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2014 Autumn Tour

■2014.9.28 17:00開場 17:30開演
■CLUB CITTA'

Vo,Gt:佐野元春
Dr:小松シゲル
Ba:高桑清
Gt:深沼元昭
Gt:藤田顕
KB:渡辺シュンスケ
●ナポレオンフィッシュと泳ぐ日
●Young Bloods
●星の下 路の上
●夜空の果てまで
●Us
●黄金色の天使
●呼吸
●La Vita e Bella
●世界は慈悲を待っている
●ポーラスタア
●食事とベッド
●詩人の恋
●君がいなくちゃ(新曲)
●優しい闇(新曲)
●ボヘミアン・グレイブヤード
●約束の橋
●悲しきRADIO

●SOMEDAY
●アンジェリーナ
●ダウンタウン・ボーイ



「それは家族の問題、家族の間の話さ」。スライ&ザ・ファミリー・ストーンの『ファミリー・アフェア』に乗ってメンバーがステージに現れる。ライブの始まりだ。「それは家族の問題、家族の間の話さ」。

ツアーの初日となるこの日、演奏された曲は本編17曲、アンコール3曲の合計20曲。そのうち、アルバム「Coyote」と「Zooey」からの曲が計10曲、レコーディング中とコメントのあった新しいスタジオ・アルバムからの新曲が2曲。実に本編17曲の7割以上はコヨーテ・バンドでレコーディングした曲だった。

この事実が示すものはシンプルだ。佐野元春はこのライブで、何よりもまずコヨーテ・バンドのアンサンブルを聴かせたかった。結成から8年近く経ち、単なるセッション以上の何かを共有するファミリーとして、コヨーテ・バンドはそれ自身の歴史を獲得するに至った。そのことを佐野は僕たちに伝えたかったのではないだろうか。

例えば『黄金色の天使』での渡辺シュンスケのオルガンはどうだ。オリジナル・アレンジを踏襲しながら、ライブの一回性を強く感じさせるスポンテイニアスな演奏。抑制を効かせながらもエモーショナルな、歌うようなオルガンは、自分にとっての「黄金色の天使」を探し求めるこの曲の、終ることのない内面への旅を際立たせる。

あるいはまた新曲『優しい闇』での小松シゲルの激しいドラムはどうだ。佐野の足跡を正確になぞり、そのメッセージを改めて喚起して行くようなアグレッシヴなタム回し。アウトロでは佐野そっちのけで小松に見とれていた。

『詩人の恋』では、佐野のアコースティック・ギターを静かに裏打ちして行くバンドのバランスの取れた演奏が、「詞を聴いて欲しい」とコメントして歌い始めた佐野の意図を的確に表現していた。「革命は静かに始まっている」「君といつかこの世界を変えてみたい」と歌う佐野の眼前の広がる風景を、バンドもまた共有しているのだと強く印象づけた。すべての戦いは想像力の中で行われるのだ。

ザ・ハートランド、ホーボー・キング・バンドを経て、今、ひと世代年下のコヨーテ・バンドを率いる佐野は、年上のいとこのようであり、大学を卒業したばかりの新米教師のようである。まるで20代の頃のステージを思い起こさせる、つっかかる口調で弾丸のようにしゃべるMCも、佐野がバンドとのオープンな相互作用に支えられていることを示しているかのようだ。

このバンドの特徴である、ツイン・ギターを中心とした潔いギター・サウンドは、これ以上削ぎ落とすものなどないというソリッドな世界観の表れか。本質に直接触れようとするような性急で潔癖で直接性への意志に満ちたこのバンドの清新な音は、もはや余計なものにかかずらっている時間などないという佐野の意識が切実に求めたもののはずだ。

この日のライブは、佐野が、仲間と息を合わせてやかましいロックを奏でることの楽しさ、嬉しさを、まるで子供みたいに見せびらかしているようだった。そしてその背後には佐野とバンドが築いた揺るぎのない信頼関係があるはずだ。そのことを佐野は、直近のレパートリーで固めたステージで僕たちに示したのだ。

本質を直接ビートしながら、その先へもっと。それは佐野元春の新しいスタンダードであり、佐野はそのためのファミリーを手に入れた。僕たちはまた新しい約束を交わした。



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