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A Tribute to EIICHI OHTAKI
Various Artists

■ 2026年6月10日(水) 18:00開演
■ SGCホール有明

■ Artists
大滝詠一(声の出演/アーカイブ歌唱)
伊藤銀次
稲垣潤一
小林旭
佐野史郎
杉真理
鈴木茂
トータス松本
野宮真貴
ハンバート ハンバート
藤井フミヤ
吉田美奈子
渡辺満里奈

■ Niagara's Club Band
Keyboards:井上鑑
Bass:高水健司
Drums:上原"ユカリ"裕
Guitar:今剛
Guitar:土方隆行
Percussion:三沢またろう
Wood Winds:鈴木圭
1st Violin:金原千恵子
2nd Violin:栄田嘉彦
Viola:渡部安見子
Violonchello:笠原あやの

セットリスト  
● 夏のペーパーバック(Niagara's Club Band)
● 君は天然色(大滝詠一)
● オリーブの午后(杉真理)
● はーとじかけのオレンジ(杉真理)
● はいからはくち(ハンバート ハンバート)
● うららか(ハンバート ハンバート)
● 幸せな結末(ハンバート ハンバート)
● ナイアガラ音頭(トータス松本、佐野史郎)
● 福生ストラット(パートII)(トータス松本、伊藤銀次)
● 楽しい夜更かし(トータス松本、伊藤銀次)
● スピーチ・バルーン(伊藤銀次)
● ペパーミント・ブルー(伊藤銀次)
● うれしい予感(渡辺満里奈)
● あなただけI LOVE YOU(渡辺満里奈)
● ポップスター(野宮真貴)
● 怪盗ルビィ(野宮真貴)
● 恋するカレン(藤井フミヤ)
● 冬のリヴィエラ(藤井フミヤ)
● バチェラー・ガール(稲垣潤一)
● 風立ちぬ(稲垣潤一)
● 熱き心に(小林旭)
● 恋のナックルボール(Niagara's Club Band)
● 雨のウェンズデイ(鈴木茂)
● カナリア諸島にて(鈴木茂)
● A面で恋をして(鈴木茂、伊藤銀次、杉真理)
● 指切り(吉田美奈子)
● 夢で逢えたら(吉田美奈子)



ミュージック・アワード・ジャパンのプレミアム・ウィークのイベントとして開催されたライブ。大瀧詠一をシンボル・アーティストとしてフィーチャー、ゆかりのあるアーティストたちが大瀧の楽曲を歌うという趣向で多彩なゲストが出演し、3時間近いボリュームのステージとなった。

大瀧のブレーンの一人でもあった井上鑑が音楽監督を務め、ゲストが入れかわり登場しては2、3曲を披露するという構成になっており、俳優であり大瀧ファンであることでも知られる佐野史郎がMCとして進行を担当した。

僕としては伊藤銀次、杉真理を中心に見に行ったが、鈴木茂、吉田美奈子、トータス松本ら、それ以外の出演者も含め13,000円の元は十分取れるお得感はあった。バンドも井上をはじめ、ドラムに上原裕、ベースに高水健司、ギターに今剛と土方隆行という盤石の布陣。土方をステージで見たのはたぶん初めてだが隣りの今の絵ヅラが強すぎた。

大瀧楽曲を精密に表現するには不可欠なストリングスも弦楽四重奏の抜かりない布陣。特に様々なアルバムのクレジットで名前を見続けてきた金原千恵子の実物が見られたのはこの日の隠れたハイライト。佐野のスポークン・ワーズのステージ以来となる笠原あやのを見られたのもうれしかった。パーカッションの三沢またろうが楽しそうに演奏しているのがなんか好ましかった。カスタネットの連打が効いていた。

これだけの編成、メンバーなので芯の太い音が出る。会場の音響もよかったと思うが、とにかく塊のような音の壁が構築されていたのはさすがだった。井上を筆頭に、大瀧楽曲を知り尽くしたうえで、愛情と敬意にあふれた演奏をステージ上で披露したハウス・バンドは納得感のある仕事をした。このバンドあってのステージだったのは間違いない。

ゲストではまずサプライズだった小林旭がエモかった。登場とともにどよめきとこの日最大の拍手。入りがやや不明瞭だったのと、最後のパートの拍がズレたのが残念ではあったが、もうそんなことはどうでもよく、出てきてくれただけでありがたいレベルの存在感で感無量。声もしっかり出ていた。小林旭の『熱き心に』をナマで聴くことができるとは思っていなかった。

トータス松本の『ナイアガラ音頭』もハマっていた。この曲をナマで聴くことができるなんてと思ったらなぜか泣けた。この曲を歌わせるならおそらくこの人しかいないという人選でイカしていた。伊藤銀次を介して『大阪ストラット』を歌った縁がこういうかたちで返ってくるんだなと思った。ド派手な浴衣はトータスの持ちこみだという。

銀次は『スピーチ・バルーン』と『ペパーミント・ブルー』を披露。特に『ペパーミント・ブルー』は僕が大瀧の作品のなかで最も好きな曲で、それを銀次が歌ったのは意外だったがうれしかった。ズルいのは大瀧のコーラスがそのままアーカイブから使用されていたこと。大瀧のボーカルがマルっと流された『君は天然色』よりも、銀次の『スピーチ・バルーン』の間奏に大瀧のコーラスがかぶってくるところにグッときた。『ペパーミント・ブルー』でのコーラスも泣けた。

トリの吉田美奈子も迫力があった。『指切り』と『夢で逢えたら』を歌ったが、格の違う声量と歌のうまさ。のちに多くの人にカバーされることになった『夢で逢えたら』はそもそもこの人が最初に音源化した曲。このステージではバラードにアレンジされての演奏となったが、この曲をいかようにも料理して歌うだけの正統性がこの人にはある。歴史の生き証人を見た思い。

ほかにはハンバート ハンバートが歌った『はいからはくち』、渡辺満里奈の『あなただけI LOVE YOU』、藤井フミヤの『冬のリヴィエラ』が印象に残った。須藤薫に提供した『あなただけI LOVE YOU』はむずかしい曲で渡辺も苦労していたがとにかく曲のよさが際だつ。「あなたのそばへ」のところのメロディは大瀧にしか書けないと思う。藤井フミヤははける前にバンドにきちんと一礼していたのが絵になっていた。スターのオーラがあった。

はっぴいえんどを含む初期から『幸せな結末』まで、シングルから提供曲まで、メロディ・タイプから音頭まで、レンジの広い大瀧の作品群のなかからムリなく、しかし抜かりなく大瀧世界の全体像を見せた選曲も素晴らしかった。加えて演奏も非の打ちどころがなく、なにより大瀧の楽曲がもともとすばらしいので、その時点ですでにだれが歌ってもいいくらいの完成度があった。

僕は「A LONG VACATION」から大瀧を聴き始めた後発のリスナーだが、この日のライブではロンバケ以降の曲よりもむしろ『はいからはくち』や『うららか』、『福生ストラット』や『楽しい夜更かし』『指切り』、なんなら『ナイアガラ音頭』に知らず愉悦を感じるようになっている自分を発見、病状が進んでいることを自覚した。



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