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Smoke & Blue 2015

■2015.4.2 20:40開場 21:30開演
■Billboard Live TOKYO

Vo,Gt,Pf:佐野元春

Dr:古田たかし
Ba:井上富雄
KB:Dr.kyOn
Chello:笠原あやの
●トーキョー・シック
●こんな素敵な日には
●夏草の誘い
●エンジェル
●マナサス
●7日じゃたりない
●クエスチョンズ
●仕事帰りのおんなたち(新曲)
●COME SHINING
●観覧車の夜
●約束の橋
●Doctor
●夜のスウィンガー
●HAPPY MAN



2012年、2014年に続いて3年目となったビルボード東京でのシリーズ・ライブ。3ヵ月に渡って東京と大阪で行われるチェロをフィーチャーした小編成のアコースティック・ライブであるが、今回は最初のサーキットである4月の東京公演、2日目のセカンド・ステージ。近くでゆっくり晩ごはんを食べていたらうっかり9時半をまわってしまったが、開演が遅れていて助かった。

ここでのライブについてはさんざん文句を並べてきたし、別にそこで力説した居心地の悪さが解消した訳でもないのだが、まあ、仕事帰りにゴージャスなハコのカウンターに座ってトニック・ウォーターを飲みながら佐野のアコースティック・ライブをゆっくり眺めるのもそれはそれで悪くはない。

僕自身にはその程度の経済的余裕はあるし時間も何とかできた。きっと佐野ファンの多数派はそのような「少しばかり生活に余裕のある都市勤労者層」なのだろう。ただ、「つまらない大人にはなりたくない」とか何とか、こぶしを振り上げてた頃からは随分遠くまで旅してきたんだなあと思うだけだ。構わない、誰もがいつまでも小汚いガキであり続けなければならない理由はないのだ。

ライブそのものは素直に楽しめた。このシリーズ・ライブでは初めて披露される曲も少なくなく、このライブのために作られたという新曲も演奏された(「まだレコーディングしていないので歌詞に文句があったら教えて欲しい」と)。選曲はアグレッシヴで、起伏に富んだステージ構成になっており、いい意味で予想に反するライブであった。

アルバム「月と専制君主」からの『夏草の誘い』『クエスチョンズ』は、アルバムを補完するツアーがなかったことを考えれば(あれは震災の年だった)、ようやくライブでテーマが完結した印象を持った。特に『夏草の誘い』でチェロの笠原が控えめなコーラスをつけていたのが絶妙のアクセントになっていた。

アルバム「THE BARN」からも3曲が演奏された。HKBの「原体験」と言ってもいいアルバムだが、このアルバムの持つ、アーシーでざっくりした手ざわりが、アコースティック・セットによって親密さを伴って伝わってくる。このアルバムからなら、『ヘイ・ラ・ラ』や『風の手のひらの上』なども聴きたかったが。

新曲『仕事帰りのおんなたち』はミニマルなトーキング・ブルース調の佳曲。音数を徐々に積み上げるようなアレンジが印象的だ。テーマにややステロタイプを感じないでもないが、そこは当の「仕事帰りのおんなたち」からの意見によって修正されるのだろう。音源としてのリリースを期待。

僕にとって最も印象に残ったのは『COME SHINING』。アルバム「VISITORS」に収められたこの曲は、佐野のレパートリーの中でも最も典型的なラップ・ナンバーだが、それをアコースティック・セットで演奏するというチャレンジには思わずニヤリとさせられた。

この曲に関してはアレンジを大きく変える訳ではなく、オリジナルの曲構成をこの日の楽器に置き換えて演奏するスタイル。もともと「歩くスピード」の曲だが、音数の少ないセットで、「ビートは続いて行く」「今夜愛を交わそう」というメッセージがよりヒューマンかつヴィヴィッドに表現される。曲そのものの持つ力と、それを引き出すアレンジや演奏の力が拮抗した名演だったと思う。

アンコールを入れて14曲のステージ。2回公演であり開演が遅いことを考えてもこんなものだとは思うが、あっという間のライブだった。来月を楽しみに待ちたい。



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