I Stand Alone
I Stand Alone
伊藤銀次
■ 2025年3月13日(木) 19:00開演
■ 下北沢440
Vocal, Guitar:伊藤銀次
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セットリスト
● Dream Time
● 風になれるなら
● Help Me, Help Me, Help Me
● いちご色の窓
● センチメンタルにやってくれ
● 雨のステラ
● 青空のように
● そして誰のせいでもない
● Twilight Girl
● ディズニー・ガール
● こぬか雨
● 素肌に星を散りばめて
● Get Hold Of Yourself
● 愛をつかまえて
● RAINBOW CHASER
● 7月のオーロラ
● BABY BLUE
● 幸せにさよなら
● Sincerely〜いつかどこかで〜
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最近はバンドでのライブが中心だったのでひさしぶりに見る伊藤銀次の弾き語りのステージ。仕事を終えて下北沢に向かった。小田急が人身事故で混乱しており、都心から千代田線で行く予定を途中で変更して表参道から渋谷経由井の頭線にしたのが結果的に正しかった。
伊藤銀次がソロ・アーティストとしての活動を2000年代以降あらためて活発化させるきっかけになったのは、こうした小規模で地道な弾き語りのライブであったと理解している。プロのアーティスト、作曲家、アレンジャー、プロデューサーとして日本の音楽史に足跡を残してきた銀次が、決して大きくはないハコで、ギター一本を抱えてオーディエンスと直接対峙するにはそれなりの思いきりが必要だったのではないかと思うが、銀次はそこからリスタートした。
その思いきりのおかげでその後はコンスタントにライブ活動が行われるようになり、銀次の音楽に触れることのできる機会ができた。20年ぶりのソロ・アルバムのリリースも実現した。この原点をもう一度確かめ、おそらくはバンドよりもイベント・メイク、ブッキングのしやすい弾き語りの形式で、機動的に、カジュアルにライブをやってみたいというのが今回の意図だと推測している。銀次も僕たちも歳を重ねるなかで、もとより歌えるうちに歌ってほしいし聴けるうちに聴きたい。その機会、試みは多くていい。
『Help Me, Help Me, Help Me』『いちご色の窓』『Sincerely』など東芝時代の曲をはじめ、『センチメンタルにやってくれ』『そして誰のせいでもない』などこれまで披露されることの少なかった曲も演奏された。特に『そして誰のせいでもない』は佐野元春が他のアーティストに提供した曲のなかでも完成度の高い隠れた名曲であり、これを銀次の生演奏で聴けたことは感慨深かった。
ギター一本弾き語りとはいうものの、銀次自身のコメントもあったとおり、フォークにリアレンジするわけでも、あるいはコードストロークで単純にかき鳴らすわけでもなく、なるべく原曲に忠実に、いや忠実といっても当然限界はあるのだが、原曲の印象的なフレーズをなぞるようにしてギター一本で再現するというコンセプトで、難度の高いギター・アレンジに挑戦していた。
しかしながらかなりムリめの運指になっている部分も多く、なんなら歌いながらの演奏でもあり、正直つっかえたり間違えたり思ったように鳴らなかったりするケースが散見されて、聴いている側としてはノリがつっかえる瞬間も少なくなかった。
意図としてはもちろん理解できるが、曲によっては「かき鳴らし」でも悪くないし、「STOP MAKING SENSE」でデビッド・バーンがやったようなリズム・パターンだけを鳴らしてギターをかぶせるスタイルや、この日も『Get Hold Of Yourself』から『7月のオーロラ』で試みたような同期音源(Protoolsか)を伴奏にしてギターだけを弾くやり方もうまく活用していいのではないか。聴かせ方は多様でいいと思った。
だが、それをさし引いても、親密なステージで銀次の歌声は近く、メロディの美しさ、リリシズムは際立った。ひとつひとつの曲が丁寧に、誠実に書かれているからこそ、ギター一本でもその本質は確実に伝わって行く。この試み自体は続けてほしいし、銀次がMCで示唆した新しい活動に期待したい。佐野元春の動画配信とかぶったが銀次の方に行ってよかったと思う。
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