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Cornelius

■ 2025年3月26日(水) 18:30開演
■ Zepp Haneda

Vocal, Guitar:小山田圭吾

Drums:あらきゆうこ
Guitar, Keyboards:堀江博久
Keyboards:大野由美子
セットリスト  
● Mic Check
● 火花
● Audio Architecture
● Another View Point
● Count Five Or Six
● MIND TRAIN
● BAD ADVICE
● TURN TURN
● 環境と心理
● Star Fruits Surf Rider
● あなたがいるなら



コーネリアスのライブを見るのは初めてだ。恥ずかしながらフリッパーズ・ギターのころから聴きはじめ、その後小沢健二と並行して音源はもれなく聴いてきたのだが、ライブには行く機会がなかった。いや、もちろんその気になればいくらでも行く機会はあったのだろうが、要は行く気がなかった。CDだけ聴いていればいいだろうと思っていた。僕にとっては小沢も小山田もCDで聴くアーティストだったのだ。

しかし今回、フレーミング・リップスとの対バンということもあり、いつものごとくこのへんで一度見ておかないと後悔することになるかもしれないと思って、ようやく遠く京浜運河のほとりまで足を運んだのである。

だいたいどんなライブなのかということは事前に聴いていたし、「だから一回見てみて」と勧められもしてきた。見ればきっとすごいのだろうと予想もしていた。しかし、実際にそこにあったのは、そんな予備知識や自分の頭の中の限られた想像力をはるか凌駕する圧倒的な映像と音楽のシンクロだった。

もちろん同期音源のクリックがあるのだから、演奏と映像がシンクロすること自体は可能だろうと思うが、映像自体の完成度が高く、映像と音楽が互いに挑発しあいながら一体として溶けあって行く過程は想像していたのとは次元の違うスリリングな体験だった。話だけを聞いて安易に見たような気にならなくてよかった。僕の想像力なんてたかがしれていた。

だが、この日のライブを見て僕が最も痛切に感じたのは、コーネリアスはバンドであり、ロックであるということだった。

小山田は終始ギターを抱えており、「こんなにギター弾くんだ」というのが率直な印象。もちろん大量に静脈注入された同期音源なしには成り立たない音楽だが、そこに小山田のボーカルはもちろん、ギター、ドラムなど人力で鳴らされる生音がなくてもそれはコーネリアスの音楽ではなくなってしまうだろう。ギターの音がグイグイ聞こえたのは素直にうれしかった。

同期音源だけでもカラオケ的に(なんならボーカルも入れて口パク的に)ライブが成立することを考えれば、コーネリアスのように同期音源必須の音楽のステージで、なにを音源に委ね、なにをその上に重ねるかはとてもセンシティブな判断になる。そのひとつの可能性みたいなものを僕たちは目撃しているのではないか。ロックの本質はどこまで行ってもその肉体性とか直接性だと思うが、その意味でこの日のコーネリアスのライブは間違いなくロックだった。

そのなかでも特に生々しかったのは『環境と心理』。この曲は小山田がフリッパーズ・ギターのひとりとして僕たちの目の前に登場してから今日までの、40年ちかい年月を経て流れ着いた静謐で率直な現在地という印象が強い。あの時流れだした小さな湧水が、別れたり合わさったり淀んだり涸れそうになったり伏流したりしながら、今ここでこうしてたゆたうような宇宙をつくっている、その連続性を思ってダダ泣きした。

このあとにフレーミング・リップスのステージがあり、転換に45分くらいかかって、結局4時間くらいずっと立ちっぱなしだったのが本当につらかったが、コーネリアスのステージは僕的には圧巻で、これはワンマン見に行かなあかんなと強く思った。



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