NO DAMAGE II
ベスト・アルバム。1983年に発売されたベスト・アルバム「No Damage」の続編という形を取っており、アルバム「VISITORS」から「sweet16」までに発表された曲の中から佐野元春自身の選曲による16曲が収められている。一部の曲はこのアルバム収録に際してリテイク、編集された。また、「約束の橋」はテレビ主題歌に使われたことからミックスを変えて再リリースされた新シングル・バージョンでアルバムには初めて収録、「99ブルース」は衛星放送WOWOWの企画によるアンプラグドライブ「Goodbye Cruel World」の時のテイクで、やはり本作にのみ収録されている。 このアルバム収録に際し新たに手を加えられたのは以下の3曲である。
●「ニューエイジ」 ハートランドの演奏によるリテイク。ライブ・アレンジとしてはほぼ完成された感のあったバージョン。 佐野元春が83年に「No Damage」を発表したとき、「これは『グレイテスト・ヒッツ・アルバム』ではない」とわざわざ言及したのは、自分はまだトップテンに入るような「ヒット曲」を出していないからという当たり前の理由の他に、そのアルバムを単にヒット曲、代表曲が並んだだけの無味乾燥な「ベスト・アルバム」にはしたくない、自分の名前で発表される作品であるからには、たとえコンピレーションでもそれ自体に自分の意志が反映され、明快な意図、方向性があり、リスナーが楽しめるものであって欲しいという佐野のアーティストとしての誠意のようなものがその背景にあったのだと僕は信じている。だからこそ僕はそのアルバムを愛したし、そのアルバムにいくつかのオリジナル・アルバムよりも強い感慨を抱いてきた。 本作でも佐野はきちんと制作にコミットし、「'Good Vibrations' for old fans, 'Good Excitations' for new generation.」というコンセプトに則って、おそらくはライブでの流れを意識し、レア・トラックをも収録した「ただのベスト」ではないコンピレーションを作ろうとしたことがうかがわれる。しかし、デビューから一息に駆け抜けた渡米までの期間を対象にした「No Damage」に比べ、84年から92年という10年近い期間と、方向感も手触りも違ういくつかのプロジェクトを総括することになった本作が統一感に欠ける、アルバムそのものとしての楽しさ、勢いの感じられないものになってしまったことはやむを得ないことだったのかもしれない。 「これは『グレイテスト・ヒッツ・アルバム』ではない」という発言に佐野の誠実さをみていた僕としては、「GREATEST HITS 84-92」というサブ・タイトルを目にしたとき、深く失望しない訳には行かなかった。それから、「クリスマス・タイム・イン・ブルー」を何度も引っぱり出すのはいい加減にしてくれと言いたい。この曲は僕にとって本当に大切な曲なのだ。アルバムを聴くたびに梅雨でも真夏でもこの曲が流れ出すのは勘弁して欲しい。 1997-2021 Silverboy & Co. e-Mail address : silverboy@silverboy.com |