logo Elvis Costello (Part 1)


MY AIM IS TRUE (1977)
My Aim Is True

★★★☆
ニック・ロウをプロデューサーに迎えて製作されたデビュー・アルバム。バックはヒューイ・ルイスらが在籍したアメリカのバンド、ザ・クローヴァーだが、当時彼らはイギリスでパブ・サーキットをこなしていたということで、アルバム全体のトーンはオーソドックスなパブ・ロックよりの仕上がりになっている。パブ・ロックといえばパブでくだを巻いているオヤジに聴かせるための達者で世慣れたロックンロールであり、このアルバムのそうした意匠は、コステロ=パブ・ロックというパブリック・イメージの源ともなった。

しかし、このアルバムをよく聴いてみれば、コステロは決してパブで飲んだくれたオヤジを相手に懐メロのロックを何度も繰り返すだけのアーティストではないということがすぐに分かるはずだ。まず明らかなことはコステロのソング・ライティングの確かさだ。代表曲として長く歌い続けられることになるバラード「アリスン」からロックンロール・チューンの「ミステリー・ダンス」まで、表情豊かな物語を次々に紡ぎ出し、フックの利いたフレージングとメロディで一曲一曲を明確に印象づける力量は並みの新人ではない。

だが、それ以上にコステロの存在を単純なパブ・ロックから「はみ出した」ものにしているのは、その所期衝動や情動の質であり、熱量の豊かさだ。考えてみて欲しいのだが、77年といえばピストルズやクラッシュやジャムがデビュー・アルバムをリリースした年だ。コステロはロック音楽のルーツに忠実であり、ボーカルも含めて音楽的な才能があったために、パンクとは一線を画した形になっているが、ギターを手に歌い出したそのやむにやまれぬ気持ちはパンクスと同種のものではなかったか。パブ・ロックを超えた一枚。


THIS YEAR'S MODEL (1978)
This Year's Model

★★★★
初めて買ったコステロのアルバムは「KING OF AMERICA」だったが、その後、旧譜を遡ろうとレコード屋に出かけて手にしたのがこのアルバムだった。前作に続きニック・ロウをプロデューサーに迎えたが、異なるのは自らのバックバンド、ジ・アトラクションズを従えての製作だということだ。アルバムのクレジットもエルビス・コステロ&ジ・アトラクションズとなっている。変態キーボードのスティーブ・ナイーブ、ブルース・トーマスの歌うベース、そして何より切れまくるピート・トーマスのドラム、アトラクションズだ。

当時いたいけな大学生だった僕は一発でこのビートとスピードと闇雲なエネルギーにあふれたアルバムにやられてしまった。ライブでの定番となった「パンプ・イット・アップ」に特徴的に見られる、ロックンロールとリズム&ブルースの定型的なフォーマットを基礎にしながらコンテンポラリーなスピード感を盛りこむやり方はこのアルバムの最大の達成だろう。コステロの書く曲の本質的なクオリティは変わっていないが、アトラクションズの歯切れのいい演奏でアルバム全体の印象はよりシャープでソリッドなものとなった。

前作はいかにももったりしたパブ・ロック調のサウンド・プロダクションであったが、このアルバムでアトラクションズという後ろ盾を得て、コステロはようやく自分の中の感覚と同じスピードで走ってくれるバンドとともに演奏をすることができるようになったと言えるだろう。そのおかげでマージー・ビート、ブリティッシュ・ポップの最良の部分を受け継いだような軽妙なポップ・ソングである「リップ・サーヴィス」のような曲も違和感なく収まる場所を見つけることができた。聞き飽きることのない恐るべきセカンド。


ARMED FORCES (1979)
Armed Forces

★★★
引き続きニック・ロウのプロデュースの下、アトラクションズとともに製作されたサード・アルバム。荒々しい象の群れが突進してくるジャケットと「武装勢力」というタイトル、このアルバムでは全体としてイギリス社会に対するシニカルなプロテストの姿勢が色濃いと言われる。とはいえ僕は英語がよく分からないので歌詞を子細に検討した訳でもなく(だいたいコステロの歌詞は分かりにくい)、ボーカルも音楽の一部として聴いているだけで、その限りでは本作も前作の流れを受け継いだ完成度の高いロック・アルバムだ。

変化した点を挙げるなら、まず、前作でのベーシックなロックンロール、リズム&ブルースのフォーマットに則った曲作りから大きな進歩を見せた曲想の豊かさだろう。軽妙なポップ・ソングでスマッシュ・ヒットとなった「オリヴァーズ・アーミー」からブギー調の「グーン・スクォッド」、ワルツの「サンデイズ・ベスト」まで、曲作りはより丹念になり表現の幅はさらに広がっている。コステロのアングリー・ヤング・マン的な側面はおそらく歌詞の面での深化に向かい、音楽的には随分ポップに整理された印象を与える。

このコステロの成長を支えているのがアトラクションズの演奏、中でもスティーブ・ナイーブのキーボードだろう。フォー・ピース、しかもギターはボーカルのコステロが弾いているというバンド構成で、正統的なピアノ・プレイからコミカルなオルガンまでをこなしてこれだけの広がりをバックアップするスティーブ・ナイーブは、長くコステロを支えるパートナーとなって行く。全体としては「オリヴァーズ〜」を中心として緩急を効かせた良質な作品だが、その分、前作の勢いは削がれ、ややおとなしいアルバムとなった。


GET HAPPY! (1980)
Get Happy!

★★★★☆
ニック・ロウのプロデュースによる4作目のアルバムである。曲作りに深化を見せた前作から一転、今作ではモータウンやスタックスのソウル、リズム&ブルースを下敷きにしたコンパクトなポップ・ソングを20曲も詰めこんだパーティ・アルバムとなった。サム&デイヴのカバーである「アイ・キャント・スタンド・アップ・フォー・フォーリング・ダウン」をはじめ、フックの利いた3分弱のビート・ポップがこれでもかと繰り出されるこのアルバムは、コステロの所期の作品の中でも傑出したできを誇る快作と言っていい。

コステロはもともとロックンロール、リズム&ブルースからカントリー、ブルーグラスといったアメリカの音楽に深い影響を受けたアーティストである。この先コステロは何度もアメリカのルーツ・ミュージックにアプローチすることとなるが、本作はその最初の試みということもできるだろう。アルバム・ジャケットに刷り込まれた白い輪は、かつてのアナログ・レコードを何度もラックから出し入れする際にレーベル部分が擦過して生じる跡を意図的に模したものだが、ここにもコステロのルーツに対する愛情が現れている。

おそらく彼のレコード・ラックにはこんなふうにレーベル部分が白くこすれてしまったアルバムが何枚もあるのだろう。このアルバムは彼自身がそうして敬愛するルーツ音楽に対するオマージュであり、自分がそうした音楽の系譜に連なる者であることの明確なステートメントである。そしてそれを明快なポップ・アルバムとして結実させたところに、コステロというアーティストの資質と、彼がそうしたルーツ音楽から何を学び、何を自分の音楽として表現したいのかという意志を見る思いがするのである。代表作のひとつだ。


TRUST (1981)
Trust

★★★☆
引き続きニック・ロウのプロデュースによる第5作。モータウン、スタックスなどのR&Bを下敷きにしたビート・ポップを20曲詰めこんだ前作から一転、ここではゆったりとしたミドル・テンポを基調にしてバラエティに富んだ曲をじっくり聞かせるシンガー・ソングライター的なスタイルのアルバムとなった。アトラクションズの演奏もスティーブ・ナイーヴのキーボード、中でもピアノを大きくフィーチャーしており、全体に大人っぽい、メロウな印象の作品に仕上がっている。ジャケットもまるで映画のサントラのようだ。

シックなミドル・テンポの「クラブランド」からセカンドライン的な作りの「ストリクト・タイム」、ロカビリーの「ルクセンブルグ」、スクイーズのグレン・ティルブルックをゲスト・ボーカルに迎えたアップ・テンポな「フロム・ア・ウィスパー・トゥ・ア・スクリーム」、カントリー調の「ディファレント・フィンガー」、ピアノだけをバックに歌い上げる「ショット・ウィズ・ヒズ・オウン・ガン」まで、曲調はまるでショウ・ケースのように千変万化であり、アトラクションズのシュアな演奏がそれを支えている。

だが、ここで最も注目されなければならないのはコステロのソングライティングの飛躍的な成長だろう。既に前々作でこうした多彩な曲想への広がりを垣間見せていたが、本作ではひとつひとつの曲の骨格がさらにしっかりと作られ、アルバム全体としての音楽的な底上げが行われている印象がある。コステロの書くメロディは実際にはかなりクセがあり、コードも意外な展開をしたりするが、それをフックにしつつボーカルの力も借りて全体として印象に残る曲にまとめ上げる力はここで最初の頂点に達したと言っていい。


ALMOST BLUE (1981)
Almost Blue

★★★
エルビス・コステロという人は時折こちらの想定外の音楽を作って誠実なロック・ファンを困らせる性癖のある人である。本作はナッシュビルに渡りビリー・シェリルのプロデュースで製作した全曲カントリーのカバー・アルバム。オリジナル・アルバムとしてカウントすれば6枚目の作品になる。正直言ってカントリーにさほど興味がある訳ではなく、特に造詣も深くない僕にとって、このアルバムをコンテンポラリーなカントリー音楽の中にうまく位置づけることはできないし本歌について本格的に解説することもできない。

だが、幸いなことにこのアルバムはそんなことを知らなくても、他ならぬエルビス・コステロの作品として十分楽しめる。大学生の頃の僕はカバー・アルバムだなんて知識もないままこのアルバムを他の作品とまったく同列に「コステロのアルバム」として聴いていたのだ。カントリー・アルバムだなんて意識もしなかった。もちろん今聴けばこれは紛れもないカントリーではあるが、それ以上にこれはアトラクションズが演奏しコステロが歌う、エルビス・コステロの作品だ。この声が流れ出した途端、僕たちはその事実を知る。

それはエルビス・コステロの中にこうしたカントリーがもはや彼の音楽の一部として息づいており、彼自身が作り出す曲との境目すら分からないくらい彼自身の血肉と化しているということだろう。前作でソングライティングにひとつの完成を見たコステロが、もう一枚同じようなアルバムを作らず、わざわざ渡米してカントリーのカバー・アルバムを製作したのは、ルーツに向かい合うことで自分の創作意欲の源を確認するためだったのだろうが、そんな背景情報も不要なほどむしろコステロの表現の強さが際立つアルバムだ。


IMPERIAL BEDROOM (1982)
Imperial Bedroom

★★☆
カントリーのカバー・アルバムだった前作でデビュー以来初めてニック・ロウの元を離れたコステロが、今度はジェフ・エメリックをプロデューサーに迎えて製作した7枚目のオリジナル・アルバムである。ジェフ・エメリックといえば中期以降のビートルズを支えたエンジニアであり、自他共に認めるビートルズ・フリークのコステロがアメリカでのルーツ探訪から戻って、満を持してブリティッシュ・ポップの最良質の部分にまっすぐ切りこんだアルバムだということができるだろう。バンドは引き続きアトラクションズ。

コステロらしい特徴ある節回しを核にしたメロウなミドルの曲が中心で、アップ・テンポなジャンプ・ナンバーは一曲もなく、屈折した影のある曲調のナンバーが多い。「サージェント・ペパーズ」的なオーケストラを導入した「アンド・イン・エヴリー・ホーム」に顕著に見られるようなアレンジとプロデュースの妙でアルバム1枚をドライブして行く力量はさすがだし、もちろんどの曲も明確な構造と印象的なフックを持っているが、一点突破を図るようなキラー・チューンはなく、その分地味な印象の作品となった。

アーティスト・エゴの表出は前作で思う存分果たしたということなのだろうか、ここではウェル・プロデュースされたブリティッシュ・ポップに仕上がっており、その限りでジェフ・エメリックの起用は正しかったといえるのかもしれない。しかしアルバム全体としては良くも悪くも80年代中葉的な混沌に飲みこまれつつあるように思われる。表現に向かう衝動の直接性が見出し難いアルバムであり、ロックと呼ぶにはあまりにもすっきりしない作品だといわざるを得ない。残念ながら僕としてはあまり高く買うことができない。


PUNCH THE CLOCK (1983)
Puch The Clock

★★★★☆
クライヴ・ランガーとアラン・ウィンスタンレーのチームをプロデューサーに迎え、ブラス・セクションを全面的にフィーチャーしてリリースされた通算8枚目のオリジナル・アルバム。バッキングはアトラクションズ。華々しいブラスの響きが意表を突く「レット・ゼム・オール・トーク」で幕を開けるこのアルバムは、コステロ起死回生の一打だと言っていいだろう。全般にアップ・テンポで歯切れのいい曲が多いが、アレンジにはメリハリが効いており、沈みがちだった前作のトーンからは想像もできない華やかさである。

また、シングル・ヒットとなった「エブリデイ・アイ・ライト・ザ・ブック」や、ロバート・ワイアットに提供して話題になった「シップビルディング」(チェット・ベイカーがトランペットで参加)など、ミドルの曲やバラードも絶妙に配しており、アルバム全体の構成にも手抜かりはない。ランガー&ウィンスタンレーの面目躍如である。前々作から曇りがちだったコステロ本来の情動性のようなものをストレートに出しながらも、アレンジは洗練されトータルに高い完成度を誇るこの時期の代表作と言っていいだろう。

本作は、ベーシックなロックンロールからキャリアをスタートしたコステロが、曲折や試行錯誤を経ながらたどり着いた新しいステージであり、現在のコステロの作品にも直接つながる広がりと深みを持った作品だということができる。全体としてはソウル、リズム&ブルースの影響を強く感じさせるが、アルバム「ゲット・ハッピー」とは異なりそうした影響も自身のアップ・トゥ・デイトな音楽表現の中に昇華されている。この後発表されて行くコステロの作品のひとつのプロトタイプでありベンチマークとなった作品。


GOODBYE CRUEL WORLD (1984)
Goodbye Cruel World

★★★☆
前作に続きランガー&ウィンスタンレーをプロデュースに起用した9枚目のオリジナル・アルバム。本作自体は前作の流れをそのまま引き継いだ秀逸なポップ作品であり、コステロのアルバムの中でも最もソリッドで切れ味のいい音を誇る。ダリル・ホールをゲストに迎えた「オンリー・フレイム・イン・タウン」や、スクリッティ・ポリッティのグリーンをフィーチャーした「アイ・ワナ・ビー・ラブド」などの話題作もあり、また「アイ・ワナ・ビー〜」のビデオ・クリップはMTVの勃興期にあって一部で高い評価も得た。

しかしながらブラス・セクションをフィーチャーしてリズム&ブルースをベースにしたコンテンポラリーなポップを小気味よくたたき出す前作に比べれば、曲調は再び全体にメロウになり、アップ・テンポの「サワー・ミルク・カウ・ブルース」や「ディポーティーズ・クラブ」などもどこか薄い膜の向こうでコステロが歌っているようなもどかしさ、そこにあるものに直接手が触れないじれったさの残る作品となった。80年代的にウェル・プロデュースされている分、コステロの最大の持ち味である直接性が削がれている。

後知恵的にいえば、このアルバムはコステロの第一期の最後の作品となった。アルバム「ディス・イヤーズ・モデル」から続いたアトラクションズとのコラボレーションはここでいったん終わりを告げ、この後2年近くアルバムのリリースも途絶えることになる。デビューから走り続けてきたコステロはいくつかの紆余曲折、試行錯誤を経ながら、前作、今作と時代にフィットしたポップ・アルバムを作り出したが、それは必ずしも彼自身を幸福にしなかったのかもしれない。よくできてはいるがどこか逡巡の伺える作品だ。


KING OF AMERICA (1986)
King Of America

★★★★★
前作から2年近いインターバルを経て発表された10作目のオリジナル・アルバム。コステロはアトラクションズと別れて渡米、ジェームス・バートンらプレスリーのバックを務めたミュージシャンにジム・ケルトナー、ミチェル・フルームらを加えたコンフェデレイツの演奏でレコーディングされた本作は、これまでのポップなブリティッシュ・ロックとはまったく異なった、アーシーなアメリカン・ルーツ・ロックとなった。プロデュースはTボーン・バーネット、生音を中心にした深みのあるサウンド・プロダクションだ。

こうして音の手触りも曲調も前作までとはまったく異なったアルバムであるが、僕としては初めて買ったコステロのアルバムであり、正直全然異和感もなかった。このアルバムのいちばんの特徴はとにかくコステロの声が近いことである。前作で皮膜のように音楽の表面を覆っていた見えないバリアはここではきれいに雲散している。コステロはここでは「エルビス・コステロ」の名前を使わず、アルバムは「ザ・コステロ・ショウ」名義でリリースされた。作曲のクレジットも本名のデクラン・マクマナスなのが興味深い。

コステロはおそらく「エルビス・コステロ」というペルソナとの訣別を試みたのではないかと思う。ポップ・アーティストとしての活動が自分を運んできた場所に前作で思いをめぐらし、その先はデッド・エンドであると彼は気づいたのかもしれない。80年代的な狂騒、MTVの時代の音楽に嫌気がさしたのかもしれない。その結果、一切の前提を取っ払って歌いたいことを歌った結果がこのアルバムでのコステロの「近さ」なのだ。キャリアの中でも異色のアルバムだが重要な転換点にある作品であり、端的に言って素晴らしい。


BLOOD AND CHOCOLATE (1986)
Blood And Chocolate

★★★★★
前作からわずか半年のインターバルで届けられた11枚目のオリジナル・アルバム。クレジットは再びエルビス・コステロ&ジ・アトラクションズに戻り、プロデュースはニック・ロウとコリン・フェアリーが担当している。しかしもちろん、だからといってコステロが前作の路線からそれ以前のポップ・ロック路線に回帰したということではない。いや、むしろその正反対で、コステロは前作で踏み出した後退不能の一歩をここでさらにラジカルに進めたのだと僕は思っている。何かを一気に吐き出したかのようなアルバムだ。

コステロはこれをアトラクションズとのラスト・アルバムにするつもりだったらしい。しかし、ここで聴ける音はまるでデモテープのようにラフなロックンロールであり、否応なく僕たちの肌の内側に入りこんでくる生々しいバラードだ。僕は前作と本作を何度も繰り返し聴いた。そしてこのオヤジの持つ情動の業の深さを感じずにはいられなかった。このアルバムでコステロはメジャー・レーベルから契約を切られ、ワーナーから次作を発表するまで実に3年の歳月を要した。これはひとつの旅の終わりであり次の旅の始まりだ。

前作に引き続いてここでもコステロの声は近い。アメリカン・ルーツに接近した前作とアトラクションズをバックにした本作では路線は異なるのだが、にもかかわらずミニマムな構成でむき出しの感情をぶちまける手法の点では前作と本作とは表裏一体である。このコステロの声の近さこそが20歳そこそこの僕に「ただごとじゃない」と思わせた大きな要因のひとつであることは間違いがない。僕にとってのコステロの原体験、原風景はこのアルバムにあるし、そのことを僕はラッキーだったと思う。好き嫌いはあれ必聴の1枚だ。


その他のリリース

エルビス・コステロはキャリアの長いアーティストだけあってオリジナル・アルバムに収録されていないリリースも数多い。特にここで取り上げた時期はシングル・リリースも多く、「Watching The Detectives」や「(What's So Funny 'Bout) Peace, Love And Understanding」など、オリジナル・アルバムでは聴けない重要なレパートリーもある。

そこでまず手に入れたいのがデーモン・レコードからリリースされているコンピレーション「Ten Bloody Marys & Ten How's Your Fathers」である。このアルバムにはデビューから1980年までに発表されたシングル曲などのうちオリジナル・アルバムに収録されていない曲がほぼ網羅されている。

Taking Liberties」は「Ten Bloody Marys〜」と同様の趣旨のUS盤であるが、当時はUS盤オリジナル・アルバムの収録曲がUK盤と一部異なっていたため、コンピレーションの収録曲も「Ten Bloody Marys〜」と「Taking〜」とでは微妙に異なっている。現在リリースされているオリジナル・アルバムはUK盤の曲目が基準になっているので、「Taking〜」よりは「Ten Bloody Marys〜」を探すべきだろう。

さらにこれ以降の時期のオリジナル・アルバム未収録曲を聴くためには、同じくデーモン・レコードからリリースされている「Out Of Our Idiot」というコンピレーションを手に入れなければならない。このアルバムでは1981年から1987年までに発表されたシングルのカップリング曲はもとより、変名プロジェクトでリリースした作品や企画ものに提供した曲などのレア・トラックが収められている(一部未発表曲もあり)。

尚、この「Out Of〜」はアーティスト名義が「Various Artists」となっている。これは収録曲がエルビス・コステロ&ジ・アトラクションズの名義だけでなく、カワード・ブラザーズ、エモーショナル・トゥース・ペイスト、マクマナス・ギャング、ジ・インポスター、コステロ・ショウ、エルビス・コステロ&ザ・コンフェデレイツ等のさまざまな名義で発表されていたことによるものだが、いずれもコステロの作品には違いないのでだまされないように。

ところで、この時期のオリジナル・アルバムは現在ボーナス・トラックがたくさん入ってライコから再発売されている。ボーナス・トラックの検証はしていないが、レア・トラックのほとんどはボーナス・トラックでカバーされているはずなので、そうした盤を持っている人はコンピレーションを買う必要はないだろう。



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