伊藤銀次のWINTER WONDER MEETING 2016
先日の杉真理とのジョイントを横浜まで見に行った流れで、ひさしぶりに伊藤銀次のワンマン・ライブに行った。会場は吉祥寺のスター・パインズ・カフェ。フロアにぎっしり並べられた椅子に座り、ビールを飲みながら開演を待った。かなりの入りで最終的には空席は見当たらず。地道な活動が実を結んだものだと思う。 ライブはバンド構成で、ポリスター時代の曲を中心に、概ね原曲に忠実なアレンジで演奏される。どの曲ももともと完成度の高いものだけに、今聴いてもまったく違和感なく2010年代の心象風景にフックして行く。もちろん聴き慣れた曲だということはあるが、正統なポップミュージックの系譜を継承していることの証左だ。 特に『NIGHT PRETENDERS』『恋のソルジャー』『雪は空から降ってくる』『Destination』など好きな曲が聴けたのは嬉しい。東芝時代からももう少し選曲があればと思ったが、こういうセットリストになるのは仕方ないところか。クリスマスということなら『ほこりだらけのクリスマスツリー』とかもやって欲しかったが言い始めるとキリがない。 ゲストには東郷昌和と杉真理。杉はソニー時代の定番を敢えて外したような選曲で正直食い足りなさを感じた。僕としては『天然色』をやるのなら、銀次や佐野と並行して聴いた頃の親しみある曲があってもよかったと思う。パフォーマンスはどちらもベテランらしく間違いのないもの。『ウィスキー』で歌詞が飛んだのは愛嬌。 7時に開演し終わったのは10時ごろ。途中幕間ありの2部構成ではあったが、それでも実質2時間半以上は演奏していたと思う。バンドの演奏もかっちりしており安心して聴けた。何よりダディ柴田の元気な姿を久しぶりに見られて、その演奏を聴けたのが嬉しかった。ポリスター時代の曲にはサックスが不可欠だ。 選曲の話をするなら、『天然色』に加え『A面で恋をして』、『DOWN TOWN』など、殊更にナイアガラを意識した曲は不要だと思った。『DOWN TOWN』は銀次が作詞しているし、シュガーベイブにも在籍したことはあるが、僕の認識では山下達郎の曲。銀次のライブでわざわざ聴きたいとは思わない。それなら銀次の曲を聴きたい。 『天然色』については先に書いた通りだし、『A面』も東郷に佐野のパートを歌わせてまで演奏する必要があったのか疑問。もともと銀次は参加していない曲だ。むしろ、リリースしたばかりのココナツ・バンクのアルバムからの曲や、先にも書いた通り東芝時代の曲などももっとあっていいと思った。 銀次が大滝詠一の薫陶を受けたナイアガラ直系のミュージシャンであることは動かし難い事実。銀次が銀次として、自分の曲を演奏し、歌うことで、大滝の遺志を継ぐ決意は十分表現されている。「トライアングル」収録の『幸せにさよなら』も演奏しており、それ以上の言及すら不要だと思えるくらいだ。銀次自身が大滝の大切な遺産なのだ。 内輪のパーティ感は拭えない部分もあったが、曲がオーソドックスなだけに古くならないのと、銀次自身がココナツ・バンクのアルバムを出すなど前を向いて走っていることもあってか、風通しのよさがあって楽しいライブだった。あと、ところどころ歌詞の怪しい部分があり、アンチョコあってもたぶん誰も文句は言わないと思った。 2016-2017 Silverboy & Co. e-Mail address : silverboy@silverboy.com |