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ソウルボーイへの伝言 2019

■2019.10.15(火) 18:45開場 19:30開演
■マイナビBLITZ赤坂

佐野元春&THE COYOTE BAND

Vocal, Guitar:佐野元春

Drums:小松シゲル
Guitar:深沼元昭
Guitar:藤田顕
Bass:高桑圭
Keyboards:渡辺シュンスケ
Percussions:大井'スパム'洋輔
●ヤァ! ソウルボーイ
●境界線
●君が気高い孤独なら
●ポーラスタア
●私の太陽
●紅い月
●いつかの君
●La Vista é Bella
●愛が分母
●よりよい明日
●新しい雨
●純恋(すみれ)
●禅ビート
●優しい闇

●インディビジュアリスト
●アンジェリーナ

●ガラスのジェネレーション
●悲しきRADIO〜メドレー



本来は初日のはずだった10月12日のクラブチッタ川崎での公演が台風19号のためにキャンセルとなり、この日がツアー初日となった。今回のツアーはその川崎を含め全部で12公演、川崎、東京、神戸を除くと概ね地方都市を中心としたクラブ・サーキットだ。

冒頭こそツアー・タイトルとなった『ヤァ! ソウルボーイ』でスタートしたが、その後はこのところのライブと同様にアルバム「COYOTE」以降の曲で構成、最新のシングル曲『愛が分母』、未発表の新曲『よりよい明日』を含め本編14曲(アンコールは2回で計4曲)を演奏した。

ライブ・ハウスでのスタンディングのライブということもあってか、バラードやアコースティック・セットはなくアップ・テンポの曲で最後まで突っ走る感じのセット・リスト。MCも控えめで、勢いのあるパフォーマンスを次々にたたきつけてくる潔さが印象的だった。

公演の直前(10月9日)にアルバム「或る秋の日」がリリースされているが、佐野のシンガー・ソングライター的な面をフィーチャーしたパーソナルな作品のため、このライブのコンセプトとは合わず、アルバムからは一曲も演奏されなかった。趣旨は理解するがタイミングとしては微妙な時期のツアーになってしまったと思う。

公演初日のため、細かい歌詞の間違いやタイミングが合わないところなども散見されたが、全体としてはコヨーテ・バンドの盤石のコンビネーションと生き生きとした躍動感が同居する清新な演奏が、このところの佐野の作品の表現としての強度をしっかり支える開かれたライブだった。

二度目のアンコールでは佐野と深沼、藤田がアコースティック・ギターを抱え『ガラスのジェネレーション』を演奏。意外な選曲だったが、「つまらない大人にはなりたくない」という自身がかつて発したスローガンに対して、佐野は今もその落とし前をつけ続けているのだと強く感じた。そしてそれは聴く側の我々もまた同じことのはずだと。

どのような言説も結局のところグルっと回って自分の身に突き刺さってくるような、あちらとこちらを隔てること自体が難しい奇妙な時代にあって、一所懸命にあちらとこちらを隔てようとすることが政治的なのではなく、自分もまたその彼我の区別すらつけ難い巨大な構造の一部に過ぎず、そこにおいて個として生き延びる術を考えることこそが政治的だという認識だけが正しいと僕は思っている。今の佐野が歌っていることはおそらくそういうことなのだと感じたライブだった。

キャンセルされた川崎の振替公演があることを期待している。



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