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GOMES THE HITMAN 25th anniversary final
年末感謝祭“街はさざめくポリフォニー”

GOMES THE HITMAN

■ 2024年12月27日(金) 18:30開場 19:00開演
■ 下北沢440

[GOMES THE HITMAN]
Vocal, Guitar:山田稔明
Keyboards:堀越和子
Drums:高橋結子
Bass:須藤俊明
セットリスト  
● ready for love
● アップダイク追記
● 朝の幸せ
● オレンジ〜真実
● お別れの手紙
● train song
● tsubomi
● down the river to the sea
● 街をゆく
● keep on rockin'
● 午後の窓から
● hello hello
● 恋の見切り発車

● sound of science
● 愛すべき日々
● 星に輪ゴムを
● 笑う人
● 忘れな草
● bluebird
● かげおくり
● レモンティーと手紙
● 三叉路から
● coffee
● sweet december
● 魔法があれば
● 夢の終わりまで
● memoria

● metro vox prelude〜baby driver
● 手と手、影と影
● maybe someday



今年は結構いろんなライブに行ったがその最後となるゴメス・ザ・ヒットマンのステージ。今回はいつものスターパインズカフェではなく下北沢の440での公演。a亭でラーチャン食べようかと思ったが混み具合いが読めないので王将で炒飯と餃子を食べた(混んでた)。王将から440はすぐ。

メジャーデビュー25周年のしめくくりということでこの日はオール・リクエスト。チケット予約時にエントリーされたリクエスト曲のうち、複数の票が入った曲は全曲演奏、1票だけの曲はメンバーによるくじ引きで採否が決まるシステム。何回かに分けてくじ引きが行われ、選ばれた曲の演奏順を山田稔明がその場で決めて行く。コステロのルーレットを思い出した。

票はかなりバラけていたようで、全部で50曲くらいに票が入っていると山田は説明していたが、440の収容が頑張っても80程度だと思うので、多くの人が違う曲に票を投じたことになる。実際複数票で自動的に演奏された曲は多くなく、1票だけでくじ引きにまわった曲の方が全然多かった。

それは山田自身も言っていたように彼らに大きなシングル・ヒットがないことももちろん影響しているだろうが、一方で、山田のさまざまな曲が、さまざまな人の心をそれぞれに打ったということであり、ゴメス・ザ・ヒットマンの音楽がそうした個的な響き方をするということなのだろう。

僕もリクエストを1曲と言われて真剣に悩んだ。いろんな曲がそれぞれの手ざわりやそれぞれのナラティブをもって僕の引き出しのあちこちにしまいこまれており、そのどれかひとつを選べといわれても決めかねたのである。しかたなく僕はこう書いた。「いちばん聴きたい『思うことはいつも』はだれかがきっとリクエストすると思うので、二番めに聴きたい『恋の見切り発車』をリクエストします」と。

ほかにもライブで聴きたい曲はいくらもあって、そのうちのいくつかはだれかがリクエストしてくれて(くじにも当たって)演奏され、いくつかは演奏されなかった。そして濃淡はあっても演奏された曲はどれも僕にとってもまた聴きたかった曲であった。僕の日常というか生活のあちこちにゴメス・ザ・ヒットマンの歌がしのびこんでおり、ひとつひとつの歌がくっきりとした輪郭をもってそれぞれの場所で僕のなかの記憶やら思惟やら妄想と結びついている。「あ、こんなところにもゴメスの歌が」みたいな具合に。まるで生活の主題歌みたいに。

そういう入りこみ方をするアーティストはほかにはあまりいなくて、ゴメス・ザ・ヒットマンの歌はいつのまにか僕のスタンダードになったんだなと、この日のライブを見ながら思ったのだった。僕の音楽リスナー歴のなかでは比較的遅くに聴き始めたほうだと思うが、いつのまにか優先順位がずいぶん繰り上がったというか専有面積が広がったのだ。

練習しても演奏しない曲が出ることは承知のうえでリクエストのあった曲は全部練習したというバンドの誠実さもいじらしかった。僕は高橋のドラムが好きでいつも彼女ばかり見てしまうのだが、この日は堀越の活躍も印象的だった。座って演奏する曲と立って演奏する曲があるんだなと思った。今回練習したが演奏されなかった曲で構成する第二部を年明けにやってほしい。ライブの定番曲に票が入っていなかったりするのもファン心理を示唆するようで興味深かった。僕みたいな人がほかにもたくさんいたのだろう。

結局『恋の見切り発車』はくじに当たって演奏され、『思うことはいつも』は演奏候補にはなったものの(だれかが1票入れてくれたのだ)はずれになった。なんか『思うことはいつも』に入れてくれた人には申しわけない感じもしたが(僕がこの曲に入れれば複数票で演奏されたのだ)、この曲はライブでも何度か聴いているので今回は『見切り発車』の方で僕としてはよかった。この曲の「あくまでも我々は」というきっぱりした歌詞が好きなのだ。革命家ぽくてよい。

演奏は全部で30曲、3時間近くにわたるステージで満足感も高く、ほくほくした気持ちで家路についた。今年はゴメスのライブを何度も見られてよかった。



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