No Damage Deluxe Edition
アルバム「No Damage」のリリースから30年を経てリリースされたスペシャル・パッケージ。アルバム本編が高音質規格の「Blu-spec CD2」でプレスされている他、1983年3月18日に中野サンプラザで行われた「Rock & Roll Night Tour」最終日の様子を収めたCD、そして1983年にフィルム・コンサート形式で全国上映されたフィルム「No Damage」を収めたDVDに、100ページに及ぶブックレットが付属している。 アルバム本体についてはオリジナル・リリースのレビューを参照して欲しいが、コンピレーション・アルバムであるにも関わらず、佐野自身が積極的にコミットして多くの曲に手を入れ、曲間を縮めつなぎにも工夫を凝らしてパーティ・アルバム、ダンス・アルバムとしてひとつのコンセプトを表現するべく制作された本作は、単なる「ベスト・アルバム」以上の何かになり得ている。 頭上に大きな岩が転落する寸前でも「ダメージなんかない」とにこやかに笑っていられるギリギリのオプティミズム、崖っぷちのポジティビティ、そしてサブ・タイトルのチャイムとは迫りくる危機のためにひそやかに鳴らされる警鐘。ここには、アルバム「SOMEDAY」と「Rock & Roll Night Tour」で得たひとつの達成を敢えてご破算にし、「Be positive!」と言い残してニューヨークに旅立った佐野の先鋭化した意識が確実に表れている。 そうしたアルバム自体のコンセプチュアルな成り立ちからしても、またオリジナル・アルバムに未収録のフリップ・サイドを(1曲を除いて)丹念に拾い集めた選曲からも、オリジナル・アルバムにも劣ることのない重要な作品になったと言っていい。 「ROCK & ROLL NIGHT LIVE AT THE SUNPLAZA 1983」とタイトルされた2枚目のCDは先にも書いた通り1983年3月18日に中野サンプラザで行われた「Rock & Roll Night Tour」最終日の様子を収めたもの。『ガラスのジェネレーション』と『グッドバイからはじめよう』は1994年にリリースされたライブ・アンソロジー・アルバム「THE GOLDEN RING」に収録されているが、それ以外の曲はCD音源としては初めてリリースされるもの。 もっとも、この日の演奏はこのパッケージにも入っているフィルム「No Damage」のために撮影されており、何曲かは映像の形でリリースされている。例えば『悲しきRADIO』『Heart Beat』『Rock & Roll Night』などはビデオで何度も聴いた演奏だ。 一方で『Back To The Street』『SOMEDAY』など今回のリリースで初聴の音源もあり、これらの曲の大胆なアレンジにも驚く。初期の貴重なライブ音源であることは疑いなく、こうしてまとまった形でパッケージされたことは素直に評価すべき。若き佐野の初々しい歌声が聴けるのももちろんだが、収録されたMCも、あまりのストレートさに微笑ましいを通り越して感動的ですらある。それは僕たちがあの頃何を大切にしていたかを思い起こさせるようだ。 DVDについては別稿を参照して欲しいが、当初公開以降長い間見ることのできなかった16ミリフィルムによる記録映画(井出情児監督)。収録された演奏シーンのほとんどはビデオ「Truth '80-'84」などで見ることができるが、ベッドインなどのインターミッション部分も含め、ひとつの作品としてまとまった形でリリースされることの意義は小さくない。 オリジナル・リリースから30周年にあたる4月ではなく12月のリリースになったのは、このDVDをパッケージするためだろうか。「周年もの」のスペシャル・パッケージの中では価値の高いアイテムを気前よく詰め込んだ良心的な企画の部類だと思うが、逆に言えばそれだけに、ライブ・アルバム、DVDともに単体のリリースでもよかった(iTunes Storeでは「ROCK & ROLL NIGHT LIVE AT THE SUNPLAZA 1983」が単体でダウンロード販売されている)。 2013-2014 Silverboy & Co. e-Mail address : silverboy@silverboy.com |