ウキウキミュージック
1日2公演の限られた時間の中でゲストを多数呼んだため窮屈なセット・リストになり、銀次自身の曲を聴くという意味では食い足りないところもあったが、全体としては音楽への愛情や音楽観を共有するゲストたちとの息の合ったコラボレーションが見られ、素直に楽しめるライブだった。 特に印象に残ったのはサニーデイ・サービスの曽我部恵一。銀次よりはひとつ下の世代に属するアーティストだが、かねてはっぴいえんどなどからの影響を公言しているだけあって、この日のライブにも違和感なく収まっていた。銀次とのデュエットでそのはっぴいえんどの『12月の雨の日』を披露したが、オリジナルに忠実な演奏は銀次と曽我部の先達へのリスペクトを感じさせ迫力があった。 曽我部のミュージシャンとしての力を感じさせるパフォーマンスだったし、その時代を知る銀次や上原ユカリ、細井豊らを迎えてこの曲を演ることには曽我部も感慨があったのではないか。 杉はこのところ銀次とジョイントする機会も多いが、今回は久しぶりのソロ・アルバム「MUSIC LIFE」をリリースしたばかりというタイミングで、アルバムのオープニング・ナンバーである『最高の法則』を演奏。杉のソング・ライティングの集大成のようなポジティブなポップ・ソングだ。杉の、ただ若ぶって見せる訳ではなく、いたずらに老成する訳でもない、自然体の、杉真理ポップスとしか呼びようのない記名性の高いポップ表現の価値を改めて認識した。 気になったのは、アンコールの大団円で『DOWNTOWN』が演奏されたこと。この曲を演るのは今日のようにゲストを迎えたライブではこれまでもあったことだが、僕にすればこの曲は銀次の曲というよりは山下達郎の曲。銀次のレパートリーの中にも名曲は数多あり、銀次自身のメロディ・ラインをもっと聴きたいと思った。 「裏コンセプト」の「ナイアガラの遺伝子」は選曲にも表れていたが、銀次や杉の音楽が大瀧詠一につながっているのは明らかなことであり、ことさらスローガンにしなくても、また大瀧の曲を演奏する訳ではなくても、彼らが普通に演奏し、歌うことがそのまま大瀧へのオマージュになる。大瀧への愛惜の念は静かな形で表明されることでも十分ではないかと思う。 同じライブを2回見るつもりだったが、セット・リストは結構差し替えがあり、ゲストが異なることもあって、2日間で異なる曲が聴けたのは意外だったが嬉しかった。 2019 Silverboy & Co. e-Mail address : silverboy@silverboy.com |