logo CHRISTMAS MEETING “赤と青、緑、そしてあらゆる中間色の魔法”


CHRISTMAS MEETING
“赤と青、緑、そしてあらゆる中間色の魔法”

GOMES THE HITMAN

■ 2025年12月23日(火) 19:30開演
■ 下北沢440

[GOMES THE HITMAN]
Vocal, Guitar:山田稔明
Keyboards, Guitar:堀越和子
Drums:高橋結子
Bass:須藤俊明

セットリスト  
● sound of science
● 愛すべき日々
● 何もない人
● 北風オーケストラ
● 街をゆく
● 溶けて死ぬのさ
● 情熱スタンダード
● 別れの歌
● 忘れな草
● carolina
● bluebird
● day after day
● ストロボ
● オレンジ〜真実
● 明日は今日と同じ未来
● houston
● night and day
● 夢の続き(imaginary)
● 夢のモザイク
● RGB
● churchbell's ringing
● sweet december
● 余韻
● 7th avenue
● memoria
● ポリフォニー
● maybe someday

● ねじを巻く
● ブックエンドのテーマ
● baby driver
● 雨の夜と月の光



東京での今年最後のバンド・セットは下北沢440でのオール・リクエスト。すべてのリクエストを演奏するということで30曲、ほぼ3時間に及ぶステージとなった。

ゴメス・ザ・ヒットマンの音楽はいつでも僕の日々の生活と地続きの場所にある。泣いたり笑ったり、怒ったり許したりしながら、昨日を今日に、今日を明日にやりくりして行く現実的でささやかな営為のひとつひとつのシーンにはいつでもゴメス・ザ・ヒットマンの音楽がある。

彼らのライブに行くのは、ふだんないがしろにしている自分自身の生活の実相に出会うためだ。そこにあるのは僕自身の生だ。ふだん意識することもなく、ただ日々の泡のようにどこからかやってきてはどこかに去って行く、時間の流れに溶けだしてまぎれて行く、そのような僕の毎日の暮らしの小さな破片のようなものをもう一度拾い集めに行くためだ。

この日のライブにももちろんそれはあった。僕は僕がうっかり失くしたり間違えて捨てたりどこにしまったか忘れたりいつのまにか見失ってしまったりしたものたちに会いに行った。そうだ、僕は僕に会いに行ったのだ。ゴメス・ザ・ヒットマンのライブというのはいつでもそういう体験なのだ。

僕にとってライブに出かけるのは間違いなく非日常である。それは日常を異化し、そこにたまった澱のような行き場のない感情を浮かび上がらせて、それらをしかるべき場所に収めたり、あるいは思いきって大きなゴミ袋にまとめてしまうような場にほかならない。しかし、それは一方で僕の日々の暮らしとも生々しくつながっている。

リクエストは初期から直近まで、音源化されていない新曲も含めバラエティに富んだものとなった。一方で通常のライブなら外されることのないようなシングル曲、スタンダードのなかにも演奏されなかったものがいくつもある。おそらくは多くの人が「ライブで聴いてみたい曲」を選んだことをうかがわせる自由なセット・リストだ。

それはまるで、ひとりひとりにとってのゴメス・ザ・ヒットマン像を重ね合わせてそこに描き出されたひとつの大きな姿を見るような、思いもかけない経験だった。僕はそこで、自分も知らなかったいくつもの自分に出会った。ひとつひとつの曲にすっかり忘れていた感情が隠されていた。いくつかのシーンがくっきりとよみがえった。僕は僕に出会った。

山田が歌うのは日々の暮らしのブルースだ。さわやかな前ノリのビートポップスにはいつも少しだけ収まりきらず、そこからはみ出すものを丁寧に拾いあげて行った結果たどりついた内省と、それを裏書きするオフビートやグルーヴだ。そこには自ら歌をつくり歌う者としての自前の気持ちのやりくりがあり、それが僕たちの日々の感情の出し入れとときとして共振する。それが交わる場所がライブなのだ。

この日僕はそれをあらためて感じた。僕がゴメス・ザ・ヒットマンの音楽、山田稔明のつくる歌のなにに惹かれ、なにに耳をそばだてているか、そのナゾが少し明らかになった気すらした。3時間やってもまだ終わるのが惜しいと思ったくらい。今年はリクエストをし損ねたので、来年は間違いなく『思うことはいつも』をリクエストしようと思った。



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