PSYCHOCANDY
The Jesus And Mary Chain
blanco y negro
9 25383-2 (1985)
■ Just Like Honey
■ The Living End
■ Taste The Floor
■ The Hardest Walk
■ Cut Dead
■ In A Hole
■ Taste Of Cindy
■ Never Understand
■ Inside Me
■ Sowing Seeds
■ My Little Underground
■ You Trip Me Up
■ Something's Wrong
■ It's So Hard
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機材が壊れたかと思うようなピーとかプシューとかいうフィードバック・ノイズに埋もれながら、彼岸のかなたから聞こえてくるような甘いメロディ。深くくぐもったリヴァーヴの向こうで鳴る遠雷のようなスネア。クリエーションからリリースされたロック史に残るデビュー・シングル『Upside Down』はここには収録されていないが、スキャンダラスに登場した最初期の「何かヤバいヤツ出てきた」感の一端は十分に感じ取ることができる。
ライブでは20分しか演奏しないとか聴衆には背を向けているとかキャパ以上のチケットを捌いて暴動が起こったとか、ことさらに怖い系の売り出し方をされたのはアラン・マッギーの戦略だろうが、では結局のところこのアルバムの音楽的な価値がどこにあるのかといえば、ベルベット・アンダーグラウンドのノイズと、フィル・スペクターのウォール・オブ・サウンドの安易な剽窃以外の、画期的なイノベーションは見当たらないのである。
ここにあるのは音楽的な何かよりは、むしろ「オマエらなんか嫌いだ」と「だからオレを見てくれ」というアンビバレントな自意識がダラダラと流れ出すさまであり、そのどうしようもないダメさ加減こそが世界をビートしたのではあるまいか。それは、初期衝動と呼ぶにはあまりにプアでネガティヴな、しかしそれ故一切の配慮とか折り合いとかを拒絶する頑ななモティーフであり、それがロック史に残るデビュー・アルバムになったのだ。
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