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rockin'on sonic
Primal Scream

■ 2025年1月4日(土) 17:25開演
■ 幕張メッセ
セットリスト  
● Love Insurrection
● Jailbird
● Ready To Go Home
● Deep Dark Waters
● Medication
● Loaded
● Movin' On Up
● Country Girl
● Rocks



「rockin'on sonic」のステージ。フェスに参加するのはほぼ初めてで、最初はとにかく知らんバンドも含めて見れるだけ見ようとも思ってたけど、フレンドリー・ファイアーズ見てそれは無謀だと気がつき、結局本当に見たいバンドだけ見ることにした。この日はプライマル・スクリームを見に来た。それでいい。

50分のステージに新譜から3曲、他はアガる曲を凝縮してブッこんだ感じで最初から最後まで踊りっぱなし、1時間前から前の方の場所を確保した甲斐があった。ほんの10メートルほど先をボビー・ギレスピーがうろうろしている。ほんもののボビーだ。足細い。キミらの音楽を、オレはもう30年以上も聴いてきたんだ。

周囲は意外にも(比較的)若い人が多い。とにかく日本にこれだけプライマル・スクリームを積極的に見たい人がたくさんいるのだと思うだけで胸が熱い。部屋でひとり聴いているとこんな音楽が好きなのは日本ではオレくらいなのではないかと感じてしまうがそうではなかった。みんな歌ってる。オレだけじゃなかった。

プライマル・スクリームだの、ジーザス&メリー・チェインだの、マイ・ブラディ・ヴァレンタインだの、そういう類の音楽をずっとずっと聴きつづけてきて、それらは僕自身のなかで冷凍保存されたある時期の経験にほかならず、それを僕の、なんというか、成長みたいなプロセスのどこに格納すればいいのかずっと始末をつけられないまま抱えてきた。それらを抱えたまま僕はどんどん歳だけをとってきた。

僕は老い、身体は弱り、頭のなかに格納できる情報の容量は頭打ちになり、そうした始末のつかないまま抱えてきたものは次第に手に余るようになってきた。最近では新しいアーティストのアルバムはもう聴かない。プライマル・スクリームの新譜なら買って聴くが、そうやってつきあい続けているアーティストの数も減った。

この日のプライマル・スクリームのライブは、しまう場所がなくて手に持ったまま走ってきたものを然るべき場所に片づけてくれた。「ああ、そうか、ここにしまえばよかったのか」とわかったような気がした。

僕は今年還暦になる。この年になると「このライブを逃すと、僕かアーティストのどちらか、あるいは両方がもう『次』はないかもしれない」という気になる。これが最後かもと思いながら見るわけで、そういう意味ではこれまで聴きつづけてきた音楽に対して落とし前をつける、それを成仏させるつもりで聴いていることになる。ひとつひとつの持ちものにカタをつける。この日のライブはまさにそれだった。

部屋でひとり聴きつづけてきた曲がライブで演奏されることで、その曲が否応なく焼きついた僕の日々そのものが、大気中に解放された。それは空気をじかに揺らし、多くの人に共有された。あるべきものがあるべき場所におさまった感覚があって、ライブで実際に演奏されるなかでやっとストーリーが完結したというか、宿題の答えを見つけた気がした。

新作「Come Ahead」からの曲がとてもよく、スタジオ音源では伝わりにくかったダイナミズムがしっかり表現されていた。さすがにストリングスはいなかったが、女声コーラスを二人伴って、そのぶん新作の、ソウルフルな成り立ちを印象づけた。「ああ、こういうアルバムやったんやね」と腹落ちした。家に帰って聴いた。

東京でワンマンがないのが残念。また見る機会はあるだろうか。意外にありそうな気もする。



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