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ZEPP TOUR 2021

■2021.11.17(水)
 18:00開場 19:00開演
■2021.11.18(木)
 18:00開場 19:00開演
■ZEPP DiverCity

佐野元春 & THE COYOTE BAND

Vocal, Guitar:佐野元春

Drums:小松シゲル
Guitar:深沼元昭
Guitar:藤田顕
Bass:高桑圭
Keyboards:渡辺シュンスケ
Percussions:大井スパム
11月17日(水)

●COMPLICATION SHAKEDOWN
●Strange Days
●禅ビート
●ポーラスタア
●世界は慈悲を待っている
●バイ・ザ・シー
●街空ハ高ク晴レテ
●合言葉 - Save It for a Sunny Day
●境界線
●銀の月
●斜陽(新曲)
●東京スカイライン
●Us
●La Vita é Bella
●純恋(すみれ)
●エンタテイメント!
●誰かの神
●空港待合室
●優しい闇
●インディビジュアリスト

●愛が分母
●ナポレオンフィッシュと泳ぐ日
●ダウンタウン・ボーイ
●アンジェリーナ
11月18日(木)

●COMPLICATION SHAKEDOWN
●ジュジュ
●スターダスト・キッズ
●彼女はデリケート
●レインガール
●新しい航海
●VISITORS
●合言葉 - Save It for a Sunny Day
●銀の月
●斜陽(新曲)
●ポーラスタア
●世界は慈悲を待っている
●バイ・ザ・シー
●La Vita é Bella
●純恋(すみれ)
●エンタテイメント!
●誰かの神
●空港待合室
●優しい闇
●インディビジュアリスト

●愛が分母
●禅ビート
●Young Forever
●ダウンタウン・ボーイ



驚いた。

東京で2回公演があれば2回とも行くのが当たり前になっていて、今回もほぼ同じショーを2回見るつもりで2日続けてお台場まで足を運んだのだが、2日目となる18日のステージが始まり、演奏が進んで行くに連れて、「これはどういうことだ?!」という衝撃にも近い新鮮な驚きが僕の脳髄をヒットした。

そもそも今回のツアーの初日の横浜、そして前日となる17日の東京でも、ライブの冒頭に『COMPLICATION SHAKEDOWN』『Strange Days』、本編のラストに『インディビジュアリスト』と、コヨーテ期以前の曲が配置されており、ライブ本編ではコヨーテ・バンド以降の曲しか披露してこなかったここ数年の流れからの変化を感じさせた。

しかしこの日はそれだけではなく、冒頭からコヨーテ期以前の曲を続けて7曲演奏し、前日とセットリストを大きく変えてきたのみならず、ライブのコンセプト自体が大きく見直されたことが示唆されていたのである。

演奏されたコヨーテ期以前の曲の多くは春の武道館、大阪城ホールでの周年ライブで演奏されたものであり、その意味ではまったく目新しいという訳ではない。また、この日はカメラが入っていたので、後日のパッケージ化を意識してのセットリスト変更だった可能性もあり、さらには9月にデイジーミュージックの配給がユニバーサルから佐野の旧譜の原盤を預かるソニー・レコードに変わったことも関係しているかもしれない。

しかし、それ以上に、単に過去の曲をコヨーテ・バンドが演奏したというだけではなく、もはやコヨーテ期以前、以後という意識自体が過去のものになりつつあることを、佐野もバンドも感じ始めているということなのではないかと思ったし、そうした「クラシックス」が、コヨーテ・バンドの手によって最新型の問題意識とともに2021年という時代に鳴らされているという強い必然性があったと思う。

特にそれが顕著だったのが『VISITORS』だ。この曲は武道館、大阪城ホールでは演奏されていない。このツアーのためにバンドで音を合わせ、リハーサルした曲だろう。アルバム「VISITORS」のタイトル・チューンでありシングル・カットもされたが、劇的な盛り上がりに欠けどこか地味な印象のあったこの曲が、敢えて今回のセットリストの「クラシックス」から最新曲である『合言葉 - Save It for a Sunny Day』『銀の月』への橋渡しになる重要な位置で演奏されたことには大きな意味があるだろう。

当時の佐野には珍しく、ヘヴィなギターのリフで壁を構築して行くスタイルのこの曲は、アルバムの中でも他の曲とは異なる手ざわりがあったが、それが深沼と藤田の2本のギターで演奏を牽引するコヨーテ・バンドの構成にフィットし、リリースから30年以上を経て新たな切実さとともに僕たちに迫ってきたのである。そのメッセージは「これは君についての物語なんだ - This is a story about you」ということに他ならない。

コミュニケーションの断絶、そして今、目の前で変わり始めているなにか。佐野がライブの冒頭で『COMPLICATION SHAKEDOWN』『Strange Days』を演奏したことに意味があるとするなら、それを「君のことを言ってるんだ」と僕たちに突きつけたのが『VISITORS』である。そしてそこから、コロナ禍中での希望について歌った『合言葉 - Save It for a Sunny Day』、僕たちの中の「人を貶めるたびに暮れなずんで行く魂」を問う『銀の月』へと問題意識が境目なくつながって行く流れはむしろ必然ですらあった。

『VISITORS』は「大きな時間」と僕たちの意識の結節点であり、それはデビューから連綿と続く佐野の表現の系譜の中に、コヨーテ・バンドの音がしっかりと位置づけられたことのアンセムであった。この曲によって佐野のキャリアは現在へと架橋されたのだ。

おそらく21時までに終了しなければならないという制約があったものと思われ、ライブ自体は2時間弱のコンパクトなものだったが(アンコールもすぐ出てきた)、そこにデビュー曲から最新シングル、次作に収録予定の未発表曲までアンコールを含めて24曲をブチ込み、表現をさらにアップデートしてきた佐野は、既に次に向かう準備を終えて戦闘モードに入っていることを強く窺わせた。

短いツアーだが重要な位置づけのパフォーマンスであり、後日振り返ったときに「あの時がひとつのポイントだったな」と感じることになるんだろうと思った。



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