Canary
松田聖子
CBS/SONY
1983
■ BITTER SWEET LOLLIPOPS
■ Canary
■ Private School
■ Misty
■ Diamond Eyes
■ LET'S BOYHUNT
■ Wing
■ Party's Queen
■ Photograph of Yesterdays
■ Silvery Moonlight
|
1983年冬編となる第8作。新たに林哲司、井上鑑を作曲家の布陣に加えた他、松田聖子自身の作曲によるタイトル曲を収録。それ以外の作家は大村雅朗、松任谷由実、来生たかお。アレンジは大村が5曲、井上が3曲を手がけ、松任谷由実の手になるシングル2曲は松任谷正隆が担当している。シングル曲は両A面でリリースされた「瞳はダイアモンド」と「蒼いフォトグラフ」の2曲で、同年8月にリリースされた「ガラスの林檎」とそのカップリング(CMで話題になり後に両A面に変更)「SWEET MEMORIES」は収録されていない。
作曲家もアレンジャーもそれぞれの仕事を手堅くこなしている。松田のボーカルもニュアンスの難しい曲まで的確に歌いこなしている。それなのにこのアルバムにどこか漂うとりつく島のなさ、冷たい表情はいったい何なのだろう。隙のない、敷居の高い印象はどこから来るのだろう。ひとつには申し合わせたようにそれぞれのアレンジャーがブラス(一部シンセ)を導入した派手めの編曲のせいもあるだろう。一方で「Misty」や「Wing」、「Silvery Moonlight」のような大仰な曲がアルバムの流れを阻害したこともあるだろう。
しかし、いちばんの問題は、逆説的ではあるが各曲の作り込みの深度、完成度の高さではないだろうか。象徴的なのは、松田自身の作曲による「Canary」の、いかにも財津和夫的で無防備なメロディが最もストレートに耳に入ってくることだ。逆に言えばそれ以外の曲のプロっぽさが松田のボーカルの最良の部分を殺してしまっているように思えてならないのだ。考えてみれば林、来生、井上らはアーティストというよりプロの作曲家。「蒼いフォトグラフ」も巷間の人気は高いが僕には正直入れ込めなかった。困難なアルバムだ。
|