...THE CORNER OF MILES AND GIL
Shack
Sour Mash
JDNCCD006X (2006)
■ Tie Me Down
■ Butterfly
■ Cup Of Tea
■ Shelley Brown
■ Black & White
■ New Day
■ Miles Away
■ Finn, Sophie, Bobby & Lance
■ Moonshine
■ Funny Things
■ Find A Place
■ Closer
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これほどリリースを心待ちにしたアルバムも最近なかったと思う。先行シングルを手に入れるために新宿のレコード屋を巡り、アナログ盤を見つけて買った(シングルはアナログとiTMSダウンロードのみのリリース)。そのシングルから概ね予想できたとおり、とても静かで、とても落ち着いたアコースティックな仕上がりのアルバムである。これは前作でも明らかだった最近のマイケル・ヘッドの傾向で、おもにスリー・フィンガー・ピッキングやワルツの、フォーク系の曲を中心にアルバムが構成されている。
しかし、このアルバムがそうしたいわば地味なテイストであるにも関わらず、決して退屈な作品になっていないのは、やはりひとつひとつの曲の完成度の高さに負うものだろうと思う。丁寧に磨かれたメロディ・ライン、驚くほど雄弁なギター、効果的に挿入されるストリングスやブラス。抑えたアレンジが基調になっている分、ところどころで現れる荒々しいリズム・カッティングが効いてくる。弟のジョン・ヘッドが書いた何曲かもアルバムの中で巧みなアクセントになっている。地味に見えて色彩は豊かだ。
早いリズム、うるさいギター、跳ねるベース。僕はそういう音楽が好きだ。だけど、そういう音楽に慣れた耳ではなかなか聞き分けることのできない種類の高いテンションがこのアルバムにはある。ここにある色彩は目を閉じたときまぶたの裏に現れる微妙な色や模様に似ている。見定めようとするとそれはすぐに変化し、どこかへ逃げて行く。かつてのペイル・ファウンテンズの、かき鳴らされたギターの響きはもうそこにはないけれど、音楽が空中に消えて行く瞬間の心の震えのようなものはあの頃と同じだ。
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