言えば僕にとって洋楽体験とは即ちクリエーションだった。80年代の半ばから90年代のほとんどを、僕はクリエーション・レーベルとともに過ごした。そのレーベルが決して短くはない歴史に終止符を打った。いろんなものが少しずつ終わり、また新しい物語が始まって行く、しかしそれはもはや僕の物語ではない、僕はそう思った。

アラン・マッギーが新しいレーベルを始めたと聞いても僕の食指は動かなかった。クリエーションをやめてまで始めるレーベル、それはきっと得体の知れないノイズとかテクノとか、ともかく商業ベースには乗りそうもないまったくの趣味然とした隠居オヤジの道楽なのだろうと思ったのだ。ところがこのアルバムを聴いて僕は知った。アラン・マッギーはもう一度初めからクリエーションをやり直そうとしているのだ。あの愛すべきジャンキーにはこれしかできないのだ。そりゃそうだよ。

まるでクリエーション・レーベルのアンソロジーを聴いているようなこのアルバム、音楽的には「ただそれだけ」。だけど僕はこのアルバムが好きだし、アラン・マッギーもこのアルバムが好きなはずだ。そう、あのオヤジのやることはいつも自分の好きなものを掘り出し、知恵を絞ってそれを売り出すことだけ。だから僕はクリエーションがビッグ・ビジネスになってもその音楽を信頼し続けたのだし愛し続けたのだ。それを思い出した。Good-bye CREATION, hello POPTONES!!
 

 
GOOD FEELING Travis  
SIR/ROYAL BASTARD The King Of Luxembourg  



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