logo 「ゆらぎ」の中でトーチをかざして - Kyoko


元春を聴きつづけて、19年目の夏、
「Stones & Eggs」が私の元に届けられた。

その中で私の心に積もった、新しい実験たち。

「GO4」に見られる、
「仲間でいるときが100%ハッピー
孤独でいるときは10%ラッキー」

のような、一見それまでの佐野元春イディオムからは
稚拙にも映るコトバ。

「GO4 Impact」で、ニュージェネレイションの降谷建志に
リミックスを依頼した事実。

「エンジェル・フライ」での
「いっしょにランチたべよう」
のような、無抵抗で、あまりにも無垢な言語。

ハートランドを解散してから、「フルーツ」、そして
「THE BARN」で、
彼はより広い世代とつながってゆくために
表現の実験を繰り返してきている、私はそう思っていた。
時に、それは迷いさえも露呈して。
そんな彼をありのまま、私は見つめつづけた。
辿りつく場所は、まだ現れていない。
それでも彼は、広い世代に伝わる新しい普遍へと、
この、「Stones & Eggs」でさらに歩みを進めた。

Silverboy氏が「時代と切り結ぶということ」で
言っていたように、
確かにこのアルバムはティーンエイジャーへの伝達を
意識するあまり
ある種の佐野元春らしからぬ不自由さを抱えてしまっているかもしれない。

それでもたぶん、佐野元春というアーティストは、
迷いながらも、「ゆらぎ」の中でトーチをかざして、
未来の海へとダイブしなければいられなかったのだろう。
10代、20代、30代、40代・・・・とサヴァイヴァルへの意思を伝え、
わかちあうために。
そう、こんな世界でも、マトモにやってくこと。
実験を試み続ける、彼の勇気に拍手。
それは、もしかしたら今までの既成のロック・フォーマット
からさえもはみだして、
ここではないどこかへ向かうかもしれない。
いずれにせよ、それは神のみぞ知ることだ。

それでも本気のダイブを繰り返す彼の勇気に、
あらためて、心から拍手。

そして、私は、といえば、
自分のトーチライトの灯を絶やさないよう
時に注意しながら、
辛抱強さを試されつつも、
「ほんとうに生き抜こうとしている」彼の奏でる音楽に
ずっと耳を傾けてゆくだろう。
いままでも、そして、これからも。
なぜなら、彼が生き抜こうとしている世界は、
私が生き抜こうとしている世界に他ならないから。

バトルは続く。
そして、今日も彼は
「ゆらぎ」の中でトーチをかざしてダイヴの準備をしている。

OK!一緒にいこう。




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