logo 全曲バージョン解説14(131-140)


[131] そこにいてくれてありがとう―R・D・レインに捧ぐ
『霧の中のダライラマ』のめまぐるしいアウトロからそのまま一気にハネたミドルテンポのイントロにつながって行くさまは、遊園地の急流すべりが着水するかのよう。R.D.レインは1950年代から60年代に活躍したイギリスの精神科医で、狂気が病気であり異常であるという先入観を見直すべきという「反精神医学」運動の主導者。佐野がレインの業績のどこにこの曲と呼応するものを見出したのかは分からないが、このような献辞は珍しい。

「そこにいてくれてありがとう」「そのままずっと笑っていてもいいよ」という歌詞からは、ありのままを受け入れることで何らかの治癒や赦しの訪れを渇望する当時の佐野の心情が表れたものか。このアルバム全体が亡くなった母親へのレクイエムであるとすれば、この曲がこの位置に置かれたことも理解できる。最近のライブでは演奏されることもない2分半の小品だが、おそらく佐野にとっては歌うべき必要のあった曲だったのだろう。
[59] FRUITS
●アルバム ●オリジナル
●1996.7.1発売 ●Epic ●ESCB 1741
●曲順:16 ●バージョン:(A)
●表記:そこにいてくれてありがとう―R・D・レインに捧ぐ
●英文名:Thank you for being there - Dedicated to R.D.Rain
●バージョン名:記載なし

オリジナル・バージョン。尚、「R.D.Rain」の表記は後に「R.D.Laing」の誤りであったと訂正されている。


[132] フルーツ―夏が来るまでには
完全なポエトリー・リーディングのナンバー。チェンバロのような音色の伴奏に乗せて、佐野が詩を朗読するスタイル。アルバムのタイトル・チューンだが、『フルーツ』というタイトルから連想されるような鮮やかな色彩感や躍動感はなく、むしろ「夏が来るまでには傷も癒えて」「いつか僕が死ぬとき きれいな声が聞こえたらいいな」といったラインが、このアルバムが佐野自身の自己療養の試みでもあるということを思い起こさせる。

「僕らはもっと幸せになれるはず」というラインはこの時期の佐野が好んで使っていたものか。アルバム「Stones and Eggs」に収録された『シーズンズ』にも同じフレーズが現れる。「大事なものだと知っていたのに」「君ならばもっとうまくできたはずなのに」といったラインはこの曲のモティーフが「悔恨」であることを示唆しているようだ。「僕の庭で終わる」というインナーの記載と呼応するような、個的なクロージング・ナンバー。
[59] FRUITS
●アルバム ●オリジナル
●1996.7.1発売 ●Epic ●ESCB 1741
●曲順:17 ●バージョン:(A)
●表記:フルーツ―夏が来るまでには
●英文名:Fruits - Summer come we will
●バージョン名:記載なし

オリジナル・バージョン。
[XX] Spoken Words
●アルバム ●コンピレーション
●2000.12.18発売 ●GO4 ●E30100003A
●曲順:12 ●バージョン:(B)
●表記:フルーツ―夏が来るまでには
●英文名:記載なし
●バージョン名:記載なし

坂元達也によるリミックス・バージョン。心ある佐野ファンの方からのご指摘により追加で掲載するもの。


[133] ヤング・フォーエバー
ウッドストックでレコーディングされたアルバム「THE BARN」からの先行シングル。印象的なスネアの四つ打ちからアメリカン・ルーツを感じさせる佐橋佳幸のギターがリフを奏でる。タイトルを聞いた時にはそのあまりにベタなメッセージに一瞬「マジかよ」と思ったが、曲に乗せて聴いてみるとそこまでの違和感はない。アップ・テンポだが曲調は必ずしも明るくはなく、歌詞とは裏腹に、遠くまで翔けて行くような疾走感は感じられない。

ライブでもしばしば演奏されるが、リズムがシンプルなこともあってかライブではもったりと単調に聞こえてしまうことも少なくない。「同じ夜明けを見つめて」とか「あの日の仲間たちはみんなおとなになって散り散りさ」といった歌詞は『Rock & Roll Night』を思い起こさせもする。佐野はいったい誰にどんな長い手紙を書くのだろう。アコースティック・バージョンの方が、この曲の内省的な良さがストレートに感じられるように思う。
[60] ヤング・フォーエバー
●シングル ●オリジナル
●1997.11.1発売 ●Epic ●ESDB 3791
●曲順:1 ●バージョン:(A)
●表記:ヤング・フォーエバー
●英文名:Young Forever
●バージョン名:記載なし

オリジナル・バージョン。
[61] THE BARN
●アルバム ●オリジナル
●1997.12.1発売 ●Epic ●ESCB 1849
●曲順:2 ●バージョン:(A)
●表記:ヤング・フォーエバー
●英文名:Young Forever
●バージョン名:記載なし

オリジナル・バージョン。
[62] Doctor
●シングル ●オリジナル
●1998.4.22発売 ●Epic ●ESDB 3833
●曲順:3 ●バージョン:(B)
●表記:ヤング・フォーエバー
●英文名:Young Forever
●バージョン名:アコースティック ヴァージョン

新録のアコースティック・バージョン。
[66] The 20th Anniversary Edition
●アルバム ●コンピレーション
●2000.1.21発売 ●Epic ●ESCB-2080/1
●曲順:29 ●バージョン:(A)
●表記:ヤング・フォーエバー
●英文名:記載なし
●バージョン名:Original

オリジナル・バージョン。
[79] THE SINGLES EPIC YEARS
●アルバム ●コンピレーション
●2006.7.12発売 ●Sony Music Direct ●MHCL-836/7
●曲順:33 ●バージョン:(A)
●表記:ヤング・フォーエバー
●英文名:記載なし
●バージョン名:Original single version

オリジナル・バージョン。
[86] The Very Best of Motoharu Sano
●アルバム ●コンピレーション
●2010.9.29発売 ●Sony Music Direct ●MHCL 20114
●曲順:14 ●バージョン:(A)
●表記:ヤング・フォーエバー
●英文名:記載なし
●バージョン名:Original version

オリジナル・バージョンをリマスター。
[89] All Flowers In Time
●アルバム ●ライブ
●2011.12.21発売 ●DaisyMusic ●(No Number)
●曲順:11 ●バージョン:(C)
●表記:ヤング・フォーエバー
●英文名:記載なし
●バージョン名:記載なし

2011年6月19日東京国際フォーラムでのライブ。
[91] SOUND & VISION 1980-2010
●アルバム ●コンピレーション
●2012.5.16発売 ●Sony Music Direct ●DYCL 1821-5
●曲順:57(4-9) ●バージョン:(A)
●表記:ヤング・フォーエバー
●英文名:記載なし
●バージョン名:Original single version

オリジナル・バージョン。
[106] 35周年アニバーサリー・ツアー・ファイナル
●アルバム ●ライブ
●2016.12.21発売 ●DaisyMusic ●POCX-29002
●曲順:12 ●バージョン:(D)
●表記:ヤング・フォーエバー
●英文名:記載なし
●バージョン名:記載なし

2016年3月26日、東京国際フォーラムでのライブ。
[107] LIVE AT 東京国際フォーラム
●アルバム ●ライブ
●2017.5.31発売 ●DaisyMusic ●POCE-9391/2
●曲順:19(2-9) ●バージョン:(D)
●表記:ヤング・フォーエバー
●英文名:記載なし
●バージョン名:記載なし

2016年3月26日、東京国際フォーラムでのライブ。


[134] フリーダム
テレビ番組『とんねるずの生でダラダラいかせて!!』内で結成されたバンドANDY'Sに提供したナンバーのセルフ・カバー。作詞者としてクレジットされているのは佐野の他にANDY(石橋貴明)、SHOW(定岡正二)、JOSE(デビット伊東)の3人。演奏はIHKBによるもので、KYONのアコーディオンが印象的なフォーク・ロック。ANDY'Sのシングルと同じオケに佐野がボーカル・ダビングしたもので、ANDY'Sのシングルにオリジナル・カラオケ収録。

軽快なポップ・チューンだが、「夢や希望は/大人たちにくだかれて」「むずかしい顔して/政治家がしゃべってる/胸にバッジを光らせて」などといったステロタイプで平板な歌詞が頻出して辟易する。シングルのフリップ・サイドとしてリリースされたきりコンピレーションなどには一切収録されていないため今では入手困難か。ライブでも聴いたことないと思う。曲としては悪くないが浅薄な歌詞のせいで入れこめないのがもったいない。
[60] ヤング・フォーエバー
●シングル ●オリジナル
●1997.11.1発売 ●Epic ●ESDB 3791
●曲順:2 ●バージョン:(A)
●表記:フリーダム
●英文名:Freedom
●バージョン名:記載なし

オリジナル・バージョン。


[135] 逃亡アルマジロのテーマ
アルバムのオープニング・ナンバー。インストルメンタルだが2分半のサイズを具え、ハモンドとギターがテーマを奏でる明確な構造を持った曲に仕上がっている。インタールードを別にすれば、本格的なインストルメンタルは『カフェ・ボヘミアのテーマ』に次いで2曲目か。もっとも、テンポがゆったりとしている上、曲調が暗く、アルバムの冒頭にふさわしかったかは疑問。「アルマジロ日和」と題したクラブ・サーキットが行われた。
[61] THE BARN
●アルバム ●オリジナル
●1997.12.1発売 ●Epic ●ESCB 1849
●曲順:1 ●バージョン:(A)
●表記:逃亡アルマジロのテーマ
●英文名:Theme of 'Armadillo on the Run'
●バージョン名:Instrumental

オリジナル・バージョン。


[136] 7日じゃたりない
3拍目のオモテにアクセントを置いたルーズでアーシーなミドル・テンポのナンバー。Dr.kyOnのピアノが軽快に跳ねまわり、アラン・トゥーサンなどニュー・オリンズR&Bの影響を強く感じさせる。間奏など要所で挿入されるアコーディオンも効いている。こういう音楽をやらせたらDr.kyOnは抜群に巧い。ボ・ガンボスの頃から知っていたが、この曲はオルガンも合わせて特に彼の八面六臂の活躍ぶりが目立つ。彼らのルーツを示す演奏だ。

歌詞は「1週間が7日では足りない、せめて10日会いたい」と歌う他愛のないラブ・ソングだが、五月みどりの『1週間に10日来い』との関係は不明。まあ、どちらかといえばビートルズの『Eight Days A Week』の方が元ネタか。ただ、このアルバムではこの曲に限らないが、佐野のボーカルがふくよかな腹式の発声ではなく甲高い喉声なのが残念。喉の不調が話題になり始めていた時期だったか。ライブでも何度か聴いたことがあると思う。
[61] THE BARN
●アルバム ●オリジナル
●1997.12.1発売 ●Epic ●ESCB 1849
●曲順:3 ●バージョン:(A)
●表記:7日じゃたりない
●英文名:Seven Days (are not enough)
●バージョン名:記載なし

オリジナル・バージョン。


[137] マナサス
マナサスはバージニア州にある街であると同時に、スティーヴン・スティルスが1970年代に結成したバンドの名前。しかしそのタイトルから連想されるほどにはベタベタのカントリーでも重々しいブルース・ロックでもなく、軽快なアコースティック・ロックに仕上がっている。HKBのメンバーの共通の原点がウッドストックであり、そこでアルバム「THE BARN」は制作された訳だが、その中でもはっきりとその空気を感じさせる曲のひとつだ。

緑の豊かなアメリカの郊外でのリラックスした雰囲気をそのままパッケージしたような率直さが印象に残る。タイトルも、レコーディング中にメンバーがよく聴いていたというバンドの名前から取られたものだろう。ライブでも何度か演奏されたように思うが、レパートリーの中では地味な扱い。このアルバム全般に言えることだが、曲調が暗くどこか晴れない空のようなくすんだ色合いを感じさせる。「名前のない場所」ってどこなんだろう。
[61] THE BARN
●アルバム ●オリジナル
●1997.12.1発売 ●Epic ●ESCB 1849
●曲順:4 ●バージョン:(A)
●表記:マナサス
●英文名:Manassas
●バージョン名:記載なし

オリジナル・バージョン。
[91] SOUND & VISION 1980-2010
●アルバム ●コンピレーション
●2012.5.16発売 ●Sony Music Direct ●DYCL 1821-5
●曲順:59(4-11) ●バージョン:(A)
●表記:マナサス
●英文名:記載なし
●バージョン名:記載なし

オリジナル・バージョン。


[138] ヘイ・ラ・ラ
オーソドックスなミドル・テンポの8ビート。重心の低い佐橋佳幸のギターのリフで始まる曲調は、そのオプティミスティックなタイトルには似つかわしくないくらいマイナーで暗い。憧れの地であるウッドストックでのレコーディングでリラックスして制作した割りに重いアルバム全体のトーンに、この曲もまた引きずられているようだ。間奏、アウトロのソロも含め、泣きの効いた佐橋の抑制的なギターがこの曲の基調を決定づけている。

やり場のない苦い思いを抱えているからこそ僕たちはそれを「シャララ」と笑い飛ばす必要に迫られる。ままならない日々の中で抱えこんだ宿命的な憂鬱を、シャララと歌って見せることでひとときやり過ごす、そのギリギリのオプティミズムのことを佐野は『雨の日のバタフライ』で「シャララの楽観性」と名づけたが、その系譜に連なる曲のひとつ。「いいことだけを考えてみた」という、その日常に根差した力に僕たちは信頼するのだ。
[61] THE BARN
●アルバム ●オリジナル
●1997.12.1発売 ●Epic ●ESCB 1849
●曲順:5 ●バージョン:(A)
●表記:ヘイ・ラ・ラ
●英文名:Hey La La
●バージョン名:記載なし

オリジナル・バージョン。


[139] 風の手のひらの上
このアルバムの中核をなす曲のひとつで、『ボヘミアン・グレイブヤード』などと同様に隠れた代表曲。タメの効いたミドル・テンポのブルース・フォークで、引きずるようなドラムの導入から始まる。アレンジ、曲調はオーソドックスだが、Dr.kyOnのピアノがドラマティックに曲を盛り上げ、佐橋佳幸の泣きのリード・ギターがツボを痛烈に突いてくる。佐野のレパートリーの中でも、あるいは最もストレートにブルース臭い曲かもしれない。

この曲の英文タイトルは『The Answer』。かつてボブ・ディランが「答えは風に吹かれている」と歌ったのに呼応するように、佐野元春は「答えはいつでも形を変えてそこにある」と歌う。佐野のキャリアが「真実」や「答え」を探すための不断の道のりだとすれば、答えは実はいつもそこにあるという認識は重要なものだ。その「答え」とはいったい何に対するどんな答えなのか。もちろん、その答えもまたそこにある。風の手のひらの上に。
[61] THE BARN
●アルバム ●オリジナル
●1997.12.1発売 ●Epic ●ESCB 1849
●曲順:6 ●バージョン:(A)
●表記:風の手のひらの上
●英文名:The Answer
●バージョン名:記載なし

オリジナル・バージョン。
[91] SOUND & VISION 1980-2010
●アルバム ●コンピレーション
●2012.5.16発売 ●Sony Music Direct ●DYCL 1821-5
●曲順:55(4-7) ●バージョン:(A)
●表記:風の手のひらの上
●英文名:記載なし
●バージョン名:記載なし

オリジナル・バージョン。


[140] ドクター
ハネたミドル・テンポのナンバーで、カントリー・ロックにもR&Bにも聞こえる。ユーモラスな佐橋のギターと軽快にはねまわるDr.kyOnのピアノとが順番にソロを取り、アコーディオンやスライド・ギターも効いて、バンドが演奏を楽しんでいる様子が伝わってくるようだ。実際ステージで演奏されることも多く、キメのブレイクも相まって盛り上がる定番曲。レイド・バックしているがアルバムの中ではバランスの取れたポップなナンバーだ。

「楽になりたい時にはオレのところに来い」と歌うシンプルなラブ・ソングだが、「君だけの痛みを教えて欲しい」というメッセージは真摯なもの。「喜びのペイン」というのがどういうものかはよく分からないが、「怒りのペイン」という言葉は佐野がひそかにこの曲に仕掛けたキーフレーズかもしれない。ほとんどの部分がファルセットで歌われるが、普通に地声で聴きたかった。のちにシングル・カットされるなど意外にメジャーな作品。
[61] THE BARN
●アルバム ●オリジナル
●1997.12.1発売 ●Epic ●ESCB 1849
●曲順:7 ●バージョン:(A)
●表記:ドクター
●英文名:Doctor
●バージョン名:記載なし

オリジナル・バージョン。
[62] Doctor
●シングル ●オリジナル
●1998.4.22発売 ●Epic ●ESDB 3833
●曲順:1 ●バージョン:(A)
●表記:ドクター
●英文名:Doctor
●バージョン名:記載なし

オリジナル・バージョン。
[79] THE SINGLES EPIC YEARS
●アルバム ●コンピレーション
●2006.7.12発売 ●Sony Music Direct ●MHCL-836/7
●曲順:34 ●バージョン:(B)
●表記:ドクター
●英文名:記載なし
●バージョン名:Short edited version

オリジナル・バージョンの中間部分を編集したショート・バージョン。
[91] SOUND & VISION 1980-2010
●アルバム ●コンピレーション
●2012.5.16発売 ●Sony Music Direct ●DYCL 1821-5
●曲順:58(4-10) ●バージョン:(B)
●表記:ドクター
●英文名:記載なし
●バージョン名:Short edited version

「THE SINGLES EPIC YEARS」と同じショート・バージョン。



Copyright Reserved
2006-2017 Silverboy & Co.
e-Mail address : silverboy@silverboy.com