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杉真理 & 鈴木茂

■2019.10.27(日) 18:30開場 19:30開演
■Billboard LIVE 東京

Vocal, Guitar:杉真理
Guitar, Vocal:鈴木茂

Keyboards:中西康晴
Bass:岡沢章
Drums:島村英二
Keyboards:松永圭司
●スキニー・ボーイ
●素敵なサマー・デイズ
●内気なジュリエット
●セリーナ
●ソバカスのある少女(鈴木茂)
●虹を見たかい
●Do You Feel Me
●いとしのテラ
●スクールベルを鳴らせ!
●Starship

●バカンスはいつも雨
●A面で恋をして
●コロンブス



BOXが最初のアルバムを出したころ、京都のBIG BANGというライブハウスで彼らのライブを見たのだが、アルバムでは機械で出していたドラムを島村英二が叩いており、その機械よりも正確でありながらバンドとしてがっちり噛み合った演奏を聴いて以来、島村は僕の中では別格のドラマーであった。

今回、その島村に加え、岡沢章、中西康晴、そして鈴木茂という80年代の杉真理のレコーディングの中心メンバーをバックにライブをやると聞いて、これはもう見るしかないだろうと思いビルボードに駆けつけた。

かなり前の方の席だったので、島村を見ていると杉が視界から外れるのだが、たぶん7割か8割方島村のドラムを見ていたと思う。最初こそちょっと入りきれてないかとも思ったが、その正確かつ歌心のあるドラミングですぐにバンドのグルーヴを先導して行ったのはさすがだった。

演奏された曲もこのメンバーでレコーディングされた80年代の曲が中心。特に、1987年に松本隆の自伝的映画「微熱少年」のサントラに収録された『Do You Feel Me』が演奏されたのには不意を突かれうろたえた。当時、オリジナル・アルバムに収録されなかったこの曲を、CDをレンタルして手に入れた大学時代の思い出がよみがえり、胸が詰まった(この曲は1991年にアルバム「MADE IN HEAVEN」に収録)。

『内気なジュリエット』『バカンスはいつも雨』『いとしのテラ』などの代表曲も嬉しかったが、『スキニー・ボーイ』『セリーナ』『スクールベルを鳴らせ!』など、ライブで聴くこともないだろうと思っていたアルバム曲が特に印象的だった。

当然とはいえ異様にかっちりした演奏に杉の端正なボーカルが乗り、「レコードを聴いているような」というのはこういうことを言うのだと実感。ライブにはライブの臨場感があるとはいえ、ライブの演奏がリリース音源に比べ(例えばドラムのフィル・インなど)手数を端折ったりしていると落胆がハンパなかったりするが、そういう手抜き感やサボり感が一切ないのが素晴らしい。

そして、このライブが決して懐旧的なものに堕すことなく、きちんとバンドとリスナーの「今」を架橋するものになっていたのは、いつもながら杉の音楽に対する限りない愛情と造詣、そしてミュージシャンとしてのプロフェッショナリティの力であり、音楽が僕たちの生とどうつながっているかを誰よりも心得た杉の組織力のたまものであったと言うべきだろう。

島村のドラムで杉の曲が聴けたというそれだけでも僕には何物にも代え難い価値のあるライブだったが、もちろんそれだけではない音楽の魔法を感じさせてくれた、記憶に残るパフォーマンスだった。



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