45年目のウキウキミュージック
多彩なゲストを招いてのプレミアム・ライブ。時間の制約がある中でゲストの楽曲もマメに演奏したので銀次自身のパフォーマンスが物足りなかったのは想定の範囲内か。佐野元春を初めとする豪華なゲストが駆けつけてくれること自体が、銀次が日本のポップ・ミュージックに果たした役割の大きさを示しているのだと素直に考えるべきだろう。 ライブ自体は演奏もがっちりしていて安心して楽しめた。特に上原裕が渾身の力をこめてドラムをどかどか叩いているのがとても印象的だった。ドラムをあんなに力いっぱい叩く人は初めて見たかもしれない。間違いなくこの日の演奏の核になっていたと思う。まさに盟友というべき銀次のパートナーだと思った。 大滝詠一に見出され、日本のロックの創成期に足跡を残した70年代、プロデューサーとして佐野元春のデビューに関わり、ソロ・アーティストとしても高い評価を得た80年代を経て、一度は雌伏を余儀なくされ、その後プロデューサーとして業界に復帰を果たした90年代、そして着実に仕事をこなしながら地に足のついた活動を続けている00〜10年代と、伊藤銀次は我が国のポップ・ミュージックの歴史を見続けてきた。 そして僕もまた、そのような銀次の軌跡を追い続け、銀次の音楽を聴き続けてきた。こうして自分のサイトに銀次のコーナーを作り、新しいアルバムがリリースされるのを待ち続けてきた。そのアルバムが24年ぶりにリリースされることとなり、この日、佐野元春、杉真理を従えてフロントに立つ銀次の姿には感慨深いものがあった。そういう意味のあるライブだったし、それに見合うパフォーマンスだったと思う。 佐野元春が『I'm in blue』をやってくれたのにはグッときた。この曲は銀次がコ・プロデューサーとして関わり、バック・コーラスも担当している。銀次からオファーした演奏候補曲リストの中から佐野がこの曲を選んだというところに銀次と佐野の信頼関係というか呼吸を感じた。二度と見られない名演だったと思う。できれば杉真理とは『あの娘は君のもの』あたりをハモって欲しかった。 その他の選曲については不満もあり、特にアンコールの大団円では銀次のソロ・レパートリーを聴きたかったが、曲数に限りもあるし仕方のないところか。次の機会を楽しみにしたい。印象深く、また前向きの力に満ちたライブだった。 2017 Silverboy & Co. e-Mail address : silverboy@silverboy.com |