logo ロッキン・クリスマス 2025「L'ULTIMO ANNO 25」


ロッキン・クリスマス 2025
L'ULTIMO ANNO 25


■ 2025年12月22日(月) 18:00開演
■ 横浜BUNTAI

佐野元春 & THE COYOTE BAND

Vocal, Guitar:佐野元春

Drums:小松シゲル
Guitar:深沼元昭
Guitar:藤田顕
Bass:高桑圭
Keyboards:渡辺シュンスケ
セットリスト  
● 君が気高い孤独なら
● 世界は慈悲を待っている
● バイ・ザ・シー
● 冬の雑踏
● 夜空の果てまで
● Us
● レインガール
● 君を想えば(イノセント)

● ジュジュ
● ダウンタウン・ボーイ
● みんなの願いかなう日まで
● 愛が分母
● 境界線
● いばらの道
● La Vita é Bella
● Christmas time in blue

● エンタテイメント!
● 純恋(すみれ)
● アンジェリーナ〜メドレー



45周年ということで忙しく活動してきたフィニッシュは例年どおりザ・ガーデンホールでのクリスマス・ライブとなった。2日公演の初日なのでまだもう1日とカウントダウン・ジャパンへの出演が残ってはいるが、僕的にはこれが今年の佐野納めとなった。

2週間前に横浜でツアーを打ち上げたばかりだったので、この日はそのエクストラということでツアーに準じたセットになるのかと思っていたが、結論からいえばガッツリと組み立てを変えてきた。

印象としてはコヨーテ・スタンダードを中心としたコンパクトなステージ。2枚の「HAYABUSA JET」アルバムからの曲をはさみつつ、『君が気高い孤独なら』『世界は慈悲を待っている』『境界線』『La Vita é Bella』などを聴かせる構成には安定感と納得感があり、ツアーを終えてひと息ついたふだん着のバンドというかバンドの素顔を見るような思いがした。

今年はデビュー45周年であるとともにコヨーテ・バンド結成20周年でもある。こちらも歳を食って時間の感覚が年々バグっているので佐野がコヨーテ・バンドとともに活動するようになったのはついこないだのような気がしているが、考えてみればこのバンドでもそれだけの時間が流れたのだとあらためて実感する。

周年ツアーで地方都市を丹念にまわったサーキットが終わり、リラックスして「持ち歌」を演奏する、立ち返る場所、ふだん着になれる瞬間があるということは、それだけの歴史、積み重ねがしっかりそこにあるのが前提だ。この日のライブはそうした意味でコヨーテ・バンドの20年という時間の蓄積を感じさせた。

その間にバンドは成長し、レパートリーはアルバムごとに増えて行った。ライブで頻繁に演奏されファンの記憶に残るスタンダードも形づくられてきた。コロナを乗り越え、7枚のオリジナル・アルバムを制作して、気がつけばハートランドよりも、ホーボー・キング・バンドよりも長い時間、佐野の音楽を支えてきた。

ツアーが佐野のデビュー45周年を跡づけるものであったとすれば、このクリスマス・ライブはその45年の半分近くを佐野と並走したコヨーテ・バンドの現在地を原寸大で示す貴重な機会になったといっていいのではないだろうか。佐野とコヨーテ・バンドのパートナーシップの到達点、今ここにいるという座標を僕たちはこの日のライブで確かめたのだ。

リリースされたばかりの「HAYABUSA JET II」から初披露となった『君を想えば』(『イノセント』の改題)がよかった。藤田のリフが魂をザワつかせる。もともと佐野の20周年のときにリリースされた作品で、どことなくおさまりがしっくりこずどこにもハマらないパズルのピースのように感じられたこともあったが、今回の再定義とこの日の演奏でようやく置き場所が見つかった気がする。

このでたらめな世界に真摯に、誠実に向かい合うということは、僕たちの日常をなおざりにしないこと、生活のひとつひとつのパーツに注意を払うこと。あたりまえの毎日をあたりまえに生き続けること、ふだん着をきちんと洗濯し続けること。それがなによりも政治的なステートメントになるということを佐野とコヨーテ・バンドは僕たちにメッセージとして届けたのではないか。

コヨーテ・バンドがあたりまえのように披露するスタンダードに彼らの演奏の水準の高さを見る。佐野の書いた曲が彼らの演奏を得て生き生きと動きだすのを感じる。彼らの「あたりまえ」が今どのあたりにあるのか、佐野との紐帯がどれだけゆるぎないものか、それを目のあたりにした。ここを発射台に、佐野はまた次の旅を始めるだろう。忙しくあわただしかった一年を、佐野とバンドはきちんと締めくくってきた。



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