logo The Jam / The Style Council


IN THE CITY The Jam (1977)
IN THE CITY

★★★★
僕たちはなぜロックンロールを求めるのか。考えてみればそれはドタバタした垢抜けないビートだ。洗練とか美しさとかいったものとはまったく相容れない、やかましくて耳障りなだけの単調な音楽だ。それにもかかわらず僕たちはなぜロックンロールを求めるのか。ロックンロールの何が僕たちを打つのか。その答えを説明することは難しい。やろうと思えばできないことはないだろうが、しかし、ロックンロールの本質を知るためのそれよりはるかに手っ取り早い方法がある。ザ・ジャムのファーストを聴くことだ。

ここにあるのはあまりにも単純で明快なロックンロールそのものだ。スリーピースのバンド構成で最初から最後までとにかく突っ走るだけの前のめりなビート。お世辞にも分厚いとは言えないアンサンブルで次から次へとたたき出される3分間の荒っぽいステートメント。だがそこには僕たちを捉えて離さない何かが確実にある。このアルバムを一度聴けばそのことが分かる。僕たちはいつでもその「何か」の話をしているのだし、僕たちはいつでもその「何か」を手に入れたくてカネと時間を浪費し続けているのだ。

それはきっと高尚なものではない。それはきっと立派なものではない。もっといい加減で、もっとダメで、もっと猥雑で、もっと不純で、もっと汚らしいものだ。だけどそれは何よりも僕たちにとって切実なものだ。ロックンロールが僕たちを打つのだとすれば、それはその完全さによってではなく、むしろその不完全さによってだと僕は思う。音楽的にはまったく荒削りだが、ポール・ウェラーというアーティストの初期衝動にこめられた熱量の確かさに感銘を受けずにはいられないファースト。これがザ・ジャム。


THIS IS THE MODERN WORLD The Jam (1977)
THIS IS THE MODERN WORLD

★★★
デビュー・アルバムからわずか半年後にリリースされたセカンド・アルバム。鮮烈なデビューを飾ったバンドのセカンドが難しいのは当時も今も同じことだろう。初期衝動をたたきつけ、そのラフさ、ラウドさを焼きつけたファーストの後、彼らがどれだけその初速を失わずに走り続けられるか、そして一方でそのファーストに何ものかを「上乗せ」できるか、イギリス中(「世界中」ではない、あくまで「イギリス中」だ)のプレスが見守る中、彼らはこの相反する二つのテーマを同時にクリアしなければならなかった。

結果として彼らがリリースしたセカンドはそのどちらの面から見ても中途半端なものだったと言わざるを得ない。端的に言ってこのアルバムはファーストの焼き直しに過ぎなかった。そこに付け加えるべきもの、バンドの成長を感じさせるモメントは簡単には見出し難いし、一方で生き急ぐような焦燥感もファーストに比べれば後退している。ポール・ウェラーの中でセカンド・アルバムの方向性が明確な像を結ぶ前に結論を急ぎ過ぎた印象が強いが、その「未完成さ」はファーストでの「不完全さ」とは異質なものだ。

とはいえ、今日の時点から改めてこのアルバムを聴くと、パンクの嵐が吹き荒れる中にあって、自らもパンク・バンドとしてカテゴライズされながら、R&Bをベースにザ・フーやスモール・フェイセズなどの影響を強く窺わせるビート・ナンバーにこだわったポール・ウェラーのソングライティングの特徴がよく分かる。また、「LIFE FROM A WINDOW」や「I NEED YOU」といった曲ではメロディメイカーとしての資質を垣間見ることもできる。ウィルソン・ピケットの「IN THE MIDNIGHT HOUR」のカバーがカッコよすぎ。


ALL MOD CONS The Jam (1978)
ALL MOD CONS

★★★★☆
ポール・ウェラーのソングライターとしての才能が最初に開花したサード・アルバム。ここではファーストで見せたパンキーな初速をいささかも落とさないまま、そこにセカンドとは比べものにならないくらい豊かな曲想の広がりを見せた。初めてのアコースティック・バラードである「ENGLISH ROSE」はもとより、「MR. CLEAN」や「IT'S TOO BAD」、「FLY」といったミドル・テンポの曲も効果的に使いながら、アルバム全体の起伏を明確に形作って行く。彼らが新しい扉を開いたことがはっきりと分かる。

一方で彼ららしいビート・ナンバーもそのメロディの豊かさ、仕上がりのポップさはセカンドまでとは隔絶したものがある。ここにおいてポール・ウェラーは、自らのソングライティング、声、バンド・アンサンブルといったものをある目的に向けて戦略的に組織するという方法論を初めて自覚的に行使したのだと言っていいと思う。このアルバムで彼らは音楽的な表現の幅を飛躍的に広げたが、一方で彼らが彼らであるべき理由、R&Bの伝統に根差したビート・ポップという軸はまったくブレていないのだ。

その意味で本作は、デビュー当初のストレートなロックンロールからポール・ウェラーがソングライティングに深化を見せ、やがてビート・バンドの枠を逸脱して行かざるを得なかったザ・ジャムの歴史の中で、彼らがドラム、ベース、ギター、そして肉声というギリギリの画材で描いて見せた、最も幸福な時期の最も幸福な作品なのだということができるかもしれない。シングル・ヒットとなった「DAVID WATTS」はキンクスのカバーだが、このアルバムでの彼らの達成は間違いなく彼ら自身のもの。傑作。


SETTING SONS The Jam (1979)
SETTING SONS

★★★☆
前作に続き傑作との評価が高い第4作。ポール・ウェラーのソングライティングは更に深化し、都市に生きるティーンエイジャーの生活を描いたコンセプト・アルバム的な色彩も帯びている。ブルース・フォクストンの「Smithers-Jones」ではオーケストラを導入し、その他にもリコーダーやピアノなどが効果的に使われている。シングルとなった「The Eton Rifles」は彼らのキャリアを通じても代表曲となる傑作の一つと言っていいだろう。これがこのアルバムに関する大方の一致した見方、評価である。

だが、実際のところ、僕はこのアルバムをそこまで高く買うことはできない。このアルバムはコンセプト・アルバムとして構想されたが曲が揃わず、タイトなスケジュールの中でなし崩し的にレコーディングされ当初のコンセプトは放棄されたと言われている。組曲風の「Little Boy Soldiers」にその名残をうかがうことができるが、おそらくは「トミー」や「四重人格」、キンクスのいくつかの組曲に触発されたと思われるこの試みも、十分に構想されたものとは言い難く、いかにも消化不良の印象を残す。

「The Eton Rifles」は間違いなく名曲だが、「Smithers-Jones」のオーケストラはとってつけたような印象が拭えず、ラストの「Heat Wave」は秀逸なカヴァーだがなぜこのアルバムのこの場所に置かれているのかまったく理解に苦しむ。全体としてリリースを急ぐあまりアルバムとしての熟成が足りず、散漫な仕上がりに終わっている。シリアスでシニカルなトーンがアルバムを覆っており、良くも悪くもポール・ウェラーの生真面目さがアルバムを決定づけている。これで曲が悪ければ駄作だっただろう。


SOUND AFFECTS The Jam (1980)
SOUND AFFECTS

★★★★
答えを急ぎすぎた感のあった前作に比べ、ひとつひとつの曲も、アルバム全体も完成度を高めた第5作。切れるような初期衝動の激しさを遠くまでドライブして行くためのエンジンとガソリンを彼らは、いや、ポール・ウェラーは「ALL MOD CONS」で確かに手に入れたが、前作ではエンジンの性能自体は変わらないものの整備状態が悪くガソリンは不足気味だった。今作ではエンジンは再びピカピカにチューンされ、ガソリンも十分タンクに入っているように思われる。あとはアクセルを踏み込むだけだ。

特にアナログでのA面に相当する部分の完成度は特筆するべきだ。「Set The House Ablaze」の劇的な盛り上がりを受けた後の「Start!」、そして間違いなくザ・ジャムの代表曲のひとつに数えられるべき「That's Entertainment」への流れ。このシークエンスは疑いなくこのアルバムの最大の山場だ。それ以外の曲も前作のように興を削ぐことはない。もちろんB面のインスト「Music For The Last Couple」はいただけないし、そこからラストに至る部分の失速感は否めないにせよ、致命的なものではない。

ザ・ジャムというバンドはパンク・ムーヴメントの中にあって、その音楽性の確かさとビート・ポップスの歴史への正統な眼差しのために、伝統への反抗や否定を旨とする一部のパンクスからは異端視されてもきた。しかし、このアルバムを聴いてみれば、パンクという音楽の根幹をなしていた権威への抵抗、日常との連続性というテーマを最も忠実に歌い続けているのはむしろ彼らの方であるということが分かるはずだ。それはスリー・コードのロックンロールの中だけでなく、あらゆるビートの中にあるのだ。


THE GIFT The Jam (1982)
THE GIFT

★★★★☆
結果的に彼らのラスト・アルバムとなった第6作。その理由はこのアルバムを聴いてみればすぐに分かる。これはもはやザ・ジャムのアルバムではないからだ。今聴けばこれは紛れもなくスタイル・カウンシルのプロトタイプだ。ポール・ウェラーがブルース・フォクストンとリック・バックラーの力を少しばかり借りて制作したソロ・プロジェクトだ。ここではもうスリー・ピースのビート・バンドという形態は何の意味も持っていない。展開される曲の多くはブラスを大々的に導入したファンクなのだ。

もちろんポール・ウェラーらしいギターのカッティングは健在だ。「Happy Together」のようなビート・ポップスもある。「Town Called Malice」はモータウン直系のビートでポール・ウェラーのモッドとしての出自を思い起こさせる。しかし、彼は既に次に行こうとしている。コンテンポラリーなファンク、R&Bへの傾倒は明らかで、このアルバムはそうした音楽を何とかザ・ジャムというメディアを通じて表現しようとしたポール・ウェラーの悪戦苦闘の記録である。そして彼はその限界を見てしまった。

特に「Precious」から「Running On The Spot」に至る流れは彼がやりたかったことをどうにかこうにかこのバンドのビート感に乗せようとしたギリギリの試みだ。それはビート・パンクの可能性を示すとともにその限界をも明らかにした。これ以上をやるにはもうザ・ジャムのフォーマットでは無理だ。そのことをだれよりも実感したのはポール・ウェラーだったはずだろう。ザ・ジャムのアルバムとしては前作までと大きな断層があるが、ザ・ジャムの終わりであるよりは新しい何かの始まりを告げる作品。


CAFE BLEU The Style Council (1984)
CAFE BLEU

★★★★☆
ザ・ジャムを解散したポール・ウェラーがキーボード奏者のミック・タルボットと結成した新しいバンド、スタイル・カウンシルのファースト・アルバムである。ポール・ウェラーが直線的なビート・パンクから次第にファンク、R&Bに傾倒し、ザ・ジャムというバンドの資質から乖離し始めたのはザ・ジャムのラスト・アルバムとなった「ザ・ギフト」でも既に明らかだった。ここではそれを踏まえ、ポール・ウェラーがどんな形で次のステージに進もうとしているかを明確に示していると言えるだろう。

ここに収められている曲は13曲だが、そのうちポール・ウェラーのボーカルをフィーチャーしているのは半分にも満たない6曲だけ。ミック・タルボットの軽快なピアノ・インストに始まり、MG'sばりのR&Bインストに終わる、ジャズ、ファンクにまでレンジを広げた、「ロックでない」音楽のショウケース。モッズ、パンクとしての出自に背を向けるように、このアルバムからはエレキ・ギターの音はほとんど聞こえてこない。そしてそれを、ポール・ウェラーは「スタイル評議会」と名づけたのだ。

確かにここにあるのはお洒落でフレキシブルでスタイリッシュな、洗練されたポップ・ソングである。あのクソみたいな「カフェ系」だか何だかの元祖みたいに言われることもある。だが、このアルバムは、最もロックから遠いところにありながら、実際にはロックそのものだと僕は思う。すべての予定調和、すべての安定、すべての拡大再生産をあざ笑い、それらを飛び越え、その向こう側に着地しようとするポール・ウェラーの強い意志が、この非ロック的なロックを生み出した。歴史に残る名作だ。


OUR FAVOURITE SHOP The Style Council (1985)
OUR FAVOURITE SHOP

★★★★★
前作に続きR&Bをベースに幅広い音楽性を示し、スタイル評議会としての地位を不動のものにしたと言える第二作。とはいえポール・ウェラーのボーカルをフィーチャーした曲が全体の半分にも満たず、ジャズの影響もかなり色濃かった前作に比べれば、本作ではR&Bを基調にしながら全体に流麗でメロディアスなポップ・ソング然としたボーカル曲が主体で、洗練されたブルー・アイド・ソウルのアルバムとしてかなり取っつきやすい仕上がりになっている。このアルバムでスタカンを知った人も多いかもしれない。

何を隠そう僕もその一人で、当時大学生だった僕はザ・ジャムも知らずいきなりこのアルバムからポール・ウェラーを聴き始めたのだ。だから僕にとってこのアルバムは長い間、洋楽を聴くときの一つのスタンダードであり続けた。そしてこのアルバムと互角に渡り合える作品はそれほど多くはなかった。これは今日でも色あせることのない普遍的な音楽の力とでもいったものを封じ込めたアルバムであり、洋楽の聴き始めの頃にこのアルバムを聴けた僕は幸せだったのだろうと思う。アルバムとしての完成度は高い。

だが、固定化したバンドではなく開かれたユニットとして曲に合わせたゲストを招き多様なスタイルの音楽を聴かせる、ポール・ウェラーはそのフィクサーとして一連のプロジェクトをマネージするというスタイル評議会の当初のコンセプトは明らかに後退し、ポール・ウェラーのボーカルの存在感が前面に出ていることで、このスタイル・カウンシルもまた彼のバンドとしての意味合いが強くなり始めているのが分かる。その良し悪しの判断は難しいが、ともかくこの時期のポール・ウェラーが最も素直に出た名盤。


THE COST OF LOVING The Style Council (1987)
THE COST OF LOVING

★★★
ポール・ウェラーの音楽的なレンジの広さを示し、何よりもロック音楽のメイン・ストリームに周縁からの眼差しを持ちこんだという意味で画期的だったファースト、セカンドから、一気にコンテンポラリーなR&Bアルバムになってしまった第3作。既にして前作でもポール・ウェラーのボーカルを中心にフィーチャーし、「Walls Come Tumbling Down」のようなビート・ナンバーも盛りこんで、ブルー・アイド・ソウル路線への傾倒を示してはいたが、このアルバムはもはや明確に「ソウル・アルバム」と言っていい。

確かに白人によるコンテンポラリーなR&Bアルバムとして見れば、曲はどれもコンパクトにまとまっているし、D.C.リーのボーカルを巧みにフィーチャーした構成も手堅い。ウェラー、タルボット、リーにドラムのスティーブ・ホワイトを加えた4人組のバンドとしての一体感は彼らの新しい局面だということができるだろう。だが、それは同時に、敢えてザ・ジャムというバンドを解散し、フレキシブルなユニット形態でロック的な予定調和に背を向けたはずのスタイル・カウンシルというコンセプトの変質でもあった。

そしてこのアルバムでもうひとつ致命的なのは、どの曲も陰鬱だということ。君は僕の天使だと歌う「Angel」ですら、歌いきるという強いモメントに欠け、マイナー調の重たいアレンジだけが耳に残って行くようだ。このアルバムを発売当時それなりに聴きこんだはずなのに、前作に比べればまったく印象が悪いのは、おそらくそうした重たさ、風通しの悪さのせいなのだろうと思う。ポール・ウェラーらしい「冒険」が影をひそめ、あらかじめ揃った手札で勝負しているような箱庭感が拭えず、高くは買えない作品。


CONFESSIONS OF A POP GROUP The Style Council (1988)
CONFESSION OF A POP GROUP

★★☆
「あるポップ・グループの告白」。笑えないタイトルで結果としてラスト・アルバムになった第4作。アナログではA面が「ピアノ・ペインティングス」、B面が「あるポップ・グループの告白」と題された二部構成になっており、A面ではタイトル通りミック・タルボットのピアノをメインにフィーチャーしたゴージャスなジャズ、ラウンジ調の曲(一部は組曲)が並ぶ。B面はそれに比べビートのある「ポップ・ソング」が中心になってはいるが、終盤に行くに連れ流れは再びスロー・ダウンして行く。

このアルバムで彼らは、いや、ポール・ウェラーは完全に、自ら作り上げたスタイル・カウンシルというコンセプトの自家中毒に陥っている。ここでは残念ながらポール・ウェラーのソング・ライティングにもごく一部の曲を除いて才気が感じられない。大々的にストリングスやオーケストラを導入したA面はもちろん、ソウル、ファンクをベースにしたポップ・ソングを聴かせるB面ですら、耳に残るメロディラインはわずかで、風景画のように静まり返った、時間のない世界を見ている気がしてくる。

わずかに「How She Threw It All Away」だけが突出した躍動感を獲得しており、この曲だけで何とかアルバム全体が救われているが、退屈で長ったらしいムード音楽を聴かされているうんざり感は否めない。個々に聴きこめばそれぞれの曲にそれなりの特徴はあるものの、そこに至るまでに聴き手はすっかり嫌気がさしてしまうだろう。ポール・ウェラーがシーンともリスナーとも接点を失うきっかけになったアルバムであり、この静謐さ、うわべの美しさが逆にやるせない。端的に言って冗長だ。


その他のリリース

ザ・ジャムはシングル・リリースの多いバンドで、オリジナル・アルバムに収録されていない曲も多い。これらの曲を聴くためには何種類か出ているベストを1枚押さえておけばいいだろう。手に入るかどうか分からないが、1991年に出ている「Greatest Hits」ならオリジナル・アルバムに収録されていないシングル曲はすべて網羅されている。

シングルのB面曲はほとんどオリジナル・アルバムに収録されていない。要領よく集めたいなら1992年リリースの「Extras」がいい。主なB面曲の他、このアルバムでしか聴けないデモ・バージョンなども収録されており買っておいて損はない。

それでも聴けないレアなB面曲をどうしても聴きたいという人や、これから初めてザ・ジャムを聴こうという人は、この際、ボックス・セット「Direction Reaction Creation」を買えばいいだろう。輸入盤で7,000円程度で今も手に入ると思う。ザ・ジャムが公式に発表した音源はほぼもれなく網羅、既にオリジナル・アルバムを持っている人には大半の音源がダブることになるが、値段から考えても「Greatest Hits」と「Extras」を両方買うなら、初めからボックスを買った方がいいかも。



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