45TH ANNIVERSARY TOUR
45TH ANNIVERSARY TOUR
■ 2025年12月7日(日) 18:00開演
■ 横浜BUNTAI
佐野元春 & THE COYOTE BAND
Vocal, Guitar:佐野元春
Drums:小松シゲル
Guitar:深沼元昭
Guitar:藤田顕
Bass:高桑圭
Keyboards:渡辺シュンスケ
Chorus:佐々木久美
Chorus:TIGER
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セットリスト
● Young Bloods
● ガラスのジェネレーション
● だいじょうぶ、と彼女は言った
● ジュジュ
● ダウンタウン・ボーイ
● 欲望
● インディビジュアリスト
● 君をさがしている(朝が来るまで)
● 誰かが君のドアを叩いている
● 新しい航海
● レインガール
● 悲しきRADIO
● さよならメランコリア
● 銀の月
● 冬の雑踏
● 境界線
● 愛が分母
● 純恋(すみれ)
● La Vita è Bella
● エンタテイメント!
● 水のように
● 大人のくせに
● NEW AGE
● スウィート16
● SOMEDAY
● 明日の誓い
● Christmas time in blue
● 約束の橋
● Sugartime
● スターダスト・キッズ
● So Young
● アンジェリーナ〜メドレー
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ツアー千秋楽。この日は通常のコヨーテ・バンドのメンバーに加え、女性コーラスの佐々木久美とTIGERを従えてのステージとなった。セット・リストも『Christmas time in blue』が追加されたほか、アンコールで『Sugartime』が演奏され、さらに『アンジェリーナ』は「I love you」「You love me」のコール&レスポンスが挿入されるメドレー仕立てとなるなど特別な内容だった。
45周年のアニバーサリー・ツアーということで新旧のレパートリーが披露されたが、アルバム「HAYABUSA JET I」を介在させることでそこにひとつながりのストーリーが形成され、ショーを二部構成にしたことも相まって、ムリのない形でコヨーテ以前、以後のレパートリーの間を架橋しようという意志は窺えた。
しかし、それがどこまで達成されたかといえば、それは決して百点満点ではなかったと思う。「再定義」されたレパートリーのなかにも『欲望』のように楽曲のメッセージをアップデートし拡張して表現することに成功したものもあったものの、『君をさがしている』のように意図を理解しかねるリアレンジもあった。そして、それらが今、佐野元春とコヨーテ・バンドによって、新曲の制作をさしおいてまでなされなければならないことなのかというそもそもの大きな疑問は解決されないまま残った。
一方で、今回のツアーが最近にはなかった全国規模の大がかりなものであり、佐野によれば全公演完売で、千秋楽のこの日も5千人収容の横浜BUNTAIが満席になったことは、多くの人が佐野のパフォーマンスを求めている証左であった。そこには『アンジェリーナ』『ガラスのジェネレーション』『SOMEDAY』『約束の橋』といった代表曲への期待ももちろんあっただろう。直近のレパートリーを熱心にフォローしていなくても楽しめる、そのような「ニーズ」にこたえることが求められていたのもまた事実である。
曲自体の強度や2020年代半ばという現代との共振性という意味では圧倒的にリアルな「今、何処」からのレパートリーに対して、コヨーテ以前の楽曲を「再定義」という「しかけ」を通してなんとかそれに接続させようとする試みは、野心的ではあったものの、その結果は見たところせいぜい道半ば、興行上の配慮なく純粋に表現としての先鋭さを追求するなら、コヨーテ以後の楽曲でライブをまとめきった方がメッセージは明確になっただろう。
それでもこの日のライブには力があった。それはそのような試みも含め佐野が自身の45年間の活動を総体として統合しようとしていたからだし、一方でオーディエンスもまた自身の佐野元春との歴史をひとまとまりの体験として確認しようとしていたからだ。そしてその双方からの意志がこのライブの場で合致し、幸福な婚姻を遂げたからだ。そこに僕たちは祝福と恩寵を見た。それがこの日のライブの底流をなす動因であり、それがひとつの大きな力動をつくりだしていたのだと思った。
繰り返すが、「今、何処」は、佐野が表現の最前線に立ち(ときに自らの血を流しながらも)時代の諸相と切り結び続ける意志を明確にし、それを力強くかつポップな現代のロックの文脈で表現した稀有な傑作アルバムであった。それは大きな達成であったが、それゆえに佐野の中にある表現上のリソースもまた相当消耗したことは想像に難くない。そこで佐野はかつてのレパートリーに立ち戻り、それをコヨーテ・バンドとともに再定義することに自己療養への手がかりを、魂のリチャージを求めたのではないか。
そう考えると、この日のステージは、二部構成によって「今、何処」から次へと向かおうとする佐野の現在地を焼きつけた、貴重で重要なスナップ・ショットとなったのかもしれない。このライブの3日後には「HAYABUSA JET II」がリリースされた。佐野は今、どこからどこに新たな橋を架けようとしているのか。そのヒントはすでに萌芽としてこのライブのなかにビルトインされていたのだろう。
年末には恒例のクリスマス・ライブがあり、CDJを経て来年3月には東京と大阪でのスペシャル・ライブがある。僕たちはいつでも僕たちの生の最前線に立っている。僕たちは最新型の佐野元春を追いかけ続ける。
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