logo #3のブルース


 僕のダディとマミィはきょねん「りこん」しました。ダディはアメリカ人でマミィは日本人です。「りこん」をするとき、マミィは「今日からマミィとふたりでくらすのよ。たぶん、いろんな人があなたのことを[かわいそう]とか言うと思うけど、それはちがうからね。[かわいそう]なことと[しかたのないこと]は全然ちがうのよ」と言いました。僕はその意味がまったくわかりませんでした。「It's OK」マミィは言います。「いつかわかる。大事なことは、いつかわかるようになっている」「All right」僕は答えました。

 そうして1年が経ちました。僕たちは仲良くやってきました。何回かマミィのボーイフレンドは変わったけど、今のボーイフレンドとマミィはどこへ行くにも一緒に行きます。ダディにも時々あいます。ダディは「あたらしいおくさん」という人といっしょに住んでいるので、毎日はあえません。「Hey, what's up boy?」ダディは僕とあうときそんなふうに言って、僕を抱き上げます。ダディのお顔のおヒゲが痛いので僕がイヤイヤをしたりすると、ダディはものすごく悲しそうな瞳で僕を見つめるので、最近は「Dad!!」としか言わないようにしています。

 僕はダンスがすきです。マミィと一緒によくおどります。僕たちがすきなのは、「そうる」なナンバーですけど、このごろマミィは毎朝「さの」という人の「だいじょうぶ」というやつを必ずききます。マミィは「だいじょうぶ」というコトバがすきだと言います。にほんごが少しだけ話せるダディも「ダイジョブ?」とよく言います。あと、マミィがボーイフレンドとお話しているときも「だいじょ〜ぶ、Everything is gonna be all right」とよく言っています。そしてマミィはこの「さの」という人も「だいじょうぶ」がすきなのよ、とおしえてくれました。どうしてその「さの」という人が「だいじょうぶ」をすきなことをマミィが知っているのか、僕はたずねました。「だってしかたのないことに対して、だいじょうぶとしか答えようがないもの。そういうことのわかる大人のひとなの、彼は。わかるのよ、マミィも。ね、言ったでしょ、いつかわかるようになるって」いつだろう、僕はふしぎなきもちです。なにかわかるようになったとき、そのとき僕はどこにいるのだろう、そんなふうに思いました。そして「心はヘビィだけど顔ではいつも大丈夫、大丈夫」というフレーズもすごくすきなの、マミィのしずおか県のおともだちもよくうたっていたのよ、と言いました。たぶん、いまもうたっているわ。マミィは僕のおでこにキスをしました。

 「早く手を洗って、服を着替えて」マミィが僕をよんでいます。きょうはこれから、マミィとマミィのボーイフレンドと3にんでディナーをたべにいくのです。マミィはおにくがたべたいと言っていて、マミィのボーイフレンドは金曜日はキャットフィッシュにしてくれよ、プリーズおれはジョージアの人間なんだから、とか言っているのがきこえます。僕はもしここに「さの」という人がいたら「だいじょうぶ」というのかなっておもいました。




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