[142] 誰も気にしちゃいない |
アコースティック・ギターを掻きならしながら歌われるハネたワルツ。ひとつながりのコンパクトなシークエンスを淡々と繰り返して行くスタイルは、初期のボブ・ディランなどのトラディショナルなフォーク・ソングを彷彿させる。サビの繰り返しなど若干の起伏はあるものの、基本的には敢えて感情の高まりを抑え歌詞をひとつひとつ伝えるような作りになっている。シンプルな問いかけの繰り返しが、プロテスト・ソングとして効果的だ。
誇りをなくした子供たち、悲鳴を上げる母親たち、庭を荒らされても何も言えず、本当のことが知らされない、夢をなくした国。佐野はしかし、それらの原因として誰かを指弾する訳でも、戦いを組織する訳でもない。「なぜなの?とはきかないで」と歌い、「ただせつない」と嘆くことで、問題の本質は僕たち自身のコミットメントであり、すべては個的な問題なのだということを佐野は明確に指摘している。佐野の表現の成熟を感じる作品。
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[61] THE BARN
●アルバム ●オリジナル
●1997.12.1 ●Epic ●ESCB 1849
●曲順:9 ●バージョン:(A)
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●表記:誰も気にしちゃいない
●英文名:Nobody Cares
●バージョン名:記載なし
オリジナル・バージョン。
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[62] Doctor
●シングル ●オリジナル
●1998.4.22 ●Epic ●ESDB 3833
●曲順:2 ●バージョン:(A)
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●表記:誰も気にしちゃいない
●英文名:Nobody Cares
●バージョン名:記載なし
オリジナル・バージョン。
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[120] THE BARN LIVE '98
●アルバム ●ライブ
●2021.6.16 ●Sony Music Direct ●MHCL 2890
●曲順:5 ●バージョン:(B)
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●表記:誰も気にしちゃいない
●英文名:記載なし
●バージョン名:記載なし
1998年3月29日、大阪フェスティバルホールでのライブ。
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[144] ロックンロール・ハート |
タイトルは「ロックンロール」だが曲調はゆったりしたカントリー・タッチのミドル・バラード。ラヴィン・スプーンフルのジョン・セバスチャンがブルース・ハープとバック・ボーカルで参加している。アメリカのカントリー・サイドでレコーディングされ、ロックが楽天的なエネルギーのよりどころであり得た時期の残滓のようなものをモチーフにしたアルバムの中で、その夢が現代にどれだけ有効かを最も直接的に問う曲と言っていい。
「ロックンロール」をタイトルに冠するのは佐野のレパートリーの中でも『Rock & Roll Night』とこの曲だけ。彼にとってロックンロールという言葉が単に古臭くやかましい音楽を指すだけのものではなく、何かある種のスタイル、大げさにいえば思想を表すものであることが分かるだろう。ライブで演奏されることも少なくなく、佐野がこの曲を重要な作品と考えていることが窺える。揺れ、転がるという字義に忠実なロックンロールだ。
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[61] THE BARN
●アルバム ●オリジナル
●1997.12.1 ●Epic ●ESCB 1849
●曲順:11 ●バージョン:(A)
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●表記:ロックンロール・ハート
●英文名:Rock and Roll Heart
●バージョン名:記載なし
オリジナル・バージョン。
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[66] The 20th Anniversary Edition
●アルバム ●コンピレーション
●2000.1.21 ●Epic ●ESCB-2080/1
●曲順:30 ●バージョン:(A)
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●表記:ロックンロール・ハート
●英文名:記載なし
●バージョン名:Original
オリジナル・バージョン。
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[91] SOUND & VISION 1980-2010
●アルバム ●コンピレーション
●2012.5.16 ●Sony Music Direct ●DYCL 1821-5
●曲順:56(4-8) ●バージョン:(A)
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●表記:ロックンロール・ハート
●英文名:記載なし
●バージョン名:記載なし
オリジナル・バージョン。
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[115] GREATEST SONGS COLLECTION 1980-2004
●アルバム ●コンピレーション
●2020.10.7 ●Sony Music Direct ●MHCL 30640-2
●曲順:3-12 ●バージョン:(B)
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●表記:ロックンロール・ハート
●英文名:Rock and Roll Heart
●バージョン名:Radio edit version
カット・アウトしているオリジナル・バージョン(A)を手前からフェイド・アウトすることで30秒ほどサイズを短くしたショート・バージョン。
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[120] THE BARN LIVE '98
●アルバム ●ライブ
●2021.6.16 ●Sony Music Direct ●MHCL 2890
●曲順:10 ●バージョン:(C)
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●表記:ロックンロール・ハート
●英文名:記載なし
●バージョン名:記載なし
1998年3月29日、大阪フェスティバルホールでのライブ。ジョン・サイモン、ガース・ハドソンがゲスト参加。
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[146] だいじょうぶ、と彼女は言った |
アルバムから先行リリースされたシングル曲。ミドル・テンポのフォーク・ロックで、『ジャスミン・ガール』『レイン・ガール』など、街で生きる女性を第三者の視点で描写する一連の系譜に連なる作品。おそらく佐野の演奏と思われるアコースティック・ギターのストローク、間奏やアウトロで挿入される佐橋のスライド・ギターが印象的だ。穏やかな曲調の中に、一歩踏み出して歩き始める意志とか決意、覚悟のようなものを感じさせる。
「気にするなよ、済んだことだ」と語りかける歌詞は、ボブ・ディランの『Don't Think Twice It's All Right』を意識したものか。「大丈夫」というのはもちろん、都市生活のハードな現実の中でも何とか自分を肯定し毎日をやり繰りするための精いっぱいのオプティミズムであり、歌詞には一度も出てこない言葉。「De bop a doo」という軽快なスキャットは祈りであり赦しである。地味な曲だが自分で編集するベストには必ず入れる作品。
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[63] だいじょうぶ、と彼女は言った
●シングル ●オリジナル
●1999.7.23 ●Epic ●ESCB 2001
●曲順:1 ●バージョン:(A)
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●表記:だいじょうぶ、と彼女は言った
●英文名:Don't think twice it's over.
●バージョン名:記載なし
オリジナル・バージョン。
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[64] Stones and Eggs
●アルバム ●オリジナル
●1999.8.25 ●Epic ●ESCB 2022
●曲順:6 ●バージョン:(A)
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●表記:だいじょうぶ、と彼女は言った
●英文名:Don't think twice it's over
●バージョン名:記載なし
オリジナル・バージョン。
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[79] THE SINGLES EPIC YEARS
●アルバム ●コンピレーション
●2006.7.12 ●Sony Music Direct ●MHCL-836/7
●曲順:35 ●バージョン:(A)
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●表記:だいじょうぶ、と彼女は言った
●英文名:記載なし
●バージョン名:Original single version
オリジナル・バージョン。
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[91] SOUND & VISION 1980-2010
●アルバム ●コンピレーション
●2012.5.16 ●Sony Music Direct ●DYCL 1821-5
●曲順:60(4-12) ●バージョン:(A)
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●表記:だいじょうぶ、と彼女は言った
●英文名:記載なし
●バージョン名:Original single version
オリジナル・バージョン。
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[147] No surprise at all―驚くに値しない |
シングル『だいじょうぶ、と彼女は言った』のカップリングとしてオーディオ・アクティブによるリミックスが先にリリースされ、その後アルバムでオリジナルが発表された。リミックスでは重く引きずるようなファンクに乗せてディストーションのかかった佐野のボーカルがカッコいい。レビューに際して久しぶりにリミックスを聴いたが断然こっちがいい。バック・トラックは佐野自身による打ちこみとギター、キーボードとのクレジット。
ボーカル・スタイルはラップ調で、アルバム「VISITORS」の頃以来の取り組み。とはいえ当時と同じくこれは必ずしも純粋なラップというよりは、佐野元春の解釈による現代ブラック・ミュージックの再構築ということか。ナンセンスな歌詞の中に尖鋭的な警句をしのばせる手法はヒップホップの常套手段。必ずしも方向性の明確でないアルバムの中でも重要なトライアル。クレジットが正確なら佐野のギター・プレイはひそかに聴きどころだ。
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[63] だいじょうぶ、と彼女は言った
●シングル ●オリジナル
●1999.7.23 ●Epic ●ESCB 2001
●曲順:2 ●バージョン:(A)
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●表記:No surprise at all―驚くに値しない
●英文名:記載なし
●バージョン名:Audio Active remixed version
オーディオ・アクティブによるリミックス。後にアルバムに収録されたオリジナル・バージョンとは演奏時間も異なる。
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[64] Stones and Eggs
●アルバム ●オリジナル
●1999.8.25 ●Epic ●ESCB 2022
●曲順:3 ●バージョン:(B)
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●表記:驚くに値しない
●英文名:No surprise at all
●バージョン名:記載なし
オリジナル・バージョン。
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[67] Club Mix Collection 1984-1999
●アルバム ●リミックス
●2000.10 ●Epic ●E30100002A
●曲順:8 ●バージョン:(A)
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●表記:No surprise at all―驚くに値しない
●英文名:記載なし
●バージョン名:Audio Active Remixed Version
シングルのカップリングとして発表したリミックス・バージョンを収録したもの。
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[91] SOUND & VISION 1980-2010
●アルバム ●コンピレーション
●2012.5.16 ●Sony Music Direct ●DYCL 1821-5
●曲順:62(4-14) ●バージョン:(B)
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●表記:驚くに値しない
●英文名:記載なし
●バージョン名:記載なし
オリジナル・バージョン。
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[150] 君を失いそうさ |
ミドル・テンポのルーズなポップ・ソング。メロディはどこかアジア的で、典型的なサビの盛り上がりを作らず、バシャバシャした手数の多いドラムのフィルを多用するなど、曲全体として中期ビートルズを思わせるサイケデリックな曲調。これまで『Wonderland』『君が訪れる日』など、シングルのカップリングでビートルズ・フレイバーを取り入れたことはあったが、これだけビートルズを意識した楽曲をアルバムに収録するのは珍しい。
「これが自由なら眠らせて欲しい」と佐野は歌う。長い間探し続け、ようやく手にしたと思った「自由」らしきものは、みすぼらしく、弱々しいものだった。そしてあふれる光と熱が暴力的にすべてを焼き尽くし、覆い隠して何も見えなくしてしまう。「雲が太陽を隠して行く」のではなく「陽ざしがすべてを隠して行く」というイメージ。まるで白昼夢のような風景の中で僕は君を失いつつある。あまり他にないタイプの重要なナンバーだ。
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[64] Stones and Eggs
●アルバム ●オリジナル
●1999.8.25 ●Epic ●ESCB 2022
●曲順:4 ●バージョン:(A)
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●表記:君を失いそうさ
●英文名:I'm losing you
●バージョン名:記載なし
オリジナル・バージョン。
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[68] GRASS
●アルバム ●コンピレーション
●2000.11.22 ●Epic ●ESCB-2190
●曲順:6 ●バージョン:(B)
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●表記:君を失いそうさ
●英文名:I'm losing you
●バージョン名:'00 mix version
渡辺省二郎がリミックス。オリジナル・バージョンではアウトロが次の曲とつながれていたが、このバージョンではフェイド・アウトになっておりその分サイズもやや短い。
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[91] SOUND & VISION 1980-2010
●アルバム ●コンピレーション
●2012.5.16 ●Sony Music Direct ●DYCL 1821-5
●曲順:61(4-13) ●バージョン:(C)
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●表記:君を失いそうさ
●英文名:記載なし
●バージョン名:記載なし
オリジナル・バージョンのエンディングをフェイド・アウトに編集したバージョン。アルバム「GRASS」収録のバージョンとも異なる。
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