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夜の科学 vol.66 - あいが最初の二文字
山田稔明 with 夜の科学オーケストラ

■ 2024年12月8日(日) 18:305開場 19:00開演
■ 吉祥寺スターパインズカフェ

Vocal, Guitar, Ukulele:山田稔明

[夜の科学オーケストラ]
Pedal Steel, Mandolin:安宅浩司
Drums:itoken
Bass:五十嵐祐輔
Keyboards:佐々木真里
Guitar, Banjo:近藤研二
Flute, Key Harmonica:上野洋
セットリスト  
● new sensation
● どこへ向かうかを知らないならどの道を行っても同じこと
● home sweet home
● クレールとノアール
● 猫のふりをして
● シャーとニャーのはざまで
● glenville
● 月あかりのナイトスイミング
● 三日月のフープ
● 音楽は魔法?
● 太陽と満月
● hanalee
● あいとわをん
● SING A SONG
● 星降る街
● 光の葡萄
● セラヴィとレリビー

● calendar song
● sweet december
● ハミングバード



山田稔明のソロ・アルバムは僕にとって特別な存在だ。ゴメス・ザ・ヒットマンとは違う、もっと個的で近しい、もっと静かでゆっくりとしみこみ、少しずつ広がって行くような、もっとあたりまえで見覚えのある、心あたりのある感情のような、ときおりハッとその存在にあらためて気づくような、大事な音楽である。

それは僕がゴメス・ザ・ヒットマンを聴きはじめてほどなくバンドが活動休止状態になり、それからはもっぱら山田のソロを聴く時期が長かったからかもしれない。僕自身がおそらく人生の中盤を通りすぎようとするなかで、そこにある言葉は僕が毎日の暮らしを生きるなかでのささやかだがしっかりとした手がかりであり、そのメロディは暗礁の多い水域で船を導く水先案内人みたいに僕の先に立って起伏をくり返してきた。

山田はこの日51歳の誕生日を迎えたらしい。ソロ・キャリア全般からまんべんなく選曲されたこの日のセット・リストからは、そうやって生みだされ、奏でられてきた楽曲に対する山田の自信と信頼が窺えた。音源化されていない曲も含め、そこには歌を紡ぎだすことを生業とすることへのゆるぎない覚悟と矜持があったように思う。

印象的だったのは、『hanalee』や『月あかりのナイトスイミング』、『glenville』といった静かな入りの曲が、終盤になるととても自然にラウドになり、迫力のある演奏になって行ったこと。曲の骨格の強靭さがなければダイナミックレンジの広い演奏はできない。山田のソングライティングが確実に進化してきたことの証左に他ならない。

そしてそれはまた、夜の科学オーケストラと名づけられたバンドのひとりひとりが山田の音楽を深く理解し、愛し、そしてそこにあるリズムや旋律に全幅の信頼をおいているからこそ可能なことでもある。細かいオブリガートやリフのそれぞれにぬかりなく気を配り、ときに楽器を持ちかえながら、ひとつの音楽をつくりあげて行くさまは、まさに「オーケストラ」と称するにふさわしいものだった。

披露された未音源化曲も完成度が高く、来たるべきニャー・アルバムとニュー・アルバムに期待が高まる。「pale/みずいろの時代」から既に8年、代表作というべき「新しい青の時代」からは10年以上、ゴメス・ザ・ヒットマン名義で「memori」という素晴らしいアルバムをものしたのに続いて、次はソロでの手ごたえのあるアルバムを待ち望んでいるのは僕だけではないはずだ。

この日はついに山田のソロのライブに「glenville」のスウェットシャツを着て行くことができた。参加者特典として配布されたリンク先のクリスマス・ソングも楽しめた。



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