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JJ72 JJ72 7松

かつてエレキ・ギターを持っているだけで不良だと言われた時代があったという。そのような幸福な時代においてはロックというものの持つ「意味」は自明であったろう。そこではロックというメディアを手に入れることと、そこにおいて何かを表現することとの間にはかなり直接的な連関があったはずだ。なにしろロックをやるのだという強い意志なしにはロックというメディアそのものが手に入らなかったのだから。

ところが今だれもがギターケースを抱えて電車に乗る時代にあって、ロックというメディアを手にした者に問われるものはむしろ複雑になったと言わざるを得ない。だれもが等しくメディアに対するアクセスを得る時、そこで表現されるものの内実はより一層厳しく問われていると言わなければならないだろう。それはロックをやるという行為そのものが何らかの表現であり得た頃に比べてずっと複雑で困難な時代だ。

このJJ72はそうした時代にあって、ロックに向かわなければならなかった強い必然を感じさせるバンドである。ギターをかき鳴らし、甲高い声を張り上げなければ自分の中からあふれてしまいそうなやむにやまれない何か。そのような初期衝動が消費され資本主義の回転速度に追いつかれてしまうまでに、このバンドがどれだけのものを吐き出しどこまで走って行けるのか、僕はそれを見届けたいと思う。
 

 
LOST SOULS Doves 8竹

音楽の聴き方には二通りあるんじゃないかと思う。一つはいろんなものを幅広く聴いて行く中で自分に訴えかけるものを見つけるやり方、もう一つは初めからある程度聴きたい音楽のイメージができあがっていてそれに近いものを探して行くやり方だ。僕自身この二つの聴き方をミックスしながら音楽とつきあっている訳だが、どちらかといえばやはり好きな音楽のコードみたいなものがあらかじめ自分の中にあって、それをヒットする音楽を探していることの方が多いような気がする。

そのコードを言葉でわかりやすく説明することは難しくて、そんなことができるくらいならわざわざメルマガやウェブ・サイトでいちいちまわりくどいディスク・レビューをしている必要もないと思うんだけど、そこを確実に突く一つのパターンは僕の場合やはりモッズであり、ジャムやザ・フーであり、そういうものが一つのスタンダードとして僕の中にあるのはどうも確かなようだ。ビートとグルーブの幸福な婚姻としてのモッズ・ミュージック、スタイル評議会、クールな情熱、ムムム…。

だがそれはノーザン・ソウルならそれでオッケーとかそういう安易な意味合いではもちろんない。良質なモッズ・ミュージックが受け継いできた精神の系譜をコンテンポラリーなスピード感とオリジナルなアイデアで、21世紀の今、敢えて時間を割いて聴くに値する音楽へと昇華できるかどうかということこそが重要なのは言うまでもない。ダヴズ。自分を育んだ音楽への正当なリスペクトと、その系譜を受け継ぎながらそれを超えて行こうとする意志。オレが聴きたかったのはこれだよ。
 

 
ALTERNATIVE STEREO SOUNDS Adventures In Stereo  
NEW YORK Lou Reed  



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