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Deadly Drive
40th Anniversary Deluxe Edition


2017.5.24発売 Warner Music
WPCL-12639/40

PRODUCER:
伊藤銀次、川喜田勝久(2017)
ENGINEER:
島雄一、坂本充弘(2017)

作詞・作曲・編曲:
伊藤銀次
DISC 1
オリジナル 1977 MIX
●風になれるなら
●I'm Telling You(好きなんだ)
●Deadly Drive
●こぬか雨
●King Kong
●あの時はどしゃぶり
●Sweet Daddy
●Hobo's Lullaby
2017 Re-Mix Back Track
●風になれるなら
●I'm Telling You(好きなんだ)
●こぬか雨
●King Kong[No SE]
●あの時はどしゃぶり
●Hobo's Lullaby
アルバム未収録 Single Tracks
●風になれるなら
●Deadly Drive
●マセラティ メラクSS(実録効果音)

DISC 2
2017 Re-Mix
●風になれるなら
●I'm Telling You(好きなんだ)
●Deadly Drive("No SE" Long Version)
●こぬか雨
●King Kong
●あの時はどしゃぶり
●Sweet Daddy
●Hobo's Lullaby
2017 Re-Mix Alternative Version
●風になれるなら
(2017 Re-Mix Take 2 Outtake)
●こぬか雨
(2017 Re-Mix Take 1 Outtake)
●King Kong's SE
(2017 Re-Mix)
●あの時はどしゃぶり
(2017 Re-Mix Long Version)
●Sweet Daddy
(2017 Re-Mix Take 1 Outtake)
●Hobo's Lullaby
(2017 Re-Mix Take 3 Outtake)
Acoustic Live Version
●風になれるなら
(渋谷SONGLINES 2012/11/11)
●こぬか雨
(渋谷SONGLINES 2012/11/11)
●こぬか雨
(原宿ストロボカフェ 2016/10/30)



1977年にリリースしたソロ・デビュー・アルバム「Deadly Drive」の40周年記念盤。これまでリマスターは行われているが、今回はマルチがいい状態で保管されていることが分かり、オフ・ボーカルのインストルメンタルやリミックス、未発表のアウト・テイクなどを追加してのリリースとなった。

アルバムとしての評価はオリジナル盤のレビューを参照して欲しいが、40年前の作品であるにも関わらず驚くほど音がいいのに加え、リミックスもオリジナルで必要以上に奥に引っ込んでいた音を前に引っ張り出す等の丁寧な「補正作業」に徹し、オリジナルの手ざわりを損なわないようにしながら音像のアップデートを試みた、抑制的で良心的な仕事だと思う。

僕にとって、このアルバムは正直そこまで思い入れのあるものではない。僕が伊藤銀次を聴き始めたのは高校生の頃、ポリスター発売のアルバム「Baby Blue」から。本作は「どうやら銀次が以前にもアルバムを出しているらしい」という都市伝説に近いうわさ話をもとに、リサーチを重ねて(当時はもちろんインターネットなんてなかった)かなり遅れて手に取ったアルバムだった。

そういう経緯で聴くと、このアルバムは、特に木崎賢治のプロデュースで当時取り組んでいた60年代マナーのアーバン・ポップとのギャップが大きかった。僕としてはこのアルバムは後追いでさかのぼって聴いた「伊藤銀次前史」であり、「参考文献」の位置づけ。あまり頻繁に聴くこともなかったし、銀次の曲を集めたテープ(今だとiPodのプレイリスト)を編集する時もこのアルバムの曲を入れたことはない。

その後、銀次がソロ・アルバムを発表しなくなり、ポリスター時代の音源が入手困難になった時期には、おそらく原盤の問題で逆にこのアルバムだけがリイシューされて店頭に並んでいるという皮肉な状況が長く続いた。「聴きたいのはこれじゃないんだよな」と思いながら見てたのを思い出す。

したがって、今回のリイシューでも、「掘り返して欲しいのはそこじゃないんだよな」という感は免れない。レコーディング秘話やリミックス、オフ・ボーカルなども「Baby Blue」以降の方により大きな興味があることは否定しない。

銀次自身が言うように、当時の銀次がソロ・シンガーとしてやって行くかどうかの覚悟も決められないまま、その時にやりたいことを何でもかんでも詰めこんだ作品。そのため統一感とかコンセプトというものはないし、いかにも試行錯誤的な作品もあって玉石混交の印象が強い。きちんとボーカルをフィーチャーしたポップ・ソングは少なく、「Baby Blue」以降のファンに違和感が残るのはムリもない。

もちろん、今となってはこの作品があればこそ「Baby Blue」があることも理解はしているし、改めて聴けば『風になれるなら』『こぬか雨』といった曲にソングライターとしての銀次のポップな資質がはっきりと表れているのがよく分かる。そのような連続性を念頭に、この作品を「逆側から(現在の位相から)」読み解くことは決してムダではない。

その作業において、ここにオリジナルと合わせて収録されたリミックスやオフ・ボーカルは大きな手がかりになるだろう。特にオフ・ボーカルでは、ふだん「歌」の背後に隠れている演奏の細かいニュアンスが際立ってきて、アレンジの繊細さ、演奏の確かさ、音のよさに対する認識を新たにする。これは非常にいい仕事だと思う。

作品そのものをあまりほめていないレビューだが、リリースから40年経った音源であり、歴史的な価値をフェアに見定めるためにもう一度じっくり聴きこむ価値はある。そのためには必携のアーカイヴだ。



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