村上春樹 作品レビュー 村上春樹の小説を読むとそれについて語りたくなる。そこには自分がふだん感じていながらうまく言葉にできなかったことがそのまま書かれているからだ。これは僕の小説だ、これは僕のことなのだ、そう大声でふれてまわりたくなる。 だけどいざ実際に語ろうとするとそれはやはりうまく言葉にできない。考えてみればそれは当たり前の話かもしれない。村上春樹が何百枚もの原稿用紙を費やして書こうとしたことを、僕たちが簡単にひとことやふたことで語れる訳がないのだ。僕がその小説を読んで感じたことを伝えたければ、その相手にも同じ小説を読んでもらうしかない。村上春樹の小説というのはそういう面を持っている。 だからここにあるのはきちんとした書評ではない。僕が村上春樹の長編小説をあらためて発表順に読み返しながら思いついたことを書きとめたメモに過ぎないと思って欲しい。これから村上春樹を読もうとしている人にとっての簡単な見取り図とか、村上春樹の熱心な読者がこれまでとは違った角度から再読するための手がかりとか、そんなものだ。そして何より、僕自身にとっての、自己療養のためのささやかな試み。やれやれ。 僕はこの試みによって村上春樹の小説を分析したいと思っている訳ではない、いかなる意味でも。これは僕が村上春樹の小説を読んで感じた心のふるえのようなものの正体を僕なりにつきとめて言葉に置き換えようとする一連の作業なのだ。分析なんか鰐に食われてしまえばいい。大学の卒業論文を書いているのとは違うのだ。 ともかく、僕は村上春樹の小説が好きなのだ。僕と同じように村上春樹の小説を愛する人たちに、そしてそれ以外の人たちにも、読んでみて欲しい。 【長編小説】
【短編集】
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