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The Two Wheels Good
Matin McAloon

■ 2026年2月19日(木) 20:30開演
■ Billboard Live Tokyo

Vocal, Guitar:Martin McAloon

セットリスト  
● Faron Young
● Bonny
● Appetite
● When Love Breaks Down
● Johnny Johnny
● Halllujah
● Moving The River
● Horsin' Around
● Desire As
● Blueberry Pies
● When The Angels
● Cruel
● Hey Manhattan!
● Cars & Girls
● The King Of Rock'N'Roll

● Cowboy Dreams
● Looking For Atlantis



プリファブ・スプラウトのベースで、パディ・マクアルーンの弟であるマーティンがソロでアルバム「Steeve McQueen」を全曲歌うというライブ。パディは健康を害していると伝えられライブから遠ざかって久しい。バンドとしてのライブ活動が現実的に見込めないなか、この機会は逃せないと思って見に行くことにした。

結論からいえば、このライブはパディでなかったからこそ価値があったと思う。マクアルーン家に行ったら兄貴はいなかったけど弟がいろいろ聴かせてくれてなんか逆にすごい得したみたいな感じがした。たぶんパディならこうは行かなかったと思う。マーティンだからこその親密な感じ、「兄貴もよろしくって言ってたよ」的なリラックスした雰囲気が、「まあやっぱり見ておくか」くらいのこちらのテンションともちょうど見合っていた。

よれよれのTシャツで登場したマーティンは、クシャクシャのハンカチで鼻をかんではまたまるめてポケットに突っこむというジジイしぐさ。それでも演奏が始まると独特の曲世界に次第に引きこまれて行く。パディの書く曲のいちばんの特徴はなんといっても和音の響きだが、ほかのだれにも書けない、一聴しただけで彼の作品だとわかるその音の配置は、マーティンのギター一本の演奏でも際立って特徴的だった。

マーティンはリフとコードを同時に鳴らそうとするので時としてギターだけの演奏が曲想に追いつかない部分もありはしたが、曲自体はあらかじめ完成されているうえに、長年にわたってだれよりもこれらの曲の近くにいた当事者でありまた第一のリスナーでもあったマーティンが演奏し、歌うことで、それらの曲はなによりも雄弁に年月を語った。それは単なる過去の曲の再現ではなく、流れ去った時間と、そのあいだに僕が得たものと喪ったものへの祝福であったのだ。

若きパディがあふれ出すほどの才能を惜しげもなく注ぎこみ、ポップ・ミュージックの歴史に残るともいわれるアルバム「Steeve McQueen」は、彼らのキャリアのなかでも特別な作品。完全に面取りされてしまう前のひりひりするような鋭利さと、ポップ・ミュージックの神に愛されたメロディやコード展開の美しさが、奇跡的にバランスした一回限りの達成だ。そのスゴみはこの日のライブでも十分伝わってきた。

プリファブ・スプラウトは、同時代のギター・バンドとは異なる独特の立ち位置にいて、いわゆるネオアコとくくられる一群の音楽にも含まれるか含まれないか論者によって判断が分かれる印象。どの文脈で話をしてもそこからこぼれ落ちてしまうようなワン・アンド・オンリーの存在であるだけに、その不在はほかのなにをもってしても埋めがたいと思っていたが、こういう埋めかたがあったかと気づかされた。

マーティンをフロントにバンド・セットでやってもそれなりに形にはなりそうだが、それは無粋というものかもしれない。このやり方だからこそ価値があったのだろう。僕のなかでプリファブ・スプラウトというバンドの収めどころがきちんと見つかったライブだった。



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