"MORE" MUSIC LIFE
杉真理のワンマンに行くのはもしかしたら初めてかもしれない。僕としては佐野元春、伊藤銀次と並ぶ定番アーティストだし、かつて学祭で見たり、銀次とのジョイントに行ったりはしたが、きちんとしたソロ・ライブは初めてのような気がする。 この日は今年2月にリリースされた10年ぶりのソロ・アルバム「MUSIC LIFE」の発売記念ライブの追加公演という位置づけ。バンドはいつものメンバーにブラス・セクションを加え、パーカッションに高橋結子、清水淳を加えた豪華な布陣だ。 ライブはいきなり『アニーよ目をさませ!』『Lonely Girl』と懐かしい曲でスタート。おそらくはブラスをフィーチャーした曲を中心に選曲したと思われるセット・リストだ。ブラス・セクションがいったん退場し、新譜「MUSIC LIFE」からの曲を続けて演奏。アルバムの完成度の高さを感じさせるパフォーマンスだ。 村田和人のカバー『Once Upon A Time in "Jyo-ji" Town』から、その村田に捧げた『平和な人へ』を経て、再びブラス・セクションを迎え入れ、本編の最後は「MUSIC LIFE」でもラストを飾った『コロンブス』 アンコールは『Voice』から圧巻の『Broadway Showへようこそ』。二度目のアンコールでは2曲演奏した後、追加で『WAVE』を演奏し、2時間を大きく超えるライブは終了した。 ライブは(MC含め)終始杉の暖かく幸福感のあるヴァイブスで満たされており、その場にいた誰もがずっとニコニコしていたと思う。 もちろんここに集まった人は誰もがそれぞれの生活や悩みを抱え、必ずしもハッピーなだけの毎日を送っている訳ではないだろう。僕もそうだし、そしてそれは、おそらく杉自身も同様だろう。しかし、それでもここにいるひとときは、自然に、積極的にハッピーになることができる。それが音楽の力であり、杉真理の力なのだと実感した。 「大丈夫さ」と歌う『コロンブス』には「大丈夫さ 大丈夫さ 大丈夫じゃなくても」というラインがある。日常がままならぬものであることを十分知りながら、それでも最終的に大丈夫であると肯定する意志を杉はいつでも僕たちに示し続けてきたのだし、僕たちはそれを信頼し続けてきたのだ。 ブラスを入れ、清水と高橋がパーカッションを担当する演奏は重厚であり迫力があった。ひとつひとつの曲がしっかりした起伏とキャラクターをもっていることもあって、僕たちは日本のポップスの最良の部分を2時間以上にわたって目撃し、体験することができた。 杉の声がややかすれ気味だったのが気になったが、ボーカルも圧倒的で安定感があった。しばらくは杉の旧譜を聴き返す日々になる。 2019 Silverboy & Co. e-Mail address : silverboy@silverboy.com |