logo 全曲バージョン解説21(201-210)


[201] スーパー・ナチュラル・ウーマン
ブギー調のリズムにルーズでハードなギターと印象的なキーボードが乗る曲想で他にあまり例を思いつかない。佐野自身はこの曲を「パワー・ポップ」と表現し、『スターダスト・キッズ』『Sugartime』『sweet16』などを類例として挙げるが、僕としてはちょっと首を傾げざるを得ない。この曲には例として挙げられた曲に顕著なスピード感や疾走感というモメントが欠けており、「パワー」はともかく「ポップ」かと言われるとちょっと。

「そのやわらかなヴァギナで 世界を抱きしめてる」という歌詞(歌詞カードでは「ヴァギナ」を「刹那」と記載)はファンの間でも話題になったが、今ここで敢えてそう歌う必要があったのか。佐野は「女性賛歌」だと説明するが、命を紡ぐ存在としての女性へのリスペクトってことか。まあ、女性像なんていうのは人の数だけあるってことだな。「スーパー・ナチュラル」は「すんごく自然」と「超自然的な」のダブル・ミーニングかも。
[93] Zooey
●アルバム ●オリジナル
●2013.3.13発売 ●DaisyMusic ●POCE-9387
●曲順:10 ●バージョン:(A)
●表記:スーパー・ナチュラル・ウーマン
●英文名:Super Natural Woman
●バージョン名:記載なし

オリジナル・バージョン。
[93] Zooey
●アルバム ●オリジナル
●2013.3.13発売 ●DaisyMusic ●POCE-9387
●曲順:22(2-10) ●バージョン:(B)
●表記:スーパー・ナチュラル・ウーマン
●英文名:記載なし
●バージョン名:Instrumental

インストルメンタル・バージョン。オリジナルを編集。


[202] 食事とベッド
軽快なスカ・ナンバーだが、ゴリゴリのハード・スカというよりは佐野自身がライナーで述べるとおりスカ・ミーツ・パワー・ポップとでもいった感じか。とはいえ、英文タイトルが「Lovers Rock」とは、ルーツへのリスペクトも効かせながら「あとどれくらい愛していけばたどり着けるだろう」と歌うこの曲の主題を端的に言い表してみたということか。曲自体はそのオートマティズムを素直に楽しむべきスポンテイニアスな仕上がりだ。

スライドを弾いているのは深沼か藤田か、クレジットでは分からないが特にイントロではいい音を聴かせる。スカには欠かせない渡辺のオルガンもしっかりツボを押さえている。バンドであることの楽しさが素直に聞こえてくる曲と言っていいだろう。「二人はピーナッツ」とはひとつのさやに二つのピーナッツが仲良く収まった落花生のイメージか。「食事とベッドで愛を繕う」という歌詞の意味をニヤニヤしながら考える。口笛が聞こえる。
[93] Zooey
●アルバム ●オリジナル
●2013.3.13発売 ●DaisyMusic ●POCE-9387
●曲順:11 ●バージョン:(A)
●表記:食事とベッド
●英文名:Lovers Rock
●バージョン名:記載なし

オリジナル・バージョン。
[93] Zooey
●アルバム ●オリジナル
●2013.3.13発売 ●DaisyMusic ●POCE-9387
●曲順:23(2-11) ●バージョン:(B)
●表記:食事とベッド
●英文名:記載なし
●バージョン名:Instrumental

インストルメンタル・バージョン。


[203] Zooey
アルバムのタイトル・チューン。冒頭の「ウェ〜ル…」という入り方はジーン・ヴィンセントまたはジョン・レノンの『Be-Bop-A-Lula』を意識したものか。曲調はミドル・テンポのシンプルなロックンロールで似てなくもない。タイトルの「Zooey」とはロック・ユニットHAL FROM APOLLO '69のギタリストで夭逝したzoeから取ったものらしい。彼らは佐野のトリビュート・アルバム「BORDER」で「Sunday Morning Blue」をカバーしている。

タイトルが先か後かは分からないが、アルバムのラストに置いてタイトルを背負うには少しばかりシンプルすぎるような気もする。この曲のシンプルなメッセージをこそ佐野はこのアルバムのコアと考えているということなのかもしれない。「誰もが誰かにただ愛されたいだけ」と繰り返すこの曲は、佐野の、いや僕たちの営みが結局のところ「愛の謎解き」に他ならないということを言っているのか。生き延び、誰かと繋がることへの意志。
[93] Zooey
●アルバム ●オリジナル
●2013.3.13発売 ●DaisyMusic ●POCE-9387
●曲順:12 ●バージョン:(A)
●表記:Zooey
●英文名:Zooey
●バージョン名:記載なし

オリジナル・バージョン。
[93] Zooey
●アルバム ●オリジナル
●2013.3.13発売 ●DaisyMusic ●POCE-9387
●曲順:24(2-12) ●バージョン:(B)
●表記:Zooey
●英文名:記載なし
●バージョン名:Instrumental

インストルメンタル・バージョン。


[204] みんなの願いかなう日まで
「Christmas time in blue」から28年を経てリリースされた2つ目のクリスマス・ソング。ウクレレのイントロに「おっ」と思わされるが、曲調にうまくマッチしており、この楽器使いには佐野のセンスを感じる。「新しい航海」をやや思い起こさせるブギーのリズム。ベルの音も効果的に取り入れられており、シンプルで親しみの持てるクリスマス・ソングに仕上がっている。名曲「Christmas time in blue」と比べても遜色のない出来。

「みんな今ここにいる」とはそれぞれがそれぞれの場所にいながらも、ひとつの同じ思いを抱えて今を生きているということなのかもしれないと思う。そして「今ここにはいない大事な人に」メリー・クリスマスを捧げる佐野。僕たちの胸にはそれぞれの「今ここにはいない大事な人」が去来するのかもしれない。「みんな」を名宛人にした曲はおそらくそんなに多くない。コヨーテ・バンドのコーラスも楽しい。佐野からのプレゼントだ。
[94] みんなの願いかなう日まで
●シングル ●オリジナル
●2013.12.4発売 ●DaisyMusic ●(No Number)
●曲順:1 ●バージョン:(A)
●表記:みんなの願いかなう日まで
●英文名:記載なし
●バージョン名:記載なし

iTunes Storeでのダウンロードのみでリリースのシングル。オリジナル・バージョン。


[205] もう憎しみはない
「トーキョー・シック」と同じセッションでレコーディングされた、雪村いづみとのデュエット・ソング。1番と3番は雪村が、2番は佐野がメイン・ボーカルを取り、サビではデュエットになる。シャンソンの邦訳などを思わせるタイトル、歌詞はいかにも往年のポップス調で雪村を意識したものか。曲調は穏やかなスロー・バラードで、美しいストリングスに乗せて歌われる。佐野のソロではなかなか例を思いつかないストレートな曲調だ。

デュエットの場合、男女の音域の違いから、それぞれが最も上手く声を張れるキーでアレンジをするのが難しいが、この曲でも張りのある声で歌いあげる雪村に対して、佐野のやや低い声域でのぼそぼそとしたトーキング・スタイルのボーカルは必ずしもベスト・マッチとは言い難い。雪村をメインにした企画でありその音域に合わせること自体は当然だが、雪村と佐野の声そのものもデュエットに向いた相性とは言えないのではないかと思う。
[96] トーキョー・シック
●アルバム ●コンピレーション
●2014.2.12発売 ●Victor ●VIZL-619
●曲順:2 ●バージョン:(A)
●表記:もう憎しみはない
●英文名:記載なし
●バージョン名:STEREO

雪村いづみとのデュエットによるオリジナル・バージョン。アーティスト・クレジットは「佐野元春&雪村いづみ」。


[206] CONFUSION
アルバム「VISITORS」のレコーディング・セッションで録音されながら長い間アウト・トラックとしてお蔵入りしていた曲。2014年の「DELUXE EDITION」リリースにあたって、追加レコーディングを行った上、アルバムのミキサーであるジョン・ポトカーのエンジニアリングによって、30年ぶりに日の目を見るに至った。エレクトリック・タンゴとでもいうべきダンス・オリエンテッドな曲で、当時の佐野の尖鋭的な皮膚感覚が窺える秀作だ。

単身ニューヨークに渡り、準備していた楽曲をすべて捨ててゼロから新しく作り始めたと言われるアルバム「VISITORS」の成り立ちを考えれば、そこで作られながらアルバムに収録されなかったこの作品の存在は興味深いものだ。他のアルバム収録曲に比べてもテンションの高さ、表現としての喚起力は見劣りしないどころか、より現代的な切迫性、危機感すら感じさせる。シリアスなトーンに乗せられた佐野の若い歌声が貴重。発掘は福音。
[98] VISITORS DELUXE EDITION
●アルバム ●コンピレーション
●2014.10.29発売 ●Sony Music Direct ●MHCL30263-6
●曲順:17(2-9) ●バージョン:(A)
●表記:CONFUSION
●英文名:記載なし
●バージョン名:UNRELEASED TRACK

オリジナル・バージョン。歌詞カードに「コンフュージョン」の日本語表記あり。


[207] WELCOME TO THE HEARTLAND
佐野のライブで『デトロイト・メドレー』『HAPPY MANメドレー』などに挿入される形で演奏されるシークエンスであるが、「VISITORS TOUR」でのみ単独の楽曲としてファンク調にアレンジされ、ライブの冒頭で演奏された。このツアーでの演奏はこれまでビデオ「Visitors Tour '84-'85」「THE OUT TAKES」などに収録されているが、CD音源としてリリースされるのは初めて。ライブ・バージョンのみでリリースされている唯一の曲である。

当時の佐野はニューヨークから帰国してアルバム「VISITORS」を発表、セールスは悪くなかったしライブの動員もブームと呼べるほどだったが、アルバムそのものはファンに暖かく迎え入れられたとは言い難く、激しい葛藤を抱えていた。そのためか、アルバムのトーンに合わせてリアレンジされ、ライブのオープニングを飾ったこの曲の演奏には緊張感がみなぎり、ファンを挑発するとともに自らを鼓舞するかのようだ。名演と言っていい。
[98] VISITORS DELUXE EDITION
●アルバム ●コンピレーション
●2014.10.29発売 ●Sony Music Direct ●MHCL30263-6
●曲順:18(3-1) ●バージョン:(A)
●表記:WELCOME TO THE HEARTLAND
●英文名:記載なし
●バージョン名:Visitors Live Version

DISC 3「LIVE 'VISITORS'」に収録。1985年5月28日に品川プリンスホテル・アイスアリーナで行われた、「VISITORS TOUR」千秋楽初日のライブ。


[208] 君がいなくちゃ
2014年の「Autumn Tour」で既に披露されていた曲であるがアルバム「Blood Moon」には収録されなかった。ライナーノーツによれば、この曲は佐野が16歳の頃に書いたもの。ミドル・テンポでハネたリズムのポップ・チューン。十代の頃の作品らしい率直さ、切実さは初々しいが、一方で「君がいなくちゃ話が始まらない」「君がいなくちゃ心が落ち着かない」と繰り返すサビが、シンプルながらもしっかりと心に残る完成度の高さには驚く。

「君がいなくちゃ」という十代の少年の素直な心情が、40年を過ぎた今、いささかも古びることなく、陳腐に響くこともなく僕たちに届くのは、ひとつにはそうした心情そのものが普遍的なものだからだが、同時に佐野のメロディがそれを鮮やかに切り取り、僕たちの心の中にくっきりと投影したからに他ならない。しっかりとしたバンド・サウンドを奏でるコヨーテ・バンドのアンサンブルも盤石。間奏の短いギター・ソロが素晴らしい。
[101] 君がいなくちゃ
●シングル ●オリジナル
●2015.3.4発売 ●DaisyMusic
●曲順:1 ●バージョン:(A)
●表記:君がいなくちゃ
●英文名:記載なし
●バージョン名:記載なし

オリジナル・バージョン。


[209] 境界線
読売新聞のイメージCMの依頼を受けて制作した曲。『君がいなくちゃ』に続き3ヵ月連続シングル・リリースの第2弾としてiTunes Storeのみで発売された。『Young Bloods』を思わせる軽快なソウル・ナンバーで、渡辺シュンスケのオルガンが印象的。ブレイクやシンコペーションが多用され、コヨーテ・バンドの成長を感じさせる洗練された演奏だ。ボーカルやメロディ・ラインはやや生硬な感もあるが曲全体としてはポップな仕上がり。

テーマはタイトル通り「越境」。自身のコメントには「今、新しい時代の扉を開くときが来ている。ひとりひとりが勇気ある越境者となるときが来ている」と書かれている。「すべてのジャーナリストに捧げたい」として、さまざまな境界線を越えて行くことを求める佐野の視線は明快。「これ以上、待っていても無駄だろう」と歌う性急さは、アルバム「Coyote」以降の、焼けつくような直接性への憧憬そのもの。佐野の現在地を示す佳曲。
[102] 境界線
●シングル ●オリジナル
●2015.4.22発売 ●DaisyMusic
●曲順:1 ●バージョン:(A)
●表記:境界線
●英文名:記載なし
●バージョン名:記載なし

オリジナル・バージョン。
[104] Blood Moon
●アルバム ●オリジナル
●2015.7.22発売 ●DaisyMusic ●POCE-9390
●曲順:1 ●バージョン:(A)
●表記:境界線
●英文名:The Border
●バージョン名:記載なし

オリジナル・バージョン。


[210] 優しい闇
2014年のツアーで既に披露されていた曲。佐野が沖縄の辺野古を訪れた時のスケッチをFacebookに掲載した2日後に、同じFacebookでこの曲のビデオ・クリップが公開された。「誰がその絆を壊しているのか」「どんなリーダーも信じない」というFacebookでのコメントが、「人はあまりに傲慢だ」「約束の未来なんてどこにもない」と歌うこの曲と呼応していることは容易に想像できる。これはジャーナリスティックなプロテスト・ソングだ。

だが、優れたプロテスト・ソングはいつも多義的だ。佐野がプロテストするのは、僕たちひとりひとりの内なる「傲慢さ」であり「残酷さ」。世界が傲慢であり残酷であるとすれば、それは僕たちがそうであることの写し絵に他ならないし、プロテストはそのような個別の傲慢さや残酷さに対してこそなされるべきものだからだ。「優しい闇」とは、そしてそれと対置される「野蛮な闇」とは何を意味するのか。性急なロックンロールがいい。
[103] 優しい闇
●シングル ●オリジナル
●2015.6.24発売 ●DaisyMusic
●曲順:1 ●バージョン:(A)
●表記:優しい闇
●英文名:記載なし
●バージョン名:記載なし

オリジナル・バージョン。
[104] Blood Moon
●アルバム ●オリジナル
●2015.7.22発売 ●DaisyMusic ●POCE-9390
●曲順:5 ●バージョン:(A)
●表記:優しい闇
●英文名:The Border
●バージョン名:Everything Has Changed

オリジナル・バージョン。
[106] 35周年アニバーサリー・ツアー・ファイナル
●アルバム ●ライブ
●2016.12.21発売 ●DaisyMusic ●POCX-29002
●曲順:3 ●バージョン:(B)
●表記:優しい闇
●英文名:記載なし
●バージョン名:記載なし

2016年3月26日、東京国際フォーラムでのライブ。



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