HIGH LAND, HARD RAIN
Aztec Camera
ROUGH TRADE
EDSA 5011 (1983)
■ Oblivious
■ The Boy Wonders
■ Walk Out To Winter
■ The Bugle Sounds Again
■ We Could Send Letters
■ Pillar To Post
■ Release
■ Lost Outside The Tunnel
■ Back On Board
■ Down The Dip
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グラスゴーのポストカード・レーベルからリリースした2枚のシングルが高い評価を受けたことから、ラフ・トレードと契約して制作されたデビュー・アルバム。ポスト・パンクの諸派の中でも、本邦でネオ・アコースティックと称された、アコースティック・ギターをフィーチャーしたメロディアスなフォーク・ロックのアンセム的作品と評される歴史的名盤。全曲が、ボーカルとギターを担当する中心人物ロディ・フレームの作品である。
アルバム・リリース時のフレームは弱冠19歳。クラッシュなどのパンクと、ウェス・モンゴメリらのジャズ・ギターの影響下にあり、豊かな音楽的素養と少年から青年に成長しようとする時期特有の潔癖さが、奇跡のようなバランスで共存している。ソング・ライティングにおいて既に完成の域に達したかのような印象的なメロディを惜しみなく繰り出す一方で、フレームの声は伸びやかでありながら頑なさを秘めてボーカルは極めて記名的。
しかし、ここでしっかり聴いておきたいのはどちらかといえばフレームの初期衝動の質の方だ。『Oblivious』のひっかくような性急なストローク、「真冬の冷たい空気が僕の目を覚まさせる」と歌う『Walk Out To Winter』など、この時のフレームは、澄んだ空気の中でどこまでも見通せるような、くっきりとした覚醒感を手にしていたはず。北国のギター少年が自分の中の特別な何かを解き放とうとするトライアルの記録としてこそ傑作だ。
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