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デビュー曲「裸足の季節」、出世作「青い珊瑚礁」をフィーチャーし、サマー・リゾートをモチーフに製作されたデビュー・アルバムである。収録曲はすべて三浦徳子作詞、小田裕一郎作曲で、アレンジは信田かずお、大村雅朗、松井忠重が担当している。内容的には良くも悪くもアイドル・ポップスであり、シングル曲とそれ以外の間には大きな落差がある。もちろん小田裕一郎のプロとしての仕事と信田、大村の手堅いアレンジで一応の水準はクリアしているものの、取り立てて評価すべきものは見当たらないと言えよう。
その中で光るのはシングルとなった2曲である。特に大ヒットしこの年の新人賞を総なめにする原動力になった「青い珊瑚礁」は今聴いても素晴らしい。予感を秘めたピアノのイントロからストリングスが駆け上がりいきなりサビからの歌い出しとなる導入部、ハネたリズムを背景に抑制を利かせて引っ張るAメロ、サビへと加速するBメロ、少ない音符で歌いきるサビのメロディの洗練と爽快感、「あの島へ」の手前での効果的なブレイク、どれもこれもポップスとして計算され尽くした完璧な構成でありアレンジと言う他ない。
しかし、この曲の本当のツボはBメロからサビに入る直前の「あなたが好き」だと思う。ややハスキーな声でつぶやくように歌われるこのワン・フレーズが生身の彼女の存在を際だたせているのだ。一本調子になりがちなこの時期の彼女のボーカルの中でこの箇所だけはまるで聞いてはいけないものを聞いてしまったような不用意さがあり、それがなまめかしさとなってこの曲を決定づけているのだと思う。張りのある若い声が初々しいが、アルバムとしての出来はアイドルのファースト・アルバム以上でも以下でもない。
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