HEARTLAND
初のライブ・アルバム。1986年から87年にかけて行われたツアー「Cafe Bohemia Meeting」から15曲を収録。このうち「インディビジュアリスト」「Strange Days」は87年5月28日の渋谷公会堂での録音、残りの13曲はツアーの最後にスペシャルとして行われた「横浜スタジアムミーティング」での録音となっている。尚「インディビジュアリスト」は12インチシングルに収録されていたライブ・バージョンと同じ音源である。また、このアルバムから「ガラスのジェネレーション」のライブ・バージョンがシングルで先行リリースされたが、そのカップリングとなっていた「ダウンタウン・ボーイ」のライブ・バージョンはこのアルバム未収録となっており、本来であればこのアルバムの「アンジェリーナ」と「Wild Hearts」の間あたりに位置すべき曲であったと思われる。このアルバムの収録曲のうち9曲はビデオ「Cafe Bohemia Live!」に同音源で収録されている。 このアルバムはアナログ2枚組(CDは1枚)で発売され、初回は化粧箱入り。この中には28ページの大判写真集兼歌詞カード(アナログ・ジャケット・サイズ)と、「エクストラ・ノート」と題して「ハートランドからの手紙#30」や渋谷陽一他の評論を収めたパンフレットが封入されていた。 このツアーは佐野元春がニューヨークから帰国した後、ハートランドとの共同作業を通じて再び日本のシーンに新しい足がかりを確保し、その成果が次のアルバム「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」に結実して行く充実した時期でもあった訳で、佐野としてはハートランドへの感謝の意味もあって、この横浜スタジアムミーティングの模様を記録に残しておきたいと思ったのだろう。そのことはアルバム・タイトルを「HEARTLAND」としたことにも如実に表れており、バンドの成長と自身の表現の深まりを、スタジアムでのライブというイベントで幸福にも確認できた佐野の喜びがうかがえる。 MCは一切なく、拍手や歓声も極力抑制されている。音像はクリアで、スタジオライブと言っても通るくらい、演奏もシュアーでタイトである。収録曲の多くはオリジナルとはアレンジが変更されていて、特に「Please Don't Tell Me A Lie」は大胆なシャッフル・ビートのロックンロールにリアレンジされた。このアルバムのハイライトの一つである。また「ガラスのジェネレーション」はスロー・バージョンで歌われており、当時の佐野の、この曲に対する複雑な想いが伝わってくる。「Complication Shakedown」や「New Age」などアルバム「Visitors」収録曲のアレンジも興味深く、「New Age」では後に「ハートランド・バージョン」と呼ばれるアレンジの原型が披露されている。 このアルバムが発売された当時、僕はこのアルバムに収録されている「Heart Beat」のアレンジがあまり好きになれないこともあって、シングルから「ダウンタウン・ボーイ」を追加し、このアルバムから「Heart Beat」や「Rock & Roll Night」を抜いて編集したテープの方をよく聴いていた。 それからこのアルバム以降、編集盤が出るたびに思うことは、曲名の表記をないがしろにするのはやめて欲しいと言うことである。たとえば「SOMEDAY」はあくまで「SOMEDAY」であって「サムデイ」ではないし、「Rock & Roll Night」は「R & R Night」ではない。「Heart Beat」のサブ・タイトルもオリジナルと違っているし、それに「アンジェリーナ」の英文表記は、アルバム「BACK TO THE STREET」では「Angerina」となっていたはずだ。「ガラスのジェネレーション」に「Crystal Generation」なんて田中康夫みたいないい加減な英文タイトルをつけるのもやめて欲しい。 1997-2021 Silverboy & Co. e-Mail address : silverboy@silverboy.com |