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SONGS & FRIENDS Café Bohemia

■2020.2.8(土) 17:15開場 18:00開演
■LINE CUBE SHIBUYA

Vocal, Guitar:佐野元春

Drums:古田たかし
Bass:井上富雄
Guitar:長田進
Keyboards:Dr.kyOn
Keyboards:武部聡志
Sax:山本拓夫
Trampet:西村浩二
Chorus:佐々木久美
Chorus:TIGER

Guest:
GLIM SPANKY
小坂忠
田中和将(GRAPEVINE)
堂島孝平
中村一義
山口洋(HEATWAVE)
山中さわお(the pillows)
RHYMESTER
LOVE PSYCHEDELICO

●Strange Days(GLIM SPANKY)
●Happy Man(GLIM SPANKY)
●月と専制君主(田中和将)
●ジャスミン・ガール(田中和将)
●Wild Hearts(山中さわお)
●スターダスト・キッズ(山中さわお)
●COMPLICATION SHAKEDOWN(RHYMESTER)
●ロックンロール・ハート(小坂忠、松任谷正隆)
●君を連れて行く(小坂忠、山口洋)
●NEW AGE(山口洋)
●彼女が自由に踊るとき(LOVE PSYCHEDELICO)
●虹を追いかけて(LOVE PSYCHEDELICO)
●シーズン・イン・ザ・サン(堂島孝平)
●レインボー・イン・イン・マイ・ソウル(堂島孝平)
●ガラスのジェネレーション(中村一義)
●CHRISTMAS TIME IN BLUE(中村一義)
●99ブルース
●インディビジュアリスト
●Young Bloods
●カフェ・ボヘミアのテーマ

●約束の橋



武部聡志がプロデュースする一夜限りのコンサート「SONGS&FRIENDS」。
今も愛され続ける数々の音楽の名盤は、まさに「100年後も聴き続けてほしいアルバム」。
その音楽の“遺伝子”を受け継ぐ様々なアーティストたちが、世代も時代もこえて、 それぞれの解釈で名盤を完全再現するプレミアムコンサートです。

というコンセプトのアルバム・トリビュート・ライブ。第1回の荒井由実「ひこうき雲」、第2回小坂忠「ほうろう」に続いて、第3回で佐野元春のアルバム「Café Bohemia」を取り上げることになった。会場は新装なった渋谷公会堂。土曜日の夜ということもあってか満員の観客で埋め尽くされた。

僕自身、ライブの構成を全然理解していなかったのだが、アルバムの収録曲をゲストがハウス・バンドをバックに演奏、それ以外にも佐野のレパートリーをカバーし、最後の数曲のみ佐野本人が登場して歌うという趣向。

主催者である武部聡志のスピーチやアルバムの背景を紹介するビデオの上映など凝った仕掛け。ゲストはそれぞれ佐野と縁のあるライン・アップで、演奏の際には自らと佐野との関わりを簡単にスピーチする演出だったが、あまり知らないゲストもあったのでそれぞれのアーティストのキャラクターが窺われてよかったと思う。

ゲストのパフォーマンスはここではすべては紹介しないが、『月と専制君主』という難しい曲を佐野から振られた田中がもう一曲自分で選んだという『ジャスミン・ガール』、フレージングや歌詞にないシャウトまで完全にコピーして愛の深さを感じさせた堂島の『レインボー・イン・マイ・ソウル』が印象に残った。

また、山中が「14歳の時にアルバム『No Damage』を聴いたのが佐野元春との出会いだった」とスピーチした時には、多感な時期にリアルタイムで佐野と出会い、夢中になって何度もアルバムを繰り返し聴いた自分の十代の思い出と二重写しになり、そのような少年らの人生が時間を越えてここでひと時交わることにこみ上げるものがあった。

しかし、この日のパフォーマンスで圧巻だったのは、アルバム「Café Bohemia」から離れ『COMPLICATION SHAKEDOWN』を披露したRHYMESTERだった。「この曲を我々の手で完成させよう」と煽った宇多丸のMC通り、NYで萌芽の見られたラップ、ヒップホップをいち早く取り入れながら、自らのキャリアの中でもワン・アンド・オンリーの特異点となり、またロック・シーンからもラップ・シーンからも正当に位置づけられ、顧みられることのなかったこの曲を、ヒップホップ側からのアプローチで再解釈したパフォーマンスは、歴史的なものだと言っても決して大げさではなかった。

特に、ヒップホップをモチーフにしながらオリジナルにスクラッチが挿入されていないことに物足りなさを感じていた僕としては、この日ブリッジの部分でDJ JINが激しいスクラッチをブッ込んだところで、長い間放置されていた隙間がきれいに埋められ、この曲は本来こうあるべきであったと強く確信した。概ね同化がモチーフになったこの日のライブの中で、ほぼ唯一、異化することを強く志向したパフォーマンスであり、このためにだけでも入場料を払い足を運んだ意味があった。

ライブ全体としてはほぼ原曲に忠実なアレンジで手堅く演奏され好感が持てたが、LOVE PSYCHEDELICOの『虹を追いかけて』のみ別アレンジだったのが残念だった。佐野の意向なのかLOVE PSYCHEDELICOの希望なのか分からないが、他の曲と比べてもバランスが悪かったし、率直に言ってオリジナル・アレンジで聴きたかった。

他にも腑に落ちないパフォーマンスや演出はあったし、アンコールが『約束の橋』なのもどうなのかという感じはしたが、まあ、この企画意図を前提にする限りこういうものとして素直に楽しむべきなのだろう。

アルバム「Café Bohemia」がいつまでも聴き継がれるべき名盤なのは間違いのないことだし、佐野が多くのアーティストに敬愛されていることもよく分かっている。今、それを振り返ることに何ほどの意味があるのか疑問はないでもないが、コヨーテ・バンドとの活動を中心とした佐野のアップ・トゥ・デイトな表現が充実しているからこそ可能になったレトロスペクティブな試みだったと言っていいだろう。

そういう意味では思っていた以上に楽しめたし、一夜限りの特別なトリビュート・ライブとして、ふだん見ることのできないものを見ることのできた貴重な機会だった。



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