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The 20th Anniversary Edition's 2nd

Epic Sony
ESCB 2190 [CD] (2000.11.22)
MHCL 2898 [CD] (2021.6.16)

PRODUCER:
佐野元春
MIXING ENGINEER:
渡辺省二郎
MASTERING ENGINEER:
前田康二

作詞・作曲・編曲:
佐野元春
●ディズニー・ピープル Disney People
●君が訪れる日 The Day
 '00 mix version
●ミスター・アウトサイド Mr. Outside
 '00 mix version
●ブッダ BUDDHA
●インターナショナル・ホーボー・キング
 International Hobo King
 '00 mix version
●君を失いそうさ I'm losing you
 '00 mix version
●天国に続く芝生の丘
 Grass Vally to Heaven
 '00 mix version
●風の中の友達
 '00 mix and edited version
●欲望 Desire
 '00 mix and edited version
●ジュジュ JuJu
 '00 mix version
●石と卵 featuring Bonnie Pink
 Stones and Eggs
●ボヘミアン・グレイブヤード
 Bohemian Graveyard
 '00 mix and edited version
●モリスンは朝、空港で Morrison
 '00 mix version



2000年1月にリリースされたデビュー20周年記念ベスト盤「The 20th Anniversary Edition」の続編として企画されたベスト・アルバム。2枚組の「Anniversary Edition」に収録されなかった曲の中から、佐野自身の選曲により13曲を収録したいわば「裏ベスト」である。尚、公式収録の13曲が終わった後に、いわゆるシークレット・トラックとして「モスキート・インタールード」、「サンチャイルドは僕の友達」の2曲が収録されている。

収録曲のうち、「ディズニー・ピープル」と「ブッダ」は未発表曲。これらは1987年後半に東京でザ・ハートランドとともに行われたもののそのほとんどが未発表となっているレコーディング・セッションからのトラック(「モスキート・インタールード」も同様)で、「ディズニー・ピープル」は「エイジアン・フラワーズ」、「ブッダ」は「ハッピーエンド」のそれぞれ原型となった曲(「エイジアン・フラワーズ」と「ハッピーエンド」はともにアルバム「sweet 16」に収録)。このアルバムのために「石と卵」を新たにボニー・ピンクとのデュエット・バージョンとしてレコーディングし直した(編曲は井上鑑)他、残りの曲も新たにミックスし直されている(一部の曲はさらに編集によりサイズが短く変更されている)。また、シークレット・トラックの「サンチャイルドは僕の友達」は大胆にストリングスを導入した「フルーツ・パンチ」ツアーのリハーサルからのライブ・バージョン。

いわゆる代表曲を集めた「Anniversary Edition」に比べ、このアルバムは、認知は低くても佐野の中で大きな意味を持つ曲を集めたという点で、より佐野元春の実像に近くプライベートな意味合いの強いコンピレーションであるということができるだろう。ここに収録された曲はどれも「不在と喪失」を強く印象づけて行く。欠けているもの、足りないものについて考えることで初めて今ここにあるものの意味を知ることができるのだとすれば、このアルバムは佐野の正史からこぼれ落ちたもの、そこで語られなかったものを拾い集めることで、佐野元春というアーティストの重層性を立体的に検証して見せようとする試みだということができるのではないだろうか。

未発表の2曲はいずれも力強いロックンロール。残念ながら「エイジアン・フラワーズ」や「ハッピーエンド」が発表されてしまった後ではそれらを意識せずに聴くことは難しいが、単体としても十分発表にたえるクォリティの楽曲であり、このセッションでレコーディングされた他の音源に対する興味をかきたてる。「石と卵」はファルセットで歌ったオリジナルと異なり、高音のパートをボニー・ピンクにまかせて佐野はウィスパー・ボイスで歌う。これによってこの曲の持つニュアンスは深まり、オリジナルでは曖昧だった存在意義がはっきりと伝わってくるようになった。高く評価したい。

他にもイントロのSEをカットしアウトロも通常のフェイドアウトになった「君を失いそうさ」や中期ビートルズの「I Am The Walrus」を思わせるアレンジがスリリングな「サンチャイルドは僕の友達」、アルバムのオーバーチュアから独立した曲としての表情を獲得した「ミスター・アウトサイド」や「インターナショナル・ホーボー・キング」など、興味深いトラックも多い。収録曲や曲順にはファンであればそれなりの賛否はあるだろうが(例えば「風の中の友達」よりは「水の中のグラジオラス」を入れて欲しかった、とかいう類の)、むしろ佐野がそれぞれの曲をなぜこのアルバムに収録したのか、その曲が佐野にとってなぜ、どのように「大切」なのかを考えてみることがこのアルバムを理解する手がかりになるのではないだろうか。

このアルバムで見逃してはならないもうひとつの点は、アルバムの随所にうかがえるサイケデリック・フレイバーであり、ビートルズからの影響である。「君が訪れる日」、「君を失いそうさ」、「モリスンは朝、空港で」そして「サンチャイルドは僕の友達」ではかなり直接的なビートルズ・イディオムが導入されているし、他にもグラウンド・ビートを取り入れた「ミスター・アウトサイド」や東洋的な雰囲気を持つ「インターナショナル・ホーボー・キング」(歌詞には「タオイズムにしびれた君」が登場する)ではサイケデリックなモメントが大きな役割を果たしている。こうした事実は「GRASS=ハッパ」というアルバム・タイトルとも直接つながっている。

20周年というアニバーサリー・イヤーにあって、その最後を飾るべくリリースされたアルバムであり、佐野元春というアーティストを読み解く上では極めて重要なコンピレーションであるが、逆にいえばこの作品は良くも悪くもある程度佐野を知るファンのためのアルバムという側面が強い。少なくとも初めて佐野を聴こうという人に入門編として勧められるアルバムではないし、クリスマスを控えた時期に市場に投入するべきアルバムでもなかっただろう。「Anniversary Edition」と合わせて聴くことでこの作品の居場所が見えてくるはず。



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