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THE SPECIALS
The Specials

2 Tone
1979

■ A Messsage To You Rudy
■ Do The Dog
■ It's Up To You
■ Nite Klub
■ Doesn't Make It Alright
■ Concrete Jungle
■ Too Hot
■ Monkey Man
■ (Dawning Of A) New Era
■ Blank Expression
■ Stupid Marriage
■ Too Much Too Young
■ Little Bitch
■ You're Wondering Now
自動車産業が盛んなイングランド南部の街コヴェントリーには、旧英領の西インド諸島から多くの移民が流れこんだ。そこでは1960年代のオリジナル・スカ、ロックステディは身近なものであり、彼らが持ちこんだサウンド・システムでそうした音楽を聴きながら育ったジェリー・ダマーズにとって、白人と黒人の混成によるスカ・バンドを始めたのは自然なことだった。彼が設立した2トーン・レーベルからこのアルバムはリリースされた。

テリー・ホールは10代にしてこのバンドのボーカリストに迎えられるが、バンド自体はダマーズのリーダーシップの下にあった。白黒のチェックをアクセントにしたデザイン・コンセプトは、2トーンというレーベル名ともども、若きダマーズの率直な理想主義の表れ。収録曲の半分ほどはオリジナル・スカのカバーで、残りは主としてダマーズの手になるものだが、その間にまったく違和感がないのはオリジナルへのリスペクトゆえだろう。

速く激しいスカのビートはもともとパンクの攻撃性と相性がいい。細身のスーツにポークパイ・ハットというモッズ・スタイルでルードボーイを気取る彼らの意匠もまたこの時代の気分にフックしただろう。いかにも不良少年然としたスタイルからたたき出される、パンク成分を含んだスカやロックステディは現場性、当事者性があって単純にカッコよかった。テリー・ホールが世に出た作品だが、なによりスカ・リバイバルの代表作である。




MORE SPECIALS
The Specials

2 Tone
1980

■ Enjoy Yourself (It's Later Than You Think)
■ Man At C&A
■ Hey, Little Rich Girl
■ Do Nothing
■ Pearl's Café
■ Sock It To 'Em J.B.
■ Stereotypes / Stereotypes Pt.2
■ Holiday Fortnight
■ I Can't Stand It
■ International Jet Set
■ Enjoy Yourself (Reprise)
前作が一定の評価を得たことで自信を得たバンドが、スカ、ロックステディにとどまらず、ノーザン・ソウル、カリプソ、ロカビリーなど音楽的な幅をグッと広げてきたセカンド・アルバム。メンバーがそれぞれバンドへのコミットを深めやりたいことを主張したことが背景にあり、その結果バンド内の緊張は高まった。この作品を最後にテリー・ホール、ネヴィル・ステイプル、リンヴァル・ゴールディングはバンドを脱退することになる。

険悪な人間関係のなかで歴史に残るような作品が作られるのは実際には珍しくない。この作品でもダマーズの意向がストレートに通らなくなる一方で、他のメンバーのアイデアやチャレンジがこのアルバムを前作から一歩も二歩も前に推し進めた。彼らがよりどころとするビートと同時代的なパンク・スピリットが前作よりひとまわり大きな試験管の中で化学反応を起こし、より複雑な有機化合物が生成されたとでもいうべきアルバムになった。

このアルバムも半分ほどがカバーだが、オリジナルではダマーズ以外のメンバーの作品も収録され、テリー・ホールは『Man At C&A』を初めて提供した(ダマーズと共作)。典型的なスカの曲が減った分、前作のストレートな勢いは後退したが、アルバム全体としてのニュアンスは深まり、前作と一対をなす代表作としてザ・スペシャルズをロック史上記憶されるべき存在にしたと言っていい。なにより『Sock It To 'Em J.B.』がすばらしい。




FUN BOY THREE
Fun Boy Three

Chrysalis
1982

■ Sanctuary
■ Way On Down
■ The Lunatics (Have Taken Over The Asylum)
■ Life In General (Lewe In Algemeen)
■ Faith, Hope And Charity
■ Funrama Theme
■ Best Of Luck Mate
■ It Ain't What You Do It's The Way That You Do It
■ The Telephone Always Rings
■ I Don't Believe It
■ Alone
テリー・ホールがネヴィル・ステイプル、リンヴァル・ゴールディングとともにザ・スペシャルズを脱退し新しく結成したバンドというかユニットのファースト・アルバム。トライバルとかアフロとか称されるなんとなくアフリカ風のパーカッションを基調に、せいぜいキーボードを重ねた程度のインスタント・アフリカン・ミュージックとでもいうべきもの。安易というかなんというか、正直無邪気な思いつきの域を出ない雰囲気ものである。

アフリカのどこかで地場の部族がこうした音楽をやっているのかといえばおそらくそんなことはなく、あくまでヨーロッパでポピュラー・ミュージックを聴いて育ってきたアーティストが空想で作った「ぼくがかんがえたさいきょうのアフリカン・ミュージック」みたいなもの。黒人であるステイプル、ゴールディングが参加しているものの、彼らとてアフリカの土着の音楽を実地に体験しているわけでもないだろうしその意味で収奪的である。

たとえば「日本的」な記号として尺八とか三味線を導入したロックを聴かされると我々がてきめんに鼻白むように、これもその類の植民地趣味だと思った方がいい。もちろんスタートがそこであってもできあがったものが聴くに足る完成度を具えていればそれはそれでいいのだが、一応ポップ・ソングの領域に落としこもうという意志は窺えるものの聴くほどの水準には達していない。これが全英7位になったのだから勢いというのは恐ろしい。




WAITING
Fun Boy Three

Chrysalis
1983

■ Murder She Said
■ The More I See (The Less I Believe)
■ Going Home
■ We're Having All The Fun
■ The Farmyard Connection
■ The Tunnel Of Love
■ Our Lips Are Sealed
■ The Pressure Of Life (Takes The Weight Off The Body)
■ Things We Do
■ Well Fancy That
ファン・ボーイ・スリーとしては二枚めかつ最後のスタジオ・アルバム。トーキング・ヘッズのデヴィッド・バーンをプロデューサーに迎えロンドンでレコーディングされた。だれがバーンの名前を出したのかわからないが、このマッチングは成功だったというべきだろう。前作のいかにも出所不明な我流アフリカン、空想エスニックに対して、本作ではそうした作為性は影をひそめ、起伏のあるメロディをコアにしたポップな作品になった。

シングル・カットされた『Our Lips Are Sealed』はテリー・ホールがゴーゴーズのジェーン・ウィドリンと共作したもので、全英チャートで7位にランク・インした。本作からはその他にも『The Tunnel Of Love』が全英10位のスマッシュ・ヒットとなった。意匠的にはタンゴなど非ロック的なポピュラー音楽を下敷きにした部分も多く、それをいかにもニューウェーブ的な文脈にしっかり着地させているのはバーンの手腕ではないかと思う。

作曲者のクレジットはカバーを除きファン・ボーイ・スリー名義となっており、ホールとゴールディング、ステイプルの実際の分担はわからないが、『Our Lips Are Sealed』の例を見てもテリー・ホールがソングライティングの面で成長を見せたのは間違いなく、彼のいかにも英国的な湿り気を帯びたロマンティックなメロディが開花した最初のアルバムといっていいだろう。全英14位にチャート・インしたが前作には及ばなかったのが不遇。




VIRGINS AND PHILISTINES
The Colourfield

Chrysalis
1985

■ Thinking Of You
■ Faint Hearts
■ Catsles In The Air
■ Take
■ Cruel Circus
■ Hammond Song
■ Virgins And Philistines
■ Yours Sincerely
■ Armchair Theatre
■ Sorry
テリー・ホールがファン・ボーイ・スリーを解散し、2トーンのレーベルメイトであったスウィンギング・キャッツのトビー・ライオンズとカール・シェイルとともに新しく始めたトリオ編成のバンドのデビュー・アルバム。エコー&ザ・バニーメンなどを手がけたヒュー・ジョーンズ、ジェレミー・グリーンがプロデュースを担当している。アコースティックなアレンジを基調に、メロディアスな歌ものを中心としたポップなアルバムになった。

1980年代前半にシーンに存在を示したアズテック・カメラ、ペイル・ファウンテンズ、オレンジ・ジュース、ヘアカット100など、アコースティックな音づくりを得意とする一連のポスト・パンクの動きに連なる作品であると同時に、テリー・ホール自身としてはファン・ボーイ・スリーのセカンド・アルバムで見せた音楽的な広がりとソングライターとしての成長の継続のうえにあり、縦軸と横軸の交点に生まれたホールの代表作と言っていい。

スマッシュ・ヒットとなったシングル曲『Thinking Of You』をはじめ、『Take』『Catsles In The Air』など、ホールのソングライティングの特徴となる、(過剰なまでに)泣きの入ったメロディや劇的な曲展開がしっかり組みこまれており聴きごたえがある。特に『Catsles In The Air』の間奏のギター・ソロは、我が国のムード歌謡かと思う泣き具合でリピートしたくなる。長年聴いていた盤が曲目の違う米国盤と今回知って動揺している。




DECEPTION
The Colourfield

Chrysalis
1987

■ Badlands
■ Running Away
■ From Dawn To Distraction
■ Confession
■ Miss Texas 1967
■ She
■ Heart Of America
■ Digging It Deep
■ Monkey In Winter
■ Goodbye Sun Valley
カラーフィールドとしてのセカンド・アルバム。しかし製作途中でカール・シェイルがバンドを脱退、裏ジャケットにはホールとトビー・ライオンズだけの写真がプリントされているし、何ならそもそもジャケットはホールだけしか写っていない。それもおそろしく目つきの悪いモノクロ写真で、実際ホールはレコーディングが思いどおりに行かないと不満を抱いていたらしいので、おそらく本当にこんな顔でアルバムを制作していたのだろう。

肝心の内容の方はどうかといえば、いかにも80年代ニュー・ウェーブといった安っぽい打ちこみドラムと今では恥ずかしくて鳴らせないようなシンセの音色満載のエレクトリック・ポップであり、最先端のものは古くなるのも早いというセオリーを地で行くもの。リチャード・ゴテラーという知らない人がプロデュースしているが、アメリカ市場を狙ったのか何なのか、振り返れば失敗としかいいようのないサウンド・プロダクションとなった。

スライ&ザ・ファミリー・ストーンの『Running Away』、モンキーズの『She』のカバーを除いてクレジットはホールとライオンズ。曲が前作に続いてきちんと書けているからまだ救われたものの、全体の印象としては前作の潔いアコースティック・サウンドから一気に凡庸な産業ポップに堕してしまった。それでも『Miss Texas 1967』のような泣ける曲がしっかり入っているところがズルいわ。このアルバムを最後にカラーフィールドは解散。




ULTRA MODERN NURSERY RHYMES
Terry, Blair & Anouchka

Chrysalis
1990

■ Ultra Modern Nursery Rhyme
■ Missing
■ Fishbones And Scaredy Cats
■ Lucky In Luv'
■ Day Like Today
■ Sweet September Sacrifice
■ Beautiful People
■ Three Cool Catz
■ Happy Families
■ Just Go
例によってカラーフィールドをアルバム2枚で解散したテリー・ホールが次に作ったのは女性二人とのトリオ。プロデュースにXTCやヘアカット100を手がけたボブ・サージェントと、カラーフィールドのファースト・アルバムにも関わったジェレミー・グリーンを起用して制作されたこのユニット唯一のアルバムだ。有名でない女性アーティストという条件でメンバーを探し、最終的にブレア・ブースとアヌーシュカ・グロースの二人が選ばれた。

いかにも80年代後半ぽいチープなマシン・ドラムとシンセの音色がしんどかったカラーフィールドのセカンドから一転、ここでは60年代のメロディアスなポピュラー音楽から直接の影響を受けた聞きやすい歌モノ中心のアルバムになった。収録曲はカバーを除きホールとブースの共作で、ブースの音楽的な傾向がホールを触発したのではないかと思われる。シンプルな演奏に女声コーラスを配したオーソドックスなポップ・ソングが揃っている。

オブセッショナルにスタイルやメンバーを変え続けるというか、ひとつのユニットが長続きしないところにテリー・ホールの抱えたなんらかの内面の問題が現れているのではないかという気はするが、この作品では曲に過剰な暗さがなくホールのボーカルも落ち着いていて、彼のキャリアのなかでも最もストレートに聴ける作品に仕上がっている。クリサリスとの契約を消化するための急造ユニットとしては力作だが商業的には成功しなかった。




VEGAS
Vegas

BMG
1992

■ Possessed
■ Walk Into The Wind
■ She's Alright
■ Take Me For What I Am
■ The Trouble With Lovers
■ Mothing Alas Alack
■ The Thought Of You
■ Wise Guy
■ The Day It Rained Forever
■ She
どういうめぐり合わせなのか、ユーリズミックスのデイヴ・スチュワートと組んだデュオ。プロデューサーのクレジットがないが、オレ・ロモやエマヌエル・ギオットらユーリズミックス人脈に連なるミュージシャンが脇を固めていることからしても、実際にはスチュワートが音楽面を取りしきり、テリー・ホールは曲作りとボーカルで参加したというイメージか。スタンダードの『She』を除いて曲はスチュワートとホールの共作となっている。

このプロジェクトの存在は不覚にも長いあいだ知らず、ホールのベストにヴェガス名義の曲が収録されていることから確認して、あわててアルバムを買った。しかしながらデイヴ・スチュワートのサウンド・プロダクションはいかにも大仰で過剰にドラマティックであり、ホールのさまざまなニュアンスを含んだボーカルにはまったく合っていない。曲も凡庸で繰り返し聴く気はあまり湧いてこない。千円もかけないで中古で買って正しかった。

スペシャルズへのリスペクトからかレゲエをリファーした曲が多いが、アニー・レノックスのパンチの効いたソウルフルなボーカルならともかく、テリー・ホールの細い声はぶ厚いアレンジに埋没してしまい耳に残らない。そういえばデイヴ・スチュワートのソロ・アルバムを買って聴いたが全然ピンとこないで奥深くしまいこんだままなのを思い出した。なにをやりたかったのかはっきりしない一枚。早晩歴史に埋もれて忘れ去られるだろう。




HOME
Terry Hall

Anxious
1994

■ Forever J
■ You
■ Sense
■ I Drew A Lemon
■ Moon On Your Dress
■ No No No
■ What's Wrong With Me
■ Grief Diguised As Joy
■ Frist Attack Of Love
■ I Don't Got You
スペシャルズでのデビューから15年、幾多のユニットを作っては壊してきたテリー・ホールが初めて自身の名義で制作したソロ・アルバムである。プロデュースはライトニング・シーズでおなじみのイアン・ブローディ、バックにザ・スミスのクレイグ・ギャノン、エコバニのレス・パティンソン、ラーズのクリス・シャーロックを従え、アンディ・パートリッジやニック・ヘイワードと曲を共作するなどオールスター・キャストで制作された。

さらに翌年リリースされたシングル「RAINBOWS EP」ではデーモン・アルバーンと『Chasing A Rainbow』を共作、やはりだれかと組まないと仕事のできない人なのか。いずれにせよこういう人たちがかかわるとたぶんこういう音楽になるだろうなという期待をまったく裏切らない、ブリティッシュ・ポップ見本市みたいな作品になった。ひとつひとつの曲は丁寧に作られた90年代マナーの繊細なギター・ポップであり、完成度はおしなべて高い。

テリー・ホールのソングライティングの特徴はいうまでもなく過剰なまでの湿度であり、ソロとなった今作ではそれが留保なく全開になっている。特にシングル・カットもされたオープニング曲『Forever J』の湿度は、日本のムード歌謡でもそこまではやらんやろと思うレベルで高い。商業的にはまったく売れなかったが、おそらくこれが自然体に近い素のテリー・ホールなのだろう。ソロとしてこういう率直な作品を残せてよかったと思う。




LAUGH
Terry Hall

Southsea Bubble Company
1997

■ Love To See You
■ Sonny And His Sister
■ Ballad Of A Landlord
■ Take It Forever
■ Misty Water
■ A Room Full Of Nothing
■ Happy Go Lucky
■ For The Girl
■ Summer Follows Spring
■ I Saw The Light









THE HOUR OF TWO LIGHTS
Terry Hall & Mushtaq

Honest Jon's
2003

■ Grow
■ A Gathering Storm
■ Ten Eleven
■ Sticks And Stones
■ The Silent Wail
■ A Tale Of Woe
■ The Hours Of Two Lights
■ This And That
■ They Gotta Quit Kicking My Dog Around
■ Stand Together
■ Epilogue









ENCORE
The Specials

Island
2019

■ Black Skin Blue Eyed Boys
■ B.L.M.
■ Vote For Me
■ The Lunatics
■ Breaking Point
■ Blam Blam Fever
■ 10 Commandments
■ Embarrassed By You
■ The Life And Times (Of A Man Called Depression)
■ We Sell Hope









PROTEST SONGS 1924-2012
The Specials

Island
2021

■ Freedom Highway
■ Everybody Knows
■ I Don't Mind Failing In This World
■ Black, Brown And White
■ Ain't Gonna Let Nobody Turn Us Around
■ Fuck All The Perfect People
■ My Next Door Neighbor
■ Trouble Every Day
■ Listening Wind
■ I Live In A City
■ Soldiers Who Want To Be Heroes
■ Get Up, Stand Up








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