
WRITE ABOUT LOVE
Belle and Sebastian
Rough Trade
2010
■ I Didn't See It Coming
■ Come On Sister
■ Calculating Bimbo
■ I Want The World To Stop
■ Little Lou, Ugly Jack, Prophet John
■ Write About Love
■ I'm Not Living In The Real World
■ The Ghost Of Rockschool
■ Read The Blassed Pages
■ I Can See Your Future
■ Sunday's Pretty Icons
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前作から4年以上のインターバルを経てリリースされた8枚めのスタジオ・アルバム。プロデューサーには前作と同じトニ・ホファーを迎えた。ノラ・ジョーンズがM5にゲスト・ボーカルで参加している。前二作のオープンな構造は維持しつつもここでは表現自体は抑制的であり、潔癖さで世界と対峙していた初期のような、最低限必要なものだけをスクラッチから積み上げたミニマルなアプローチへの回帰が一部の楽曲から感じ取れて興味深い。
それでも、秘密の合言葉を知っている者どうしでしか話をしないような閉鎖性、密室性はもはやない。メジャーでのアルバムも3枚めとなって曲づくり、アルバムづくりに自信を深めたからこそ、絵の具の色づかいを一度グッと抑えてみたとでもいうかのようだ。微妙な濃淡、混色によるバリエーションなど、限られた色数でも美しい絵は描けるのだということをスチュアート・マードックがあらためて認識し、それを示そうとしたアルバムだ。
そこにビートの利いたポップ・チューンがうまく組み合わされているせいで、アルバム全体の印象は決して暗くない。全体としてメリハリの利いたバランスのいい作品に仕上がったのはトニ・ホファーの力か。だがそれを下支えしているのがひとつひとつの曲の完成度なのは間違いのないところで、きちんと耳に残るフレーズをブッ込んでくるマードックのソングライティングをあらためて認識。完成度の高い作品でひとつの到達と言っていい。
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