THE ESSENTIAL TRACKS 2005-2020
デビュー40周年を記念して企画されたCD2枚組、2005年のEP「星の下 路の上」以降、コヨーテ・バンドと制作した楽曲のベスト。全32曲。デビューからアルバム「THE SUN」までの作品からのCD3枚組のベストが同じ日にソニー・ミュージック・ダイレクトからリリースされており、両方を合わせて佐野の全キャリアを総括する実質5枚組のセットになる。当初は6月10日リリースと告知されていたが「新型コロナウィルス感染症の影響で」リリースが延期され、9月23日に上記のソニー版ベストと同時発売されると告知された。その後、ソニー版の方に「製造過程で重要なミスがあったため」発売はさらに延期され、これに合わせる形で本作も最終的に10月7日にリリースされた。 新曲『エンタテイメント!』を収録。一部の曲に渡辺省二郎がリミックスを行っている他、一部をカットしてサイズを短くした曲に加え、テンポを落とすことでサイズを長くするという異例の編集が行われた曲が複数ある。大谷隆之による「HISTORY of THE COYOTE BAND」と題するバンド・ヒストリーや佐野自身による各楽曲へのコメントなどを掲載した100ページを超えるブックレットが付属している。 佐野がコヨーテ・バンドと制作したオリジナル・アルバムは4枚で収録曲は48曲。これにEPで発表された曲などを加えても50曲強の中から新曲を除いても31曲を収録しており、「エッセンシャル」という割りには対象となる曲の半分以上を占める。特にアルバム「BLOOD MOON」からは全12曲のうち実に10曲がこのアルバムに収録されており、オリジナル・アルバムを買わなくてもいいくらい。逆に、コヨーテ・バンドの演奏ではあるものの佐野個人名義のアルバムとしてリリースされた「或る秋の日」からは収録されていない。 佐野自身がいかにコヨーテ・バンドとの活動に手ごたえを感じ、最近の作品に自信を持っているかということの表れだとは思うものの、約170曲から48曲をセレクトしたソニー版のベストに比べると、この半分の曲数くらいがアルバム4枚のバンドの初めてのベスト・アルバムとしては妥当だったのではないかという気もする。 ただ、実際聴いてみると外すべき曲はなかなか見当たらず、現在に至るコヨーテ・バンドとの活動が充実したものだということが実感できるのは確か。これ以上絞りこめない、これくらいは全部聴いて欲しいという佐野の意向も十分理解はできる。2枚のCDに各アルバムからの曲が分散して収録されている(佐野によれば1枚目がメイン・ストリーム、2枚目がオルタナティブ)ので、2枚の違う視点からのセレクションとして聴くのもいいかもしれない。 シングル曲は『新しい雨』を除いて概ね収録されるなど、主要曲に対する目配りはもちろんあるが、『朽ちたスズラン』『誰かの神』『Us』などの地味な曲も収められており、コヨーテ・バンドの最初の音源である「星の下 路の上EP」からレーベルのテーマ・ソングとも言える『ヒナギク月に照らされて』が収められているのも印象深い。 ソニー版とは異なり、継続しているバンドとの活動の現在地を記録したスナップ・ショットであり、この先もここに加わるべき楽曲が発表されて行くことになる訳だが、まずはここまでの15年を総括するセレクションとして手許に置くには必要十分な内容だと言っていいのではないか。 なお、リミックスされたことがクレジットされている曲は以下の通り。 【本作初出のバージョン】 この他、特にクレジットはないものの、『La Vita é Bella』は当初発表されたシングル・バージョンとアルバム「ZOOEY」に収められたバージョンが異なっており、このアルバムに収められたのはシングル・バージョンの方。また『コヨーテ、海へ』はアルバム「COYOTE」に収められたオリジナル・バージョンから楽曲終了後の波の音のSEが削られており、これはコンピレーション「SOUND & VISION 1980-2010」収録のバージョンと同じである。 当初の発表では収録曲として34曲が告知されていたが、リリースされたパッケージでは『夜間飛行』『ビートニクス』の2曲が外され、曲順も一部変更されている。 2020-2023 Silverboy & Co. e-Mail address : silverboy@silverboy.com |