JGB長編レビュー 2003-2006 ここでは21世紀に入ってから2009年に死亡するまでのJGBの作品2編をレビューする。快適な現代生活のイコンに宿る狂気、暴力への傾倒という意味ではこれらの作品はいずれも「殺す」以降、「コカイン・ナイト」、「スーパー・カンヌ」とも通底している。中産階級革命やショッピング・モール・ファシズムといった着想はJGBならではだが、いささかそこに使い回し感があるのも事実で、最初に「ハイ・ライズ」や「クラッシュ」を読んだときのような衝撃は正直ないと言っていいだろう。 だが、今のところ未訳であるこれらの作品を、原書ででも読もうとする価値があるとするなら、僕たちの精神の奥深くに眠る性衝動、暴力衝動がクリーンな現代社会の何と果たして共鳴し得るのかというテーマへのJGBのこだわりこそその中心だろう。管理されたニュー・タウンの専門職家庭、リゾートのスポーツ・クラブ、ビジネス・コンプレックスに続いて、JGBはいったいどこに現代的な暴力の萌芽を見出したのか、それを僕たちは追いかけなければならない。 なぜならそれは、JGBの妄想の中のできごとではなく、僕たち自身の中に存在するものだからだ。JGBはただそれを見つけ、白日の下に引きずり出したに過ぎないのだ。そこにおけるJGBの探求心は21世紀の今日においても唯一無二のものだったと言っていいだろう。 2006-2011 Silverboy & Co. e-Mail address : silverboy@silverboy.com |